全鶏会議が鳥インフル対策を農水省に要請

防疫措置強化や事務手続き簡素化など8項目

全国養鶏経営者会議(市田真新会長、略称・全鶏会議)は2月22日、農林水産省消費・安全局動物衛生課の石川清康課長らに高病原性鳥インフルエンザ対策に関する要請書を提出した。

2月22日現在で、これまでに類を見ない国内50事例まで感染が拡大していることについて、要請書では「養鶏を営む生産者は、個々の経営を左右されるほどの大きな影響を受けている。発生農場では、鶏舎の一部破損や長靴交換の不徹底などが疫学調査で指摘されている。今季事例では移動制限や搬出制限を受けた農場も数多く、弊会会員も今まで以上に危機意識を持ち、飼養衛生管理基準の順守に取り組んでいるが、業界としては感染の拡大に歯止めがかからない状況である。

国や都道府県、市町村、関係農業者、農業関係機関・団体は対策に全力を挙げていただいている状況であるが、高病原性鳥インフルエンザの発生に対し国と生産者が一体となり、より一層の防疫対策に取り組みたい」とし、次の8項目を要請した。

1 各種制限区域内の迅速な清浄確認等のための都道府県に対する支援

高病原性鳥インフルエンザが発生した当該地域では、基本的に24時間以内に清浄確認が取れているところである。しかし、多くの発生事例が確認された一部地域では、移動制限区域内にある農場の鶏卵の清浄確認が進まず、各農場の経営や市場での品薄につながるなど影響を受けている。国は、都道府県に対し特定の地域で連続的に発生が起きても円滑な清浄確認や防疫措置を行なえるよう、引き続き必要な指導と助言などの支援を徹底すること。

2 都道府県の防疫水準の強化について

今般のように連続して病例が発生した地域では必要な防疫措置が遅れてしまっている事例が散見されている。例を挙げれば、患畜(一部疑似患畜含む)の殺処分のみを行ない、他の発生農場に対応人員が移動しているため防疫措置が完了せず、各種制限の解除が遅れてしまうなどがあった。

殺処分のみでは死鶏や体液・鶏糞から小動物等を介して他農場へ感染拡大が起きる可能性があり、完全な防疫措置とは言い切れない。我々生産者は感染防止のため、日々の防疫対策を強化していくが、国でも都道府県の防疫水準の強化に一層取り組むこと。

また、都道府県から申請があった場合には、保有する防疫資材などの譲与・貸し付けについて早急に支援すること。

3 疫学関連農場の陽性判定の十分な説明について

疫学関連農場での疑似患畜の取り扱いやPCR検査、抗原検査について今後の対応や検査結果を十分かつ丁寧に説明すること。

4 発生農場と移動・搬出制限下の農場に関する事務手続きの簡素化の検討について

今季各地で発生した事例で該当地区の生産者は鶏糞や卵の移動について各種制限下におかれた。病例の多発地域では関係機関の事務手続きも混乱を極め、卵などの出荷に関する国への特例申請に影響があった。

国民の食料生産を担う生産者としても販路や自社の経営のみならず、消費者へ安定した食料供給にも影響を与える可能性があり、大きな不安を抱えている。

我々生産者も都道府県と力を合わせ初動対応や手続き、人員・資材の確保などについて確認実施する。国は引き続き迅速な事務対応の実施に尽力するとともに非常時には、特例等に関する書類や申請について手続きの簡素化を検討すること。

5 発生農場と移動・搬出制限下の農場に対する支援の拡充について

高病原性鳥インフルエンザやそれに伴う各種制限による経済的負担と損失が当該生産者には発生しており、それに対する経営維持・経費増加に関する支援をしていただいているところではあるが、鶏糞の緊急的な処理(産業廃棄物として処分するなど)に関しては損失補填の対象外となるなど、対象項目について再確認・再検討すること。

また、経営再建までの期間の従業員の雇用維持などの支援方法について既存の制度の拡充や新しい制度の創設などを含め併せて検討すること。

6 発生地域やそれ以外の地域も含めた防疫について

現在、我々生産者は飼養衛生管理基準に基づいた防疫対策に取り組み、感染を押さえ込むべく努力をしている。ウイルスの媒介の原因とされる野鳥や渡り鳥などに対する備えとしての防鳥ネット等の防疫用資材や、様々な技術を活用しながらさらに防疫対策に注力したいと考えている。

防疫用資材や技術の導入にあたり、個々の経営体でも実施できるよう補助や支援を国でも検討すること。

また、高病原性鳥インフルエンザの流行時期には関係省庁と協力して、渡り鳥の飛行ルートや飛行時期などのデータを収集し、関係団体や都道府県を通じてさらに情報提供を行なうこと。

7 鶏卵の安全性の消費者への情報発信について

現在、発生地域はもちろん、国内では鳥インフルエンザへの不安感、鶏卵の安全性に関する誤った知識による消費者の買い控えや風評被害などの例が散見される。国や自治体、生産者が一体となり鶏卵の安全性の普及について現在も対策を講じているところであるが、3者が協力し、より一層の消費者への積極的な情報発信を行なうこと。

8 今後の鳥インフルエンザに関する検討について

今後は、今季の高病原性鳥インフルエンザに関し、原因究明・防疫対策の検討を実施すべきである。生産者は日々の防疫体制の再検討・再確認を行ない、国では飼養衛生管理基準や防疫対策をより揺るぎないものとするため、生産者との意見交換の場を設けるなど、生産者と行政がより強固な防疫体制の構築に取り組むこと。