飼料用米の取り組みを拡大する「昭和産業」 稲作農家と連携協会 年間取扱量2万トン目指す

昭和産業(株)(岡田茂社長―本社・東京都千代田区)は、飼料の国産化と食料自給率の向上に貢献するため、グループを挙げて飼料用米の利活用に取り組んでいる。
昭和産業は2008(平成20)年から、休耕地の活用に有効な飼料用米に着目。千葉県内の稲作農家と契約して飼料用米を調達し、鹿島飼料(株)(茨城県神栖市)でトウモロコシや大豆かすなどと配合して養鶏用飼料に加工し、鶏卵生産者への販売を始めた。
飼料用米の取扱量は、初年度の08年は65トンであったが、09年は225トン、10年は1552トンへと拡大。11年からは飼料用米のもみ米の調達も始め、今年は2864トン(このうち、もみ米は1117トン)になる見込み。取扱量の拡大に伴い、飼料用米を調達する範囲は千葉、茨城を中心に埼玉、群馬、栃木、青森の各県に広がっている。
飼料用米の取り組みを始めた当初は、玄米を配合飼料に混ぜていたが、昨年10月には飼料用米をもみ米のまま配合した採卵鶏育成用配合飼料『こめっ娘シリーズ』を飼料業界で初めて発売し、注目を集めている。昭和産業の研究結果では、もみ米を飼料に配合して鶏に給与することによって、(1)育成初期の増体量が改善される(2)消化管が発達し、消化率が上がる(3)腸内細菌叢が改善される(4)鶏の悪癖(つつき)を低減する――などの効果が期待できるとのこと。
『こめっ娘シリーズ』は現在、「こめっ娘餌付け」「こめっ娘幼すう(0~4週齢)」「こめっ娘中すう(5~10週齢)」「こめっ娘大すう(11~17週齢)」「こめっ娘ハイ(11~17週齢)」「こめっ娘プレレイ(16~18週齢、または5%産卵まで)」の6銘柄があるが、特に大すう期に2つの栄養水準の銘柄(こめっ娘大すう、こめっ娘ハイ)があることによって、様々な鶏種や飼育環境に対応した体重コントロールができるようになっている。
飼料用米を鶏に給与して生産した卵については、昭和産業グループの鶏卵販売会社である昭和鶏卵(株)(阿部健太郎社長―本社・埼玉県三芳町)が、(農)北総養鶏組合(衣鳩富美男組合長―千葉県旭市)の協力を得て『こめたまご』として商品化し、コープネット事業連合の各店舗で販売した。また11年には、『こめたまご』の認知度をさらに高めるために開発した赤玉ブランド卵『米のちから「真」「順」「絢」』の3製品も発売し、首都圏の量販店を中心に売り上げを伸ばしている。『こめたまご』はフード・アクション・ニッポン・アワード2010のプロダクト部門で優秀賞を受賞し、同2012では『飼料用米たまごのブランド化』で入賞した。
昭和産業では、取り組み当初から各地の飼料用米協議会に参加し、飼料用米の作付面積や買い取り価格などについて、稲作農家と直接交渉している。今年からは飼料用米協議会のメンバーを拡大し、鶏卵を販売する昭和鶏卵や、収穫した飼料用米を運搬する運送会社の担当者らも参加している。稲作農家と飼料用米の利活用に取り組む関係者の連携を深め、顔の見える流通網を構築し、安定した飼料用米の調達から『こめたまご』『米のちから「真」「順」「絢」』の販売まで、グループを挙げて取り組んでいる。
8月6日に開いた茨城県の利根町飼料用米協議会は、メンバーを拡大して初めての会合となったが、収穫した飼料用米の出荷スケジュールの打ち合わせでは、運送会社の担当者のアドバイスにより、話し合いがスムーズに進む場面もみられた。
稲作農家4人で構成する利根町飼料用米協議会では、今年は約88ヘクタールの水田に飼料用米の専用品種「モミロマン」「タカナリ」「夢あおば」を作付けした。今年は、飼料用米の専用品種に取り組みやすい制度に変更されたため、同協議会では播種直前に専用品種への切り替えを決めたが、専用品種は種もみの流通量が少なく、その確保に苦労したとのこと。
訪問した利根町の飼料用米の生育状態は極めて順調で、早いところでは9月中旬から刈り取りを始められるのではないかとしていたが、専用品種は茎が太かったり、背丈が高かったり、米粒が大きいため、コンバインでの刈り取り作業について心配する声も聞かれた。来年に向けても、専用品種の種もみの確保が懸念材料となっている。
利根町では、これまで食用米の生産調整で麦を生産していたが、地理的な条件などでなかなか収量が上がらず、稲作農家は苦慮していた。同協議会の稲作農家は「水田には米が一番適しており、畑に作る麦を水田で作ることには無理がある。利根町でもすべての水田の4割くらいで生産調整しているが、米を作る水田を空けておいて、海外から飼料原料を輸入しているのはおかしい。飼料用米を利用すれば、自分の国の土地で飼料ができるのだから良いのではないか。我々稲作農家にとっても、良い制度だと思っている」と話している。
飼料用米は、10アール当たり8万円の助成を行なう水田活用の直接支払交付金などによって作付けや利用が促進され、平成24年度の全国の作付面積は3万4525ヘクタールにまで拡大した。一方で、低コスト栽培技術の導入や多収品種の活用によるコスト低減、輸入トウモロコシとの価格差の縮小、安定した供給と保管・流通体制の確立などが課題として挙げられている。
昭和産業では飼料用米の取扱量について、将来的には年間2万トンを目指しており、今後も稲作農家や鶏卵生産者との連携を深めながら、飼料用米の利活用の取り組みを、さらに広げていきたいとしている。

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