アジアのAI根絶は難しい FAO日本事務所と農林水産政策研究所が報告会
FAO(国連食糧農業機関)日本事務所と農林水産政策研究所は11月24日、東京・霞ヶ関の中央合同庁舎2号館で「アジアにおける鳥インフルエンザの現状と対策」についての報告会を開いた。
昨年末から今年4月にかけて東南アジアで発生した鳥インフルエンザ対策で、日本政府が160万ドル(約2億円)を拠出してラオス、カンボジア、インドネシア、ベトナムで実施した現地調査の内容と対策の教訓を踏まえて、FAO日本事務所の遠藤保雄所長、小平基次長が報告したもの。
アジアでは約200億羽の家きんが飼養されているうちの1億羽以上が鳥インフルエンザによって死亡・殺処分され、現在もベトナム、カンボジア、インドネシア、タイ、マレーシア、パキスタン、中国などで再発している。
報告会では、国によって家きん産業の発展段階が異なることなどに加え、(1)鳥インフルエンザの報告遅延あるいは経済的損失を恐れて発生情報を隠す(2)バイオセキュリティの劣悪さ(3)防疫措置に必要な知識と各種資材や器材の不足(4)監視・現場への交通手段不足と道路事情の悪さ(5)規制措置の不備と順守の不徹底――などの問題があったことが指摘された。
また、東南アジアでは大規模なインテグレーターによる商業的な養鶏が存在する一方で、中小規模の商業養鶏、農村での零細な庭先養鶏が混在している。鳥インフルエンザの発生によって中小規模の商業養鶏は減少気味であるが、庭先養鶏は貧困な農村の中で貴重なたん白給源となっているためになくならない。こうした養鶏の二重構造の存在が、鳥インフルエンザの根絶を難しくしている面もある――などと報告された。
このため、各国の防疫能力の向上と先進国の支援が必要で、特に(1)アジア規模での情報開示・共有と対応(2)迅速な同定のための国際協力と技術協力(3)早期発見・早期封じ込め・移動制限(4)防疫措置の改善とアヒル対策の拡充(5)ワクチンの評価(6)アジア貧困地域のたん白給源の永続的確保(7)家きん産業の再建――などが今後非常に重要になるとした。
そのうえで遠藤所長は、「日本とアジアでは衛生状況が異なるが、アジアでは鳥インフルエンザが潜在化している。そのような国が日本を取り囲んでいるので日本には危険性がある。このため日本はアジアのことを真剣に考えて、何ができるかを考えてほしい」と強調した。