鶏卵を使ったがん治療の研究成果発表 京都大学の玉野井特定教授

京都大学高等研究院物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の玉野井冬彦特定教授らは5月28日、鶏の有精卵の中に、人の卵巣がんを短期間で再現することに成功したと発表した。

がん治療では、各患者に適した抗がん剤を個別に選択する必要があるが、現在は一般的に、同じ種類のがんには同様の抗がん剤が使われる。玉野井教授らは、鶏の有精卵の殻に穴を開けて、胚を取り巻く「漿尿膜」上に細かく砕いた人の卵巣がんを乗せ、3~4日間でがんを鶏卵内に再現。マウスでは、同様のがんの再現に数週間かかることや、有精卵はより安価なことから、時間や費用の短縮につながり、実用化されれば、患者のがんを再現して最適な薬を1週間ほどで探せるようになるとしている。

さらに、同教授らが開発した多孔質のナノ粒子の穴に抗がん剤を詰めて、発がんした有精卵に投与したところ、他の臓器にダメージを与えることなく、がんだけを2~3日で消滅させることができたという。同技術は、副作用の少ない抗がん剤治療に役立つことなどが期待されるとのこと。

鶏卵を使った人のがんの研究は、今後さらに進むとみられることから、研究チームでは大腸がんや肺がんなど、他のがんでも同様の再現ができるかを検討するため、京都大学のバイオリソースセンターとの共同研究を始めたとのこと。さらに、鶏卵を使ったがんの個別医療が可能かどうか検討したいとしている。

今回の研究成果は英国の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に掲載された。