畜舎の高さは16メートル以下 畜舎建築特例法の省令案示す

軒高の基準は設定せず

農林水産省は8月3日、オンライン形式で畜舎建築特例法に関する農業者との意見交換会を開き、同法の概要と省令案の内容を示した。

5月19日に公布された畜舎建築特例法は、畜舎建築利用計画の認定制度を創設し、認定を受けた計画に基づき建設・利用される畜舎等(堆肥舎も含む)に関して建築基準法の特例を認めるもので、一定面積以下の畜舎等では建築確認を不要とするなど、建築コストの削減により畜産業の振興を図ることを目的としている。

対象となる畜舎等は、①市街化区域・用途地域外の地域の敷地に建築②省令で定める高さ以下の平屋で、居住のための居室を有さない③建築士が設計――した畜舎と堆肥舎で、畜舎等を建築(新築、増築、改築、構造変更)・利用する者が作成・申請した「畜舎建築利用計画」が、畜舎等内の人の滞在時間や避難路の確保などの利用基準と、畜舎等の構造が安全上支障がないと認められる技術基準に適合している場合に、都道府県知事から認定を受けて建築基準法の適用除外措置が受けられるようになる。

利用基準と技術基準の組み合わせは省令で規定し、①A構造は、簡易な利用基準(宿泊しない等)+建築基準法と同等の技術基準②B構造は、標準的な利用基準+建築基準法より緩和された技術基準――とする。

建築基準法では高さ13メートル以下、軒高9メートル以下となっている畜舎等の高さについて、畜舎建築特例法の基準では高さ16メートル以下とし、軒高に関する基準は設定しない。

建築基準法の建築確認が不要となる面積は、木造が500平方メートル以下、木造以外が200平方メートル以下(都市計画区域外)となっているが、畜舎建築特例法の基準では、畜舎建築利用計画の技術基準に関する計画申請・審査が不要となる面積を、木造・その他の区別なく3000平方メートル以下(市街化区域・用途地域外)とする。

また、畜舎等の基礎に関する基準も畜舎建築特例法では緩和し、基礎の深さの規定は設けない。

利用基準では、畜舎等の床面積に応じた1日の延べ滞在時間と最大滞在人数(表参照)、午後10時から翌日午前4時まで畜舎に宿泊して滞在しないこと、災害時の避難に支障が生じないよう避難経路をふさぐ物品を置かないことなどを定める。

防火に関する取り扱いについて、現状では木造で延べ面積が3000平方メートル超の建築物は耐火構造にするか、壁などで3000平方メートル以内に区画しなければならないが、畜舎建築特例法の基準では、①畜舎等の間に延焼防止に有効な空地(畜舎等の高さだけの離隔距離)を確保する②通路と畜舎との間に防火戸(シャッター)などを設置して通路と畜舎とを区画する――場合には、畜舎と通路を同一区画の建物として面積を計上しない。

「畜舎建築利用計画」の作成・申請の手続きはオンラインで実施できるようにする予定。

農水省では9月頃に省令案に関するパブリックコメントを募集し、11月頃に政省令を公布。農業者・建築士・団体や保険会社への説明、Q&Aの作成、都道府県の体制整備を経て、来年4月の畜舎建築特例法の施行を目指す。

意見交換会に参加したブロイラー農家から「ブロイラーの出荷時には1~2時間に大人数が鶏舎に入って作業することが想定される。滞在の定義を教えてほしい」との質問が出され、農水省の担当者は「滞在とは建物の中にいることと考えており、畜舎内で作業する場合はは滞在に当たる。ただ、畜種ごとの実態については皆さんに意見を聞き、どのように定めていけばよいか考えていきたい」と答えた。

畜舎設備を扱う企業の担当者からの「原卵出荷用の集卵庫は畜舎の定義に入るのかという問い合わせが、採卵鶏農家から出てくると想定される」との意見に、農水省の担当者は「随時Q&Aのような形で皆さんに考え方を示していきたい」と説明した。

通常時に、畜舎等に滞在する者の人数と1日の延べ滞在時間(省令案)