生産者主体の組織として再出発 新会長に竹下正幸氏 日本養鶏協会
(社)日本養鶏協会(栗木鋭三会長)は4月26日、東京都千代田区平河町の都市センターホテルで第62回通常総会を開き、平成22年度事業報告・決算、23年度事業計画・予算などを原案通り承認するとともに、役員の改選を行ない、新会長に竹下正幸氏(日本鶏卵生産者協会副会長)が就任した。
昨年12月に定款を改正し、価格差補てん事業を行なうことと、生産者の個人加入を認めてから初めての総会となり、会員はこれまでの団体会員を中心とした53会員から311会員に増加した。
冒頭、東日本大震災で亡くなった被災者に黙とうし、あいさつした栗木会長は「本日の総会は、これまでとは意味合いが違い、平成16年に日本鶏卵生産者協会ができて、自分たちの業界のことは生産者が主体的に担うということで、いくつかの成果を積み上げ、その歩みの中で昨年12月に生産者が中心になっていく組織へ定款を改正し、本日の総会になった。
この間、特に日本鶏卵生産者協会の秋田政策担当副会長は、自らの仕事を投げ打って日夜努力していただき、AIのリアルタイムPCRの採用や、鶏卵生産者経営安定対策事業などの実現に大きな力を注いでいただいた。
このほか、日本の養鶏産業を主体的に担う組織としての新しい日本養鶏協会の実現に、多くの方々のお骨折りをいただいたことに感謝する。新組織として第一歩を踏み出す本日の総会に、皆さんの絶大なる協力をお願いしたい」などと述べ、会長在任中の協力に謝意を表した。
農林水産省生産局畜産部畜産振興課の谷口康子課長補佐、(社)中央畜産会の伊佐地誠参与が祝辞を述べ、緒方忠浩日本鶏卵生産者協会会長代行を議長に各議案を審議したが、いずれも原案通り承認した。
23年度の事業計画は、(1)東日本大震災や、福島第1原発事故の被害生産者が風評被害も含め、経営の継続・再開ができるよう支援する(2)事業実施主体に決まった鶏卵生産者経営安定対策事業を積極的に啓発し、生産者の経営安定と鶏卵の需給安定に努める(3)日本鶏卵生産者協会との実質的な統合を進め、関係者の協調・協力による組織の再編・運営強化を図る(4)公益法人改革に伴い、主体的活動が行ないやすい一般社団法人への移行を検討する(5)高病原性鳥インフルエンザの防疫対応を改善し、鶏卵の移動制限についてはリアルタイムPCRを導入して発生から8時間、遅くとも1日以内に解除することや、移動制限の範囲もEU並みに半径3キロメートルにすること、大規模発生への懸念に対し、ワクチンの条件付き使用(リングワクチネーション)などを働きかけるとともに、生産者互助基金事業への一層の参加を促す(6)国際競争ができる条件を確保するために、飼料や生産資材対策を充実する(7)鶏卵公正取引協議会への支援(23年2月現在、212の公正マーク承認)(8)鶏卵生産者経営安定対策事業に参加する新規会員からの拠出金を積極的に活用して鶏卵の消費促進対策を実施し、消費者などに鶏卵の良さを啓発する(9)鶏卵業界の各種課題を解決するための農政活動に積極的に取り組む――など。23年度の鶏卵生産者経営安定対策事業は、暫定で144万トンの直接契約を見込んでいる。
会費と特別会費の額は、個人の養鶏生産者は、飼料基金との契約数量に基づき、契約数量4000トン以上(約10万羽以上)がトン23.81円、4000トン未満(10万羽未満)が11.9円。都道府県養鶏協会は前年度に比べ半額、団体会員は前年度と同額とした。
政治力を強化し諸課題の解決へ
新会長に就任した竹下正幸氏(島根県養鶏協会会会長、(有)旭養鶏舎社長)は「小さな島根県の出身であるが、先ほどの臨時役員会で、役員や会員の皆さんのご協力を得るということで会長の重責を担うことになった。日本養鶏協会は62年間、団体会員の組織として運営されてきたが、昨年12月に定款が改正され、個人会員の加入が認められ、養鶏生産者が自ら主体的に新しい日本養鶏協会を担っていくことになり、先ほど23年度の事業計画を含む各議案を承認していただいた。
今年の事業計画はいろいろあるが、これを推進し、養鶏の諸問題を解決していくためには政治力の強化が大きな課題になると思っている。また、養鶏安定制度、鳥インフルエンザ、アニマルウェルフェア、東日本大震災の問題が山積みになっている。引き続き皆さんのご協力をお願いするが、ぜひ、言葉だけでなく、一緒に行動していただきたい。養鶏産業が発展していくよう、共に頑張っていきたい」と抱負を述べた。
また秋田善棋副会長は、最近の養鶏情勢について報告し、これからの養鶏産業が安定的に発展していくためには、業界活動としても「国際的感覚と政治力が重要になっている」と強調した。
【日本養鶏協会の第62回通常総会(左)。就任の抱負を述べる竹下正幸新会長(右)】