営業届出と営業許可規制は6月1日から

全国生活衛生・食品安全関係主管課長会議の説明資料

厚生労働省は毎年3月に都道府県や政令指定都市の生活衛生・食品安全の担当者らを招いて「全国生活衛生・食品安全関係主管課長会議」を開いているが、令和2年度の会議は、新型コロナウイルスの感染拡大のため前年度と同様に中止し、3月17日付で説明資料を公開した。このうち食品監視安全課は、改正食品衛生法に基づく対応としてHACCPに沿った衛生管理の制度化や、営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設、食品等リコール情報の報告制度、食鳥肉衛生対策、カンピロバクター食中毒対策などの進め方を説明している(前年度と重複部分あり)。概要を紹介する。

HACCPに沿った衛生管理の制度化

改正食品衛生法は、平成30年6月13日に公布され、令和2年6月1日に施行された(施行後1年間は経過措置期間とし、現行基準を適用)。これにより、製造・加工、調理、販売等を行なう原則すべての食品等事業者を対象として、HACCPに沿った衛生管理を求めることとなった。

HACCPに沿った衛生管理は「HACCPに基づく衛生管理」(コーデックスHACCPの7原則を要件とするもの)または「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(弾力的な取り扱いを可能とするもの。小規模事業者や一定の業種等が対象)の実施を求めるものとし、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる小規模事業者等や衛生管理基準について、政省令で規定した。

【今後の取り組み】

▽食品等事業者が、一般衛生管理とHACCPに沿った衛生管理に関する衛生管理計画の策定、計画に基づく衛生管理の実行と記録を実施できるよう、引き続き衛生管理計画策定のための手引書が必要な業種について、関係業界に対し手引書の作成を働きかけるとともに、厚生労働省に設置している「食品衛生管理に関する技術検討会」の確認を経た手引書を、厚生労働省ホームページで公表する(令和3年2月16日現在、97業種の手引書を公表済み)。

▽手引書の抜粋版(様式と記入例の抜粋)の印刷・配布により、都道府県等による食品等事業者へのHACCPの指導を支援する。

▽食品衛生監視員については、厚生労働省では引き続き、指導者の養成等研修の充実等による資質の向上を図る。

【都道府県等に対する要請】

▽HACCPに沿った衛生管理の制度化に向けて、引き続き、HACCP未導入施設について都道府県等食品衛生監視指導計画に規定するなど、計画的な指導を行なうようお願いする。

▽「HACCPに沿った衛生管理の制度化に伴う食品等事業者への監視指導について」(平成31年2月1日付、薬生食監発0201第1号)で通知している通り、地方自治体による監視指導の内容を平準化するため、HACCPに沿った衛生管理の監視指導の際には、業界団体が作成し、厚生労働省が確認した手引書に基づき実施することをお願いする。また、当該手引書は、法令の適合性を判断するため、基準の運用、解釈を示し、事業者の衛生管理の取り組みと都道府県知事等の監視指導を平準化するとともに、適切な法令の運用を確保する目的で作成していることをご理解願いたい。

▽と畜場、食鳥処理場(認定小規模食鳥処理場を除く)については、食肉と食鳥肉の処理工程が基本的に共通であること、施設の衛生管理に係る監視指導については、従来よりと畜検査員と食鳥検査員が行なっているといった特有の状況や、諸外国でもコーデックスHACCPが適用されていることから、HACCPに基づく衛生管理を適用する。と畜場と食鳥処理場におけるHACCP導入の手引書については関係団体が作成しており、当省の食品衛生管理に関する技術検討会での確認後、ホームページに掲載予定である。指導に当たっては、これらの手引書も参考としていただきたい。

▽HACCP普及のための人材育成として、厚生労働省では、都道府県等でHACCPを普及する食品衛生監視員の指導者を養成する研修を行なっている。都道府県等でも近隣自治体、地方厚生局との連携・協力を密にし、当該指導者を活用した研修会を実施し、HACCP普及のための食品衛生監視員の育成をお願いする。

