堆肥と化学肥料の配合が可能に 肥料取締法改正で

今年12月からルール変更

昨年の通常国会で成立した「肥料取締法の一部改正案」が昨年12月4日に公布された。法改正のポイントは①肥料の原料管理制度の導入②堆肥と化学肥料の配分をルール化③法律の名称を「肥料の品質の確保等に関する法律」へ変更。本紙関係では今年(令和2年)12月1日から、届け出によって堆肥と化学肥料を配合した肥料(指定混合肥料)を生産できるようになる(審査・手数料とも不要)。

これにより、土づくりと施肥が同時にでき、施肥作業が省力化されるとともに、鶏ふんなどの家畜ふん堆肥で不足する成分を化学肥料で補うことで、農家が使いやすくなり、堆肥の活用が期待される。また、配合肥料の原料として堆肥が利用されることで、コストダウンの可能性が高まることや、ペレット化と組み合わせることで、堆肥の散布が容易になるとともに、偏在している家畜由来の堆肥の広域流通が可能になるメリットなどが期待されている。

肥料は、鉱物を原料とするものや化学合成された「化学肥料」と、産業副産物由来の「汚泥肥料(下水汚泥肥料等)」「副産系肥料(リン回収物、けい酸カルシウム含有物、アミノ酸含有物、肥料用ゼラチン等)」「有機質肥料(魚かす、肉かす、なたね油かす等)」、家畜ふんや稲わら等の「堆肥」に大別される。

農家が安全で効果的な肥料を適切に使用できるようにするために、昭和25年に制定された肥料取締法では、肥料の安全性や効果の基準を設定した「公定規格」や、規格の適合性を流通前にチェックする「登録制度」、肥料の品質表示を義務付ける「保証票」などによって、肥料の安全性の確保、良質で低廉な肥料の供給を担保してきたが、時代の変化に伴い、様々な課題も生じてきていたため、同法の見直しを行なったもの。

その一つは、地力が低下した土壌や、栄養バランスが悪化した土壌の増加。例えば、水田では堆肥施用量の減少などにより、地力の低下が懸念される。畑や果樹園などでは、窒素・リン酸・カリ中心の画一的な施肥等により、ホウ素等の微量要素の欠乏、リン酸過剰による病気の誘発、カリ過剰による栄養バランスの乱れがもたらすマグネシウム欠乏症などが発生しているため、肥料の施用を改めて見直すことで、収量や品質の向上や生産の安定がもたらされる可能性がある。

二つ目は、産業副産物を活用した肥料の重要性の高まり。世界的に肥料の需要が伸びており、将来にわたる肥料の安定供給のためには、海外依存度の高い肥料原料を、国内で調達可能な産業副産物の有効利用で補うことが重要で、産業副産物を活用した肥料は、安価で有機物や肥料成分を含み、低コストで土壌の改善に役立つだけでなく、家畜排せつ物の処理や食品リサイクル等の資源循環にも役立つ。例えば、普通化成肥料1キロ(窒素・リン酸・カリ濃度が8-8-5%、小売価格98円)と同等以上の肥料成分量を鶏ふん(同濃度3.3-4.3-2.3%、同23円)で確保する場合の施肥量は2.4キロで、56円に相当し、約4割安となる。

三つ目は、データに基づくきめ細かな施肥や土づくりの新たな展開への対応。スマート農業の展開により、土壌や作物の生育などの様々なデータの収集・解析が可能になり、これらの動きに対応した肥育制度の見直しを合わせて進めることで、施肥や土づくりの最適化が可能となり、収量や品質の向上が期待できる。「肥料の配合に関する規制の見直し」による主な変更点は次の通り。

①現行制度では、含有成分が安定していない「堆肥」と、安定している「化学肥料」を配合することを原則認めておらず、農家は堆肥と化学肥料をそれぞれ散布する必要があったが、堆肥の利用拡大による土づくりの促進や、施肥の省力化などの観点から、普通肥料(化学肥料)、特殊肥料(堆肥など)、土壌改良資材を配合した肥料を新たに法律上に位置付け、生産できるようにした。

②土壌分析結果に基づくきめ細かな施肥の取り組みが増加しているが、肥料の配合後に造粒等の加工を行なう肥料(化成肥料)については、成分の組み合わせを変えるたびに登録を取らなければならず、機動的な肥料生産を制約していたが、登録済みの肥料を配合して生産する肥料は、配合後に造粒する場合も含めて届出制とし、登録不要で届け出による生産可能な肥料の範囲を拡大した。

③配合肥料や特殊肥料の届け出期日を、生産の2週間前までから、1週間前までに変更した。

なお、配合による品質低下を避けるため、指定混合肥料の原料となる堆肥の含水率は50%以下とする方向で検討が進められている。

これにより、堆肥の利用がより進み、畜産農家にとっては家畜ふんの副産物収入の増加にもつながると考えられる。また、畜産農家は、肥料メーカー等の加工や輸送を担う事業者とも連携し、耕種農家のニーズを踏まえて堆肥の高品質化に取り組んでいくことが重要になる。