国産の『価値創造』と『発信力』を高めよう 業界の結束力に期待
過去最高値の配合飼料価格と2年連続の鶏卵・鶏肉価格の低迷――養鶏経営の先行きに懸念が広がる。
アベノミクス効果による景気回復が消費の拡大につながり、トウモロコシの世界的な豊作が配合飼料価格の下落となり、生産コストの低下に期待が膨らむ一方、消費は人口減少と少子高齢化や、来年4月の消費税増税で、拡大どころか減退に拍車をかけるのではとの見方も強い。
52億円の農水省補助で運営されてきた鶏卵生産者経営安定対策事業の『価格差補てん事業』は、財源不足から2年連続で8月に補てんが打ち切りになりそうだ。約538万羽の参加申請があった『成鶏更新・空舎延長事業』や、猛暑の影響で、鶏卵相場はようやく底値を脱したものの、経営に与えた後遺症は大きい。日本養鶏協会などの生産者団体は、事業の法制化の裏付け、予算と内容の大幅な拡充・強化、卵の生食文化を維持するための品質向上と輸入卵に対抗できる新たな加工卵対策――を政府に要望しているが、26年度予算でなんとしても実現したい。
政府の支援をほとんど受けていない鶏肉は、日本食鳥協会が流通・消費団体に、国産鶏肉の消費拡大を呼びかけたほか、政府に平成4年度から実施している食鳥検査制度の検査手数料の公費化、消費者への認知度向上、さらには消費量の約7割を占める外食・業務用加工品の原産国表示、安全・安心な国産鶏肉の普及・啓蒙と消費拡大策などを強く求めてきたが、政治力の弱さからか、なかなか実現していない。
関税の原則ゼロを目指すTPP(環太平洋経済連携協定)は、現政権が国の安全保障も含め、米国を中心とする自由主義陣営の一員としての道を選択していくとしている以上、参加をやめることは事実上難しい。その結果、農畜産物の市場開放が一段と進み、米や牛肉など聖域とされる5品目でも生き残りは容易でないとみられる。
鶏卵と鶏肉も、業務・加工向けを中心に輸入量が徐々に増加し、国内生産量が縮小するのは必至だ。政府と大学教員の会で減少率に対する見方は異なるが、生産量約250万トン、自給率95%の鶏卵は17%減、生産量約146万トン、輸入調製品も含めた自給率約50%の鶏肉は20%減(政府試算)~30%減(大学教員の会試算)としている。
わが国の鶏卵・鶏肉は生産面では、他の主要国に比べ高コストになりやすく、コスト競争だけでは生き残れない。産業を守るためには、政府の政策誘導が不可欠で、内外価格差を是正する規制改革や、外食・業務用加工品の原産国表示はなんとしても実現しなければならない。さらに、価格は多少高くても、おいしくて安全・安心、高品質で、消費者に支持される『国産ブランド』価値を創造・発信し、主体性を持って販売することがより重要になる。
鶏卵では『いいたまごの日』や『オムレツの日』『春を祝おう!イースター』に加え、『たまごニコニコ大作戦』など、業界が結束して消費を盛り上げようとする気運が高まっている。鶏肉も『国産チキンまつり』に加え、日本食鳥協会が『国産鶏肉市場活性化対策事業』に取り組み、国産鶏肉相場の浮揚と安定化、取引量の拡大などを模索している。個々の企業努力と業界の結束力で国産の優位性を広く発信し、今こそピンチをチャンスに変えていく絶好の機会とすべきだ。