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再生可能エネルギー事業に取り組む「セキネ」 太陽光発電パネル2種 鶏(畜)舎屋根に取り付けサービス

2013.03.15発行
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が昨年7月から始まり、畜産業界でも自家発電事業への関心が高まる中、畜産機器メーカーの(株)セキネ(関根弘之社長―本社・埼玉県深谷市田所町15−1)は、これまで非常に難しいとされてきた太陽光発電パネルを畜舎の屋根に設置する技術を実用化し、畜舎などへのパネルの設置と諸手続きを代行する「再生可能エネルギー事業」を立ち上げた。
 今後は、パネルの清掃やメンテナンスを担う部署も立ち上げ、畜産農家の自家発電事業をフルサポートする予定。
 設置するパネルは、電力買い取り期間の20年間にわたって畜産農場で稼働することを想定し、欧州のアンモニア耐久試験と、大手研究機関のフラウンフォーファーが抜き打ちで実施した「PID試験」に合格したドイツのQセルズとシャープの製品を採用した。太陽光パネルとして一般的な結晶シリコンタイプで、重量は1平方メートル当たり11.6キログラム、発電変換効率は17.4%。
 畜産農家が実際に、パネルを設置した際の初期投資額や発電能力、収益性などのデータを収集するため、セキネでは昨年7月から、畜舎用の屋根材を使った自社の埼玉倉庫で、独自の性能試験を実施している。
 自社倉庫に設置したパネルの総出力は、毎時137キロワットの高圧連系の発電所にしたが、変圧器が不要で初期投資が抑えられる49キロワット以下の「低圧連系発電所」のデータを集めるため、あえて10キロワット、15キロワット、30キロワット、40キロワットの4種類に分割したほか、悪条件下での取り組みも想定し、発電効率の悪い長手方向が南北に向いている屋根にもパネルを設置している。
 収集したデータからみた収益性については「投資額は数年で回収でき、その後は買い取り価格分がそのまま利益になる。太陽光発電による電力の買い取り価格が来年度以降30数円程度に減額されても採算が取れ、工賃は地表への設置より安く済む場合が多いことなども確認できた」(再生可能エネルギー担当の飯野稔チームリーダー)とのこと。パネルのメンテナンスについても「ホコリやゴミは雨で落ちるため、年1回程度の清掃で問題ない」(同)としている。
 セキネでは、売電に必要な「系統連系(送電線への接続)のための書類提出」「経済産業省への固定価格買い取り制度の適用申請」なども、すべて自社で行なったため、手続きに必要な日数や電力会社の請求費用の目安なども把握。さらに、太陽光発電アドバイザー認定証を担当社員に取得させ、自家発電について畜産農家により分かりやすく説明できる体制も整えている。
 心配されがちな畜舎の強度については「豚舎については構造計算上、設置できない場合があるものの、専門家の協力で補強でき、鶏舎については現在のシステム鶏舎であればまず問題ない」(同)とのこと。
 強度が特に低い畜舎のために、非常に薄くて軽量なパネルも用意している。このパネルは、「フレキシブルタイプ」と呼ばれるもの。重量は一般的な結晶シリコンタイプの9分の1で、薄くて曲がる特性から、曲面にも自在に設置できる。発電変換効率は規格によって異なり、10.5%〜12.7%。製造工程が短く、製造時のエネルギーの無駄も少ないため、将来はこのタイプが主流になるとみられている。
 ただ、セキネによると、太陽光発電パネルを畜舎の屋根に載せる際に最も大きな課題となっていたのは、畜舎の強度よりも、屋根の断熱材の性能維持だったという。
 畜舎の屋根材は現在、ウレタン製断熱材を挟んだガルバリウム鋼板が主流だが、この鋼板の上にパネルを設置すると、時間とともにパネルの重みで鋼板と断熱材の間にすき間ができて雨漏りする懸念がある。雨水がウレタンに染み込むと、断熱効果が弱まり、飼養している豚や鶏の生産性低下に直結するため、太陽光発電パネルを現在主流の屋根材にも取り付けられる新たな設置工法が求められていた。
 セキネでは、ドイツの畜産機器メーカーを通じて、屋根材を傷つけずにパネルを畜舎に設置できる金具を見つけることができ、これが突破口となって畜舎屋根へのパネルの搭載が実現した。
 セキネでは、50キロワット以上の「高圧連系発電所」のデータも収集するため、宮崎県に地上設置型のメガソーラー(出力1000キロワット以上の太陽光発電所)の建設準備も進めている。

口蹄疫を契機に売電の事業化目指す

 セキネは昭和15年に創業し、同36年に国内初の「鉄骨豚舎」を開発した養豚機器メーカーの老舗。近年は、海外の技術を積極的に取り入れた「スーパー豚舎」や、“水洗いしても壊れない”ことが特長の鶏舎専用LED電球『ユメルクス』を発売し、養豚・養鶏事業をサポートしている。
 今回、太陽光発電パネルの設置サービスを始めた経緯について関根社長は「平成22年春に口蹄疫が発生し、顧客でもあった被害養豚農場の苦しみを自分のことのように感じる中で『農家のために何かできるはず』との思いから、農家の当座の収入源として自家発電の事業化に取り組んだ。
 パネルの性能試験では、お客様の畜舎や建物が、いつでも最高の条件を満たすとは限らないため、あえて発電効率の悪い屋根にもパネルを設置し、発電の規模も、ほとんどの畜産生産者の方々のニーズに対応できるバリエーションを用意している。
 太陽光発電事業に対する畜産業界の関心は非常に高く、地元の畜産会や畜産団体、大手農場から講演やアドバイス、申請手続きの代行などの依頼をいただくようになった。
 畜舎屋根の太陽光発電パネルには、売電による収益に加えて、畜舎内温度の低下などの暑熱対策効果も期待できる。畜産業はきわめて厳しい環境下に置かれ続けているが、わが社は今後とも、畜産業のために少しでも役立ちたいとの思いで、太陽光発電だけでなく、畜糞を使ったバイオマス発電などについても、さらなる研究と努力を重ねていきたい」と話している。
 太陽光発電パネルへの問い合わせは、(株)セキネの再生可能エネルギー担当(電048・572・5111)へ。
 【セキネが自社の埼玉倉庫で試験している畜舎屋根搭載型のソーラーパネル(上)、シャープ製の太陽光発電パネル(中)、Qセルズ社のパネル(下)】



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