▽管内事業者に対する説明会の開催等により、HACCPに沿った衛生管理の方法等の普及とともに、地域におけるHACCP導入支援や指導に努めるようお願いする。

▽「HACCPに沿った衛生管理」に関する周知等必要な対応をお願いする。

営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設について

HACCPの制度化に伴い、営業許可業種(政令で定める業種)の事業者を含む公衆衛生に与える影響が少ない営業を除き届出を求める。また、営業許可業種についても見直しを行ない、都道府県が条例で定める営業施設の基準(参酌基準)を省令に規定した。営業届出制度と新たな営業許可規制は、令和3年6月1日から施行される。

【今後の取り組み】

▽「食品の営業規制の平準化に関する検討会」を開催し、自治体ごとの解釈と運用等の違いにより著しく不都合が生じている案件については、関係者の意見を調整し、その結果を踏まえて厚生労働省から技術的助言を行なうこと等により、制度の平準化を図る。

【都道府県等に対する要請】

▽営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設に伴い、条例改正やその周知等、必要な対応をお願いする。

▽令和2年6月1日以降、営業届出の事前届出が可能となることから、順次対応いただきたい。

(編集部注…本紙の昨年3月5日号で報じたように、本紙関係の営業許可業種は、もともとの許可業種であった、カットや串うちなどをする食鳥肉販売業、卵焼き業、調理工程がある直売所などに、新たに液卵製造業が加わる。届出業種としては、パック済みの商品のみを扱う食肉販売業や鶏肉卸、鶏卵GPセンターなど)

食品等リコール情報の報告制度

事業者による食品等のリコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品等による健康被害の発生を防止するため、改正食品衛生法で事業者がリコールを行なう場合に行政への届出を義務付ける。施行は令和3年6月1日とする。

【今後の取り組み】

▽本制度の効果的な運用を図るため、これらの手続きを電子化し、リコール情報を一覧化して厚生労働省のホームページで情報提供を図ることとしており、令和元年度中にシステムを開発し、令和2年度から運用を開始している。なお、情報提供にあたっては消費者庁と連携し、回収する食品等の危害の発生の程度を分類するなど、分かりやすい情報発信に努める。

【都道府県等に対する要請】

▽令和3年6月1日から、食品等リコール情報の報告制度が施行されることから、適切な運用をよろしくお願いする。また、施行されるまでの間は、各自治体の条例等で定める自主回収報告制度等において、食品衛生法に違反している食品や健康被害を生じるおそれのある食品等が適切に回収できるよう指導等をよろしくお願いする。

▽また、本制度の効果的な運用を図るため、食品リコール情報を電子化し、一覧化して厚生労働省のホームページで情報提供を図るシステムの運用を開始していることから、積極的な活用をよろしくお願いする。

食鳥肉等の安全衛生確保対策

HACCPの制度化に関し、すべての食鳥処理場で、HACCPに沿った衛生管理の実施(大規模食鳥処理場についてはHACCPに基づく衛生管)が義務付けられることになった。併せて、大規模食鳥処理場の食鳥処理業者は、衛生管理計画と手順書の効果について、食鳥検査員による検査または試験(外部検証)を受けることが求められることになり、各自治体宛てに外部検証に関する技術的助言通知を発出した。併せて、食鳥処理上におけるHACCPによる管理状況の検証を目的とした食鳥肉の微生物試験法について、各自治体宛てに通知した。さらに食鳥肉のカンピロバクター対策として、厚生労働科学研究や、食鳥肉における微生物汚染低減策の有効実証事業の結果を取りまとめた事例集を公表した。

【今後の取り組み】

▽厚生労働省は、食鳥肉の衛生管理について、食鳥処理場におけるHACCPの導入推進に必要な技術的支援を行なっていく。

▽成鶏を処理する大規模食鳥処理場におけるHACCP導入の手引書について関係団体が作成中である。厚生労働省の食品衛生管理に関する技術検討会の確認後、ホームページに掲載する予定。

【都道府県等に対する要請】

▽HACCP導入推進にあたっては、未導入の大規模食鳥処理場(関係の食肉処理施設を含む)を優先し、HACCP早期導入を指導すること。なお、指導にあたっては民間認証等においてHACCPを導入している事例や、今後厚生労働省のホームページに掲載予定の関係団体が作成した手引書を参考とすることをお願いする。

