静岡県「フジ小軍鶏」お披露目 丸どり料理に適し、味も良し

小ぶりな地鶏を丸ごと食べて――。静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センターが開発し、昨年末から本格的な生産・販売が始まった小型地鶏「フジ小軍鶏(こしゃも)」のお披露目会が3月21日、静岡市内のレストランで開かれた。
同センターや県の畜産課、生産者、流通業者などで構成する「フジ小軍鶏普及推進研究会」が主催し、外食、小売、報道関係者を招いて、高品質な肉質と味の良さを伝えた。
同研究会の杉山源吾会長は「フジ小軍鶏は小型の肉用地鶏で、1羽丸ごと料理してもちょうど良いサイズ。静岡県の特産品として普及させるため、生産者と流通業者、飲食関係者、行政がしっかりと連携し、6次産業化にも結びつくようなブランドとして育てたい」などとあいさつし、中小家畜研究センターの松井繁幸主任研究員が、セールスポイントを分かりやすく紹介。
開発の経緯については「昨今は食の多様性から、目新しい食材やメニューへのニーズが高まっている。鶏肉では韓国料理の参鶏湯(サムゲタン)や、丸どりで作ったローストチキンが人気だが、1羽を丸ごと調理するには、これまでの地鶏やブロイラーでは大きすぎて扱いにくく、少人数では食べきれないという問題点もあった。
市場には小さい肉用鶏も出回っているが、あくまで飼育途中の『若過ぎる鶏』であり、肉質はあまり良くない。そこで当センターは、肉質に優れて、丸どり料理に適した鶏の開発に取り組んだ」などと振り返った。
フジ小軍鶏のむね肉の薫製、もも肉のテリーヌ、丸どりを1羽丸ごと使ったローストチキンとポトフなどを試食したが、やはり注目を集めたのは丸どりのローストチキンで、参加者全員が身を乗り出してサイズ感をチェック、弾力感のある肉質にも関心が集まっていた。
フジ小軍鶏は、体重1キログラムほどの観賞用品種「遠州小軍鶏」の雄と、ロードアイランドレッドの雌を交配させた品種で、原種鶏と種鶏の維持、種卵の生産は中小家畜研究センターが担い、とりっこ倶楽部ホシノ(島田市)が種卵をふ化、初生ひなを生産者に提供している。
100日以上飼養してから出荷しており、年間出荷羽数は1500羽程度。最大の特長はサイズの小ささで、一般的なブロイラーの体重約3キログラムに対し、フジ小軍鶏は半分ほどの1.5キログラム。肉質はシャモ特有の歯応えを持ち、うま味成分のイノシン酸はブロイラーの1.2倍含まれるという。
毎月100羽ほどのひなを導入している(株)青木養鶏場(富士宮市)の青木善明社長は「参鶏湯をはじめ、1羽を丸ごと使うスープにはもってこいの地鶏だ。取引先のレストランでは1羽を2つに切り分けた『2つ割り』の状態で調理しているようで、いろいろな食べ方を楽しめる食材でもある。現在は1羽2000円ほどで販売しているが、売り先が確保できて生産羽数が増えるにつれて、価格は抑えられるだろう」などと話していた。
【丸どりで作ったローストチキンは2~3人で食べきれるサイズ(左)。切り分けたローストチキンは小さいのに歯ごたえは十分(右)】

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