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鳥インフルエンザ対策の徹底などを指示 農林水産省の全国家畜衛生主任者会議

2013.05.15発行
 農林水産省は4月23日、各都道府県の家畜衛生担当者を集めた全国家畜衛生主任者会議を開き、家畜伝染病の防疫体制と衛生対策の徹底を指示した。
 藤本潔消費・安全局長は、家畜伝染病予防法(家伝法)の改正から約1年半が経過する中で、防疫体制の強化が着々と図られているとした上で「日々自戒を込めて、過信と慢心が、家畜伝染病の発生につながると思っている。メディアの間ではH7N9型鳥インフルエンザ(AI)への関心が高いが、AIは世界各地で種々の亜型が発生し、清浄化の見通しは立っていない。口蹄疫も中国、台湾、ロシアなどで発生している。いつ、わが国に侵入してもおかしくない状況と考え、国と都道府県、市町村、生産者と関係団体が一体となって、実効性ある高い防疫レベルを保たなければならない」と強調した。
 川島俊郎動物衛生課長は、現在強化している防疫体制のうち水際検疫について「家伝法の改正以降、靴底消毒に加えて、入国者への質問、携帯品の消毒などに取り組んでいる。検疫探知犬については先日、福岡と中部の両国際空港にも配置したため、5空港で2頭ずつの体制となった。千歳空港と国際郵便物を扱う川崎東郵便局にも今年度中に配置する予定」と説明。
 国内対策については、飼養衛生管理基準の順守と家畜衛生対策の底上げが必須だとし、「口蹄疫やAIの発生から3年前後が経過し、一部の関係者の間では、意識の風化や緊張感の低下が見受けられると聞いている。あのような被害を二度と起こさないためにも、農場段階での飼養衛生管理の徹底が必要不可欠だ」と述べ、このほど実施対象に加わったハトのサーベイランスや、優良な取り組み事例の報告、防疫演習などへの協力を各都道府県に求めた。
 中国でのH7N9型AIの発生情報については、4月18日に中国農業省が発表したモニタリング検査結果によると、各地の食鳥や豚の処理場、野鳥から集めた8万4444サンプルのうち、4万7801サンプルの検査が終了し、うち39サンプルでH7N9型ウイルスが検出されたとのこと。39サンプルには、4月16日までに公表された南京市の野生のハトと、生鳥市場9か所の市場のサンプルが含まれている。
 4月22日に発生が報告された江蘇省のハト肥育農場の事例については、担当者が「中国大使館に問い合わせたところ、料理に供するためのハトを肥育する農場があるとのことで、日本とは全く異なる生産形態があるようだ。生鳥市場ではなく農場で発生が確認された点がこれまでにないが、引き続き情報収集と発表に努めていく」と説明した。
 藁田純畜水産安全管理課長は、同課が進めている飼料の安全確保対策や、承認審査の迅速化などの諸施策を説明したほか、動物薬メーカーの負担軽減につながる施策として、省令の改正により7月1日付で動物用医薬品の証紙が廃止され、2年間の移行期間に入ることや、4月1日付で30か月齢以下の牛の脊柱などから製造した動物性油脂の豚・鶏用飼料への使用が許可されたことなどを報告した。
 動物検疫所はAI対策について、中国・タイ製の加熱処理家きん肉は、引き続き全件解凍検査して加熱状況を確認しているほか、AIワクチンを昨年末時点で国内3支所に475万ドーズ保管していると報告した。
 動物医薬品検査所、農水省経営局保険課、動物衛生研究所、消費安全技術センター(FAMIC)も、それぞれの取り組みと今年度の方針を説明した。

高病原性AIの点眼ワクチン開発 動衛研、20〜24年度研究成果発表

 同会議で動物衛生研究所は、平成20〜24年度まで農水省の委託で実施した「鳥インフルエンザ、BSE等の高精度かつ効率的なリスク管理技術の開発」プロジェクトの研究成果3題を発表した。うちAIに関する2題の概要は次の通り。
 【高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の家きんへの伝播動物の解析】鶏舎に侵入する可能性のある小型の国内留鳥(スズメとハト)のウイルス感受性と伝播リスクを解析する目的で実施。HPAIウイルスを経鼻接種したスズメはすべて死亡し、口腔スワブからはウイルス接種後1日目からウイルスが検出された。ウイルスを接種したスズメと同居させた鶏は18羽中10羽が死亡した。
 HPAIウイルスを経鼻接種したハトは臨床症状を示さず、ウイルスに感染したのは20羽中2羽だった。この結果から、スズメをはじめとする国内野鳥の鶏舎侵入防止対策が重要と言える。
 【HPAIの点眼ワクチンの開発】現行の注射ワクチンは、発症を抑制しても感染を完全に防げないため、用途は緊急時の防疫措置に限られている一方、感染予防が可能なワクチンの研究開発が期待されている。
 そこで、不活化ウイルスを点眼投与することで、鶏の粘膜で抗体を産生させ、ウイルスの体内への侵入(感染)を予防する手法を開発した。この技術は、従来のようなウイルスの拡散抑制を目的としたワクチンではなく、ウイルスへの感染そのものを阻止する新しいワクチンの開発につながるものである。本技術を応用することで、噴霧などによる省力的な接種も可能になると期待される。

 同所は、国立感染症研究所から中国で発生したH7N9型ウイルスの提供を受けたため、今後各種の試験を行なう予定。



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