▽HACCPの制度化後は、食肉衛生検査所等において、食鳥処理場が作成した衛生管理計画の妥当性確認や、微生物検査を含む検証等(外部検証)の実施が必要になるが、これらについては科学的根拠に基づいた対応や、監視指導に関するやりとりの文書化などの適切な実施をお願いする。

▽引き続き、次に掲げる4点をお願いする。

①食鳥処理場の施設設備と衛生管理に関する基準が順守されるよう、食鳥処理場に対する監視指導を適切に実施すること。

②食鳥検査員に対し、食品衛生監視員を補職し、食鳥処理場に併設する食品衛生法上の許可施設に対し、食品衛生法上の監視指導も併せて行なうこと。

③鳥インフルエンザ対策の一環として、従前の経緯に示す通り、食鳥検査の実施にあたっては、鶏の出荷元が異状のない養鶏場である旨を確認するほか、鳥インフルエンザに感染した疑いがあると認められる鶏を対象とするスクリーニング検査を実施すること。なお、検査で陽性と判断された場合は、農林主管部局と連携し、適切に対応すること。

④特に、主として成鶏を処理する大規模食鳥処理場では、農林水産省からの要請を踏まえ、平成30年3月26日薬生食監発0326第1号「食鳥処理場への鶏の計画的な出荷について」(医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知)を踏まえ、積み上げられた生体輸送容器上段の鶏の排せつ物が、下段の鶏を著しく汚染させるなどの保管時の問題が確認された場合は、食鳥処理業者に対して、養鶏業者との調整状況を確認する等の配慮をお願いする。

カンピロバクターによる食中毒対策

カンピロバクターを原因とする食中毒について、主な要因は生または加熱不足の食鳥肉と、食鳥肉から他の食品への二次汚染等となっている。これを踏まえ、平成19年3月に「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」を策定して関係機関に周知し、平成28年6月に知見の進展等に対応して更新を行なった。

(注…平成30年5月に内閣府食品安全委員会が「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~鶏肉等におけるカンピロバクター・ジェジュニ/コリ~」を公表した)

カンピロバクターによる食中毒患者は、加熱不十分な鶏肉メニューを喫食しているケースが多いことから、平成29年3月に「カンピロバクター食中毒対策の推進について」を通知し、鶏肉を飲食店営業者に販売する食鳥処理業者、卸売業者等にあっては、食鳥処理業者、卸売業者に対して、飲食店業者が鶏肉を客に調理・提供する際には、加熱が必要である旨の情報伝達を販売の際に行なうことについて指導を実施している。また、平成30年3月に「カンピロバクター食中毒事案に対する告発について」を通知し、事案の悪質性、組織性、緊急性、広域性等を総合的に勘案し、カンピロバクター食中毒を発生させた関係事業者に対する告発の必要性について対応を行なっている。

【今後の取り組み】

▽牛のその他の内臓、鶏肉等の生食については、公衆衛生上のリスクの大きさを踏まえ、今後の取り扱いについて検討することとしている。

【都道府県等に対する要請】

▽鶏肉を飲食店営業者に販売する食鳥処理業者、卸売業者等に対し、飲食店業者が鶏肉を客に調理・提供する際には加熱が必要である旨の情報伝達を販売の際に行なうよう指導することについて、周知徹底をお願いする。

▽飲食店、大量調理施設等での食肉と食鳥肉に関する衛生管理の徹底など、事業者に対する監視指導を適切に実施すること。

▽一般消費者に対して食肉と食鳥肉の加熱調理に際しては、十分に火を通すとともに、高齢者、乳幼児等の抵抗力の乏しい者に、生または加熱不足の食肉と食鳥肉を摂取させないよう、注意喚起をお願いする。

このほか、輸出促進対策の中で「食鳥肉については、輸出戦略で有望市場とされている中国、マレーシア等の11か国・地域、食鳥卵については、同じく有望市場とされる中国とロシア等に対して輸出解禁を要請しており、農林水産省と連携して解禁に向けた協議を行なう」としている。