2020年各国データ③ IEC報告

EUのスペインとオランダ、デンマークでケージ飼養微増

採卵鶏飼養羽数

2020年分について報告があった32か国の合計採卵鶏飼養羽数は31億7243万2000羽。うち1位の中国が44%を占める。前年より増加した国は24か国、減少した国は6か国。

鶏卵生産量と自給率、貿易

33か国の合計鶏卵生産量は約6032万トン。うち中国が41%を占める。生産量が前年より増加した国は18か国、減少した国は12か国(注…インドの生産量は羽数に対して過大に見えるが、報告のままとした)。

鶏卵の国内自給率が100%以上の国は、高い順にオランダ、ポーランド、フィンランド、スペイン、フランス、米国、アルゼンチン、南アフリカ、中国、イラン、韓国、ペルー、ニュージーランド。

鶏卵の国内自給率が90%未満の国は、低い順にモンゴル、スイス、ドイツ、スロバキア、デンマーク、オーストリア、英国、キプロス。これらの国々の鶏卵貿易は輸入超過となっており、周辺国や主要な鶏卵輸出国などから卵を恒常的に輸入している。ただし、ドイツなどEU諸国や、EUを離脱した英国のIECレポーターからは恒常的な輸出も報告されており、東欧から西欧にかけての地域では、一つの経済圏として国をまたいだ鶏卵取引が活発に行なわれている状況が表れている。

最も顕著な例として、オランダやポーランドなど周辺国との緊密な貿易関係があるドイツからは、2020年は殻付卵について13万3000トンの輸出と37万8000トンの輸入、液卵について2万1251トンの輸出と7万9643トンの輸入、粉卵について4172トンの輸出と8124トンの輸入が報告されている。

飼養システム

欧州では、一般的にケージ飼養の比率が年々減少し、平飼いや放し飼いの比率が高まっていると言われているが、今回の報告では、スペインとオランダのケージ飼養比率が前年より1ポイント増え、スペインは放し飼い、オランダは平飼いの比率が1ポイントずつ減少した。デンマークではケージ飼養比率が3ポイント増え、平飼いが1ポイント、オーガニック飼養が2ポイント減少した。

この理由についての報告はないが、放し飼いやオーガニック飼養では、鶏を屋外に出さなければならないものの、著しい生産減やコスト上昇が避けられないほか、昨年も鳥インフルエンザのリスクが高い時期や地域では舎内飼いが必須となるなど、これらの飼養システムでの鶏卵生産を恒常的に維持することは困難になっていることなどが背景にあるのではないかと推測される。

前年との比較が可能な世界の26か国のうち、平飼いの割合が増えたのは13か国、減ったのは8か国。同27か国のうち放し飼いの割合が増えたのは13か国、減ったのは4か国。オーガニックの割合が増えたのは10か国、減ったのは5か国。

米国では、一部の州や大手企業が2025年前後までにケージ卵の取り扱いを止めると宣言しているが、本レポートでの平飼い卵の比率は依然、前年比約4ポイント増の18.70%にとどまっている。米国農務省(USDA)が今年8月2日に公表した最新のレポートでは、全米のケージフリー飼養羽数は8603万羽、7月時点の総飼養羽数約3億1700万羽に占める割合では約27%となっている。

鶏卵産業の研究者からは、平飼いなどのケージフリー卵の比率が71%に達しないと、宣言している各企業の需要を完全に満たすことはできないとの試算も出されていたが、現実的には既に不可能な数字となっている。今年2月に発表された米国ワット社による生産者へのアンケートでは、2025年時点の予想到達割合は約45%にとどまるとの見方が最も強い結果となっていた。残り4年間で毎年1400万羽強をケージフリーシステムに移さなければならない状況となっている。

IECレポーター報告による各国の採卵鶏飼養羽数や鶏卵生産量、飼養システム、白色卵鶏、有色卵鶏の羽数割合など