鳥インフルの防疫指針改定 家畜衛生部会
ウクライナからの家きん肉輸入も了承
農林水産省は5月21日、食料・農業・農村政策審議会の第35回家畜衛生部会を開き、昨年11月5日に農林水産大臣が審議会に諮問した『高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)および低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)』に関する特定家畜伝染病防疫指針(AI防疫指針)の変更について、家きん疾病小委員会で議論し、都道府県の意見も聞いてまとめた変更案を『適当である』と大臣に答申することを決めた。
AI防疫指針は、前文と第1~17の条項で構成されている。
変更案のうち、前文と「第1 基本方針」「第2 発生の予防および発生時に備えた事前の準備」「第3 発生予察のための監視」「第6 病性等判定時の措置」「第7 発生農場等における防疫措置」「第8 通行の制限または遮断(法第15条)」「第9 移動制限区域および搬出制限区域の設定(法第32条)」「第11 消毒ポイントの設置(法第28条の2項)」「第12 ウイルスの浸潤状況の確認」「第13 ワクチン(法第31条)」「第14 家きんの再導入」「第15 農場監視プログラム」「第16 発生の原因究明」には、大きな変更はないとしている。
ただし、前文の5には昨今の情勢を踏まえて「訪日外国人等の渡航者の増加や物流の活性化による」などの文章が加えられた。第1、2項には特定技能在留資格の創設を踏まえて「外国人労働者」などの文言が追加されている。第9項の移動制限区域(HPAIは原則半径3㌔)や搬出制限区域(同10㌔)などは変更ない。
「第4 異常家きん等の発見および検査の実施」では、HPAI以外の理由で死亡家きんが増えたことが明らかな場合でも、必ず獣医師か家畜保健衛生所(家保)が判断する旨や、その翌日も平均死亡率の2倍以上か5羽以上のまとまった死亡を確認した場合は、家保に届け出ることを明記した。簡易検査の羽数は、ウイルス排泄量が少なかった香川県の事例を踏まえ、死亡家きんの検査羽数を5羽から11羽に増やし、採材方法も示した。簡易検査で陽性が出た場合は、現行通り家保で遺伝子検査などを実施するが、その時点で検体を農研機構動物衛生研究部門に運ぶ旨も明記している。
「第5 病性等の判定」では、HPAIやLPAIの患畜や疑似患畜の判定日(発症日が推定できる場合は、発症日)の7日前以降に、当該農場で飼養管理をした後に別の農場で飼養管理をした場合に、その農場の家きんも疑似患畜とする規定について、その農場の家きんに異常が確認されず、飼養衛生管理の厳格な順守などが確認された場合には、動物衛生課と協議して疑似患畜から除外できる旨を明記。除外した場合は、移動制限区域内の農場と同様の措置を講じる旨も示している。
「第10 家きん集合施設の開催等の制限」では、これまでの指針に規定がなかった液卵工場の規定を盛り込み、GPセンターの再開要件を平時から満たしていることが家畜防疫員の立ち入り検査で事前に確認でき、さらに発生時も要件を満たしていることが確認できる移動制限区域内の液卵加工場は、動物衛生課と協議の上、食用卵の受け入れの制限対象外とすることができる旨を明記した。
「第17 その他」では、家きんの所有者や防疫措置従事者が終息後に精神的ストレスを持続している事例があることに鑑み、都道府県は相談窓口の運営継続に加えて、農場への訪問などのきめ細かな対応を行なうよう努めることとしている。
◇
特定家畜伝染病防疫指針は、家畜伝染病予防法の規定に基づき、最新の科学的知見や国際動向を踏まえて、少なくとも3年ごとに見直すことになっている。同日の審議会では、口蹄疫・牛疫・牛肺疫の防疫指針の答申案も示された。
また、ウクライナからの生鮮家きん肉の輸入解禁要請に対し、同国のAI清浄性のリスク評価を行なった結果、「ウクライナ(クリミア自治共和国およびルハンシク州・ドネツク州のロシアおよび武装勢力の実効支配地域を除く)をNAI(通報対象AI)の清浄国と認定して差し支えなく、一定の条件の下に、同国から生鮮家きん肉を日本に輸入することを通じて、NAIが日本に侵入するリスクは無視できると考えられる」との報告書が示され、了承した。
このほか、5月21日付で新たに吉川貴盛農林水産大臣から諮問された豚コレラ・アフリカ豚コレラの防疫指針変更と、ロシア連邦トゥーラ州とブリャンスク州のHPAI清浄性認定に関するリスク評価については、今後、各専門小委員会で検討することにした。