暑さで大玉減続くも… 卵価は依然上昇力弱く
「おでん」「月見メニュー」などが期待
鶏卵相場(M基準)は7月20日に大阪、27日に東京で各10円下げて145円となり、8月はもちあいが続いた。猛暑の影響で大玉は上昇したが、中玉以下は動かず、東京、大阪のM基準月間平均も145円となった。依然として業務・加工需要の低迷が続く中、コンビニの「おでん」や、恒例の「月見メニュー」などが、数少ない需要の底上げ期待材料となっている。
鶏卵相場(M基準)は7月27日以降、145円の低水準でもちあいが継続。西日本では、厳しい暑さによる卵重低下で大玉の出荷が減り、8月20日に大阪市場のLサイズが5円、LLサイズが10円上昇し、東京も25日に同様の上昇をみせたものの、業務・加工需要の低迷による供給過多の傾向は、全国的に解消されていない。
成鶏更新・空舎延長事業への参加羽数は、(一社)日本養鶏協会などの呼びかけにより、6月末時点の約572万羽から130万羽程度増え、700万羽程度になったとされる。各地の生産者の協力により、自主的な換羽誘導なども積極的に進められ、お盆明けの滞貨も、懸念されたほどには多くなかったとの声も聞かれている。
ただ、需要の減退があまりに大きく、これらの努力をもってしても、需給が均衡するまでには至っていない状況。小売り需要は依然、前年を数%上回る水準が続いているものの、業務・加工需要が20%程度は減っているとみられ、小売りと業務を半々とした場合の国産鶏卵全体の需要は、10%弱は減少しているとみられている。JA全農たまご㈱の推計では、全国の成鶏飼養羽数は9月に前年並みの1億3900万羽強まで増える試算となっており、仮に全体の需要減が7~8%としても1000万羽分の卵が余剰となっており、成鶏更新事業で700万羽分の生産が3~4か月減少する分を差し引いても、あと300万羽分の減産か需要拡大が必要となっている計算となる。
今後の消費については、コンビニ大手が8月25日から順次、全国で始めた「おでん」や、9月2日に始まったマクドナルドの「月見メニュー」などが好材料。8月の期間限定メニュー「ロコモコ」も好評だったことから、一定の需要が期待される。
ただ、外食全般は低調な推移が予想され、特に加工需要は当面、非常に厳しい状況が続くとみられている。背景として、新型コロナウイルスの感染を懸念し、旅行や移動を許さない空気やマスメディアの報道も強まる中、飲食店の営業や観光・出張について独自の要請や基準を示している自治体や企業も増えていることから、行楽地の飲食需要や、特に贈答用菓子などの需要は壊滅に近い状況となっている。小中学校は2学期の開始が早まったが、オンライン授業を継続する大学も多く、学校内外の給食・食堂向け需要なども、引き続き大きなダメージを受け続けるとみられ、学校側の対応も注視される。
秋以降のイベントも、相次いで中止や延期を余儀なくされており、有効なワクチンや移動・消費を妨げない合理的な感染防御策の確立・普及などで社会の空気や意識が変わらない限り、多くの農畜産物の生産・流通に多大な被害が及ぶ状況が続くとみられる。