全国協議会を開く 日本成鶏処理流通協議会が日本養鶏協会と共催で

HACCP、鳥インフル、成鶏更新、AWテーマに

初日に全国協議会、2日目に例会を開催。成鶏処理企業などが抱える課題や、その解決策などを学び、意見交換した

日本成鶏処理流通協議会(会長=松尾邦光印南養鶏農協組合長)は11月8、9日にJR大阪駅直結のホテルグランヴィア大阪で全国協議会・例会(主催=同協議会、共催=〈一社〉日本養鶏協会)を開き、会員や関係者ら約40人が出席した。

栗原俊夫副会長(㈱クリチク会長)が司会を務め、あいさつした松尾会長は、今大会では①HACCPの法制化②鳥インフルエンザ(AI)③成鶏更新・空舎延長事業④アニマルウェルフェア(AW)――をテーマに据えたことについて「私たちの抱える問題のうち、この4つは特にかかわりが深い。皆様にとって意義ある研修になればありがたい」と述べた。

厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課の東良俊孝課長補佐が『最近の食肉・食鳥肉行政の動向』、農林水産省消費・安全局動物衛生課の金子明誉専門官が『食鳥処理場におけるAI発生時などの対応』、同省生産局畜産部食肉鶏卵課の伊藤寿課長補佐が『鶏卵生産者経営安定対策事業と今後の施策』、(公社)畜産技術協会技術普及部の八木淳公部長が『AW 家畜の輸送に関する動向』の演題で講演。

この中で東良課長補佐は、2021年6月1日に完全施行となる『HACCPに沿った衛生管理の制度化』の施行スケジュールや、法改正後の厚労省令のイメージ、大規模食鳥処理場でのHACCP導入状況などを解説。HACCPの成果を客観的に把握するための2つの微生物検査方法(と体表面を拭き取る『拭き取り法』と、肉そのものを使う『切除法』)については「同じ部位の一般細菌数や大腸菌数などを比較すると、切除法の方が多くの菌が取れる。HACCPとは衛生管理のレベルを向上させていくものであり、より客観的に測定できるのは切除法ではないかと検討を進めている」などとした。

金子専門官は国内外でのAI発生状況、AI発生時の食鳥処理場のまん延防止措置などを解説。成鶏処理場で、集荷後の生鳥に異常を感じた際は家保への早期通報が重要になると指摘し、AI発生が確認された場合は当該処理場を中心に半径1キロメートル以内が移動制限区域に設定されると説明。「この圏内にある農場は発生翌日までの検査や、10日後の再検査といった対応が必要になる。食鳥処理場は対応後に消毒を徹底して要件を満たせば、基本的には長期間にわたって営業停止になることは考えにくいと思われる」と補足した。

伊藤課長補佐は、令和2~4年度の鶏卵経営安定対策事業の基本的な考え方は、①鶏卵需給の安定を図るため成鶏更新・空舎延長事業に力点を置いた見直しを実施②見直しに当たって『生産者(生産規模)間の不公平感の解消』『中小規模生産者への配慮』『成鶏処理企業に対する出口対策の強化』を考慮③安定性確保のため事業の基金化を図る④人口減に伴う需要減少に備え殻付卵以外への用途支援を行なう(国産粉卵や成鶏肉を活用した新商品開発などにかかる支援)――と紹介。成鶏更新・空舎延長事業の出口対策の強化については「皆様もかなり無理をしている状況。成鶏肉の売れ行きが悪い中で鶏を受け入れており、ここでの対策強化は避けて通れない」などとした。

八木部長はAWのうち、家畜の輸送に焦点を当てて講演。欧州連合(EU)の理事会指令では『動物の長距離輸送を可能な限り削減』『積載密度の制限』などが基本的な事項として定められているとし、家きんをコンテナ輸送する際の積載密度の制限値(初生びなの場合は1羽当たり21~25平方センチメートル、生鳥体重1.6キロ未満の家きんでは体重1キロ当たり180~200平方センチメートル)など多くの情報を参加者に伝えた。国内の成鶏処理企業にとって今後重要となる点は「少しでも環境が良くなるよう検討し、その姿勢を示していくことが大切。また、皆様がこれまで行なってきたことにもウェルフェアは多く含まれる。業界の各社と団体が、自分たちの行なっているAWや、動物への配慮についての共通認識を持つことも重要」などとした。