国産鶏卵・鶏肉のさらなる需要喚起を!

今後の成長に向けて

日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が7月17日に署名され、来年の早い時期の発効を目指すことになった。米国を除く11か国による環太平洋経済連携協定(TPP11)も、発効に必要な6か国以上が順次手続きを終え、来年早々に発効する見通しとなってきた。

TPP11についてみると、鶏卵、鶏肉の輸入関税は、凍結卵白や卵白粉のように協定発効後に即時撤廃されるものから、凍結全卵や凍結卵黄のように段階的に引き下げられ6年目で撤廃されるもの、冷凍丸どりのように段階的に引き下げて11年目に撤廃するもの、殻付卵や全卵粉のように段階的に引き下げ13年目で撤廃されるものまであり、日欧EPAと同様に品目によって様々だが、最終的には完全撤廃される。また、TPPから外れた米国とも今後、2国間交渉で同じように撤廃されていく可能性がある。

農水省は、鶏卵の輸入量は消費量の約3%と少なく、そのほとんどは卵白粉で、大半が新鮮な殻付卵で流通する国産鶏卵とは一定の棲み分けがみられるため「影響は限定的」とし、鶏肉についても、輸入量の約9割は協定に入っていないブラジルとタイが占めているため、「国産品との直接的な競合は限定的」と評価している。

ただ、ここ数年、好調に推移してきた鶏卵、鶏肉相場は、今年に入って弱含み基調へ反転した。

需要面では、1人当たり家計消費量は、鶏肉、鶏卵とも増加し、外食や業務、加工需要もおおむね伸びているとされる。さらに、科学的な研究によって、鶏卵の摂取量と人の血中総コレステロール濃度に関連がなく、心筋梗塞などの発症リスクとも関連がないことが明らかになってきた。鶏肉も低脂肪で高たんぱく、ヘルシーな食材としての評価が高まる一方、近年はむね肉やささみに多いイミダゾールジペプチドによる疲労回復効果や運動のパフォーマンスを上げる効果が実験で確かめられ、これらが鶏卵、鶏肉の消費拡大の強い追い風になってきた。

このような環境下で相場が反転した要因は、鶏卵では好調な需要を上回る供給増、鶏肉では国内生産の伸びに加えて、消費者の節約・時短志向にも合った輸入鶏肉やカット済みの豚肉、調製品の増加が考えられ、価格や品質、利便性をめぐる畜種や国境を越えた競争が厳しさを増している。

具体的な対策としては、価格競争面では生産コスト低減につながる生産資材価格の引き下げ、品質面では国産の安全・安心・新鮮・おいしさなどの優位性をこれまで以上に消費者や食品・小売り・外食業界に対し、養鶏産業を挙げて発信すること、利便性の面では健康に寄与する優れた機能性や調理のしやすさを訴えるとともに、消費者が喜び、リピーターになるような新商品や加工品の開発を進めて、国産の需要を喚起していく以外にない。

さらには養鶏安定法に基づく需給安定の制度化、日本の実情に合ったアニマルウェルフェア飼養基準の確立なども、持続的発展のためには必要だ。

少ない飼料で良質な動物性たんぱく質が生産でき、二酸化炭素排出などの環境負荷も少ない養鶏産業は、世界人口の増加、食料資源の争奪戦のさらなる激化と高騰、地球環境の悪化が懸念される中でも『成長産業』だ。わが国の養鶏産業が今いる仲間とともに競争力をさらに高め、今後も成長していくために、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)を含む鶏病対策、食中毒を発生させない衛生・安全対策、そして何よりも消費拡大対策に、業界が一丸となって取り組まなければならない。