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局面が変わる鶏卵市場 魅力ある産業へ発展するために需要拡大と生産計画見直しを!

2018.04.25発行
JA全農たまご鞄兼本営業本部第1営業部部長
佐藤大二朗氏に聞く

 鶏卵相場は昨年まで、安定した展開をみせていたが、今年は年初から前年を下回る推移が続き、3月下旬以降は急速な右肩下がりとなった。4月中旬現在の全農・東京Mサイズ加重平均は、前年同期より2割(45円)低い180円まで下落している。直近の需給展望と求められる対応について、JA全農たまご鞄兼本営業本部第1営業部の佐藤大二朗部長に聞いた。

 ――鶏卵相場が、ここへきて急速に下落していますが、要因は。

生産増が消費増を追い越す

 佐藤部長 需要面をみますと、全体として非常に堅調に推移しています。総務省家計調査による昨年の1人当たり鶏卵購入量は、平成10年以降の20年間で最も多い10.5キロ(前年比約1%増)となり、今年も1〜2月累計で前年同期を約5%上回っています。パック卵の需要が増えている背景としては、@食肉など他の食品価格が高止まりする中での相対的な割安感Aコンビニエンスストアやドラッグストアでの取り扱いの増加――などがあり、卵とコレステロールに関する正しい知識の普及や、良質なたんぱく質を多く摂取して炭水化物を控える「低糖質食」のトレンドなども、卵の全体的な消費増に寄与しています。
 加工向け需要も好調で、特に大手コンビニでは、卵の使用量が増加傾向にあります。コンビニ店頭で買えるコーヒーの付け合わせも、ドーナツなどからサンドイッチにシフトし、その具材の卵も、従来のようなフィリングだけでなく、厚焼き卵やカットしたゆで卵など、卵黄の彩りの良さを前面に押し出した具材が採用されるようになっています。直近では、気温の上昇とともに、冷やしうどんや、ざるそばには温泉卵、冷麺には半割りのゆで卵などが定番となっており、MからMSサイズの小玉のボイル需要をけん引しています。
 外食需要も全体として堅調に推移しており、大手ファストフードチェーンでは卵を使ったハンバーガーのメニューやプロモーションの頻度が増加し、今年も前年を上回る売れ行きをみせています。大手牛丼チェーンでも、卵を使ったメニューの展開が増え、居酒屋などの飲食店でも、過去最高の訪日外国人数によるインバウンド需要の高まりもあって、年初からの天候の悪さや短い花見期間なども、懸念されたほどには悪影響とならなかったと感じています。
 一方、供給面に目を転じますと、この3〜4年間は安定した相場が続いたため、生産者の方々の設備投資も進み、農水省統計による鶏卵生産量は4年連続で増加し、昨年は初めて260万トン台に乗りました。成鶏用飼料出荷量も、全体として例年より高水準で推移していました。
 そのような増産傾向がある中で、鶏卵流通の現場では、鳥インフルエンザ発生などに伴う欠品リスクや、2013年暮れのような急激な需給ひっ迫に備えるため、加工卵メーカーや鶏卵企業が、ある程度の流通在庫を持つようになっています。昨年の夏以降は、この流通在庫が減るような突発的事態が少なく、特に高い在庫水準で来てしまった中で、生産量の増加分が消費量の増加分を上回っていよいよ吸収できなくなり、ユーザーの買い意欲の抑制が表面化してきたことが、多くの業界関係者の予想を超えた現在の低卵価の要因と考えています。
 ――今後の展望は。

今年の鶏卵産出額5000億円割れも

 佐藤部長 日本種鶏孵卵協会によるえ付け羽数の推移をみると、昨年は前年比2.2%増、今年1〜2月累計も前年同期を5%上回り、特に東日本では10.5%増と大幅に増加しています。
 このままでは、標準取引価格が年前半のうちに成鶏更新・空舎延長事業が発動する163円まで下落する事態が現実味を帯びることや、今年の夏から秋にかけて、生産量がさらに増加することが懸念されます。
 一方、消費面では、鶏肉、豚肉など他の食肉や野菜などの価格が総じて値下がりし、卵の相対的な割安感が減り始めています。さらに長期的に展望すると、今後、国内の物流費などは絶対に下がらないとされる中、貿易の自由化やグローバル化は一層進む情勢で、卵に限らず様々な畜産物やたんぱく源がより自由に輸入されるようになれば、競争環境は一変する可能性があります。
 人口も今年10月には、前年同月の約1億2671万人(総務省統計局確報値)から約33万人(年率0.26%)減少すると見込まれています。昨年のえ付け羽数の増加分2.2%から今年の鶏卵生産量を単純に試算すれば、前年を6万トン上回る約266万トンとなり、これを消費するためには、人口減少率を加味して1人当たり消費量を331個(IEC16年統計)から339個に増やす必要があります。来年の人口はさらに減少するため、放置すれば、需給の天秤は、供給側にますます大きく傾く見通しです。
 このような需給環境下で、仮に今年の年間平均相場が、前年を2割(45円)下回っている現状の180円となれば、鶏卵産出額は4800億円弱と、4年ぶりに5000億円台を割り込み、生産者の方々の経営にも、大きな悪影響が心配される情勢となっています。
 ――対応策は。

需給の天秤を水平に近づける

 佐藤部長 多すぎる供給量を吸収するためには、需要拡大と消費増に向けた、長期的な鶏卵市場の活性化策に積極的に取り組むとともに、需給の天秤を水平に近づけるため、生産計画の見直しも、車の両輪として考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。
 需要増のファクターとして、15年の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」からのコレステロール値摂取目標量(上限値)の撤廃がありますが、これに加えて、低カロリー・高たんぱくの良質かつ手頃なたんぱく源として、より多くの人に手に取ってもらえるよう、卵の魅力をさらに訴えていく必要があります。
 全農たまごとしても、コレステロールと卵に関する正しい知識や卵料理の魅力などが、健康への関心が高い大人から、将来の消費を担う子どもたちまで、多くの人々に伝わるような様々なツールを活用し、長期的な視野を持って、卵の消費拡大に努めていく所存です。
 また少子高齢化の進展に伴い、消費者の胃袋が小さくなっている中、鶏卵もドラッグストアや外食など多くのユーザーの間で小玉需要が高まっています。トマトなども品種改良が進み、大玉から1口サイズまで様々な大きさの商品が販売されるようになっていますが、キロ単価が高い小玉や高付加価値品の生産に一層シフトしていくことも、今後の市場規模を維持・拡大させる方策だと思います。
 魅力ある産業をつくっていかなければ、新たな担い手も入って来ず、再生産のための設備投資もできません。今後の生き残りに向け、生産性を高めるための企業努力は非常に大切ですが、需要を超えた生産拡大は供給過多の環境を作り上げ、自分で自分の首を絞めることになってしまいます。
 鶏卵産業はこれまで、需給失調と低卵価による倒産や廃業、農家戸数の減少と産業規模の縮小を幾度となく繰り返してきました。今年も、このままでは再び産業規模が5000億円を切ってしまう情勢ですが、これからは市場を縮小させるのではなく、皆さんの力で着実に5500億円、さらに6000億円の魅力ある産業にしていきたい。そして今年がその好機になればと考えています。
 ――ありがとうございました。



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