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2018年の養鶏産業の課題 持続可能な産業へ

2018.01.05発行
 鶏卵・鶏肉は飼料効率に優れ、栄養面でも豊富なたんぱく質を中心に、健康に寄与する様々な機能性が明らかになりつつある。これらが消費拡大の追い風となり、相場もここ数年安定している。
 一方、日本の総人口は2008年の約1億2800万人をピークに、2053年には1億人を割り込むと予想されている。人口減は消費減につながるため、国内生産を維持・発展させるためには、業界を挙げて1人当たりの消費量をさらに増やす取り組みを進めなければならない。
 卵については、今年も1日2個≠フ鶏卵消費を目指し、5月末から開催の国際養鶏養豚総合展(名古屋市)へ向かう『たまニコチャリリレー』が予定され、各地でイベントも計画されている。卵の摂取と血中総コレステロール濃度には関連がなく、心臓病などの発症リスクにつながらないことや、卵に豊富なレシチンやルテインなど各種栄養素とその機能への理解がより深まり、拡大するシニア層も含めて卵が一層食べられるようにPRの仕方も工夫していく必要がある。
 鶏肉も、昨年は世界で一番安い≠ニも言われる国産むね肉を使ったメニューの人気が一層高まり、むね肉の年間相場は15年に次ぐ300円超えとなった。むね肉以外の各部位のメニュー開発にも引き続き努めるとともに、良質なたんぱく質やビタミンが多いことや、特にむね肉には抗疲労や生体の老化を遅らせる効果が期待される抗酸化物質のイミダペプチド≠ェ豊富なことなどへの理解を深め、さらなる消費拡大につなげる努力がこれまで以上に重要だ。
 世界中で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の脅威も続いている。韓国では各地の野鳥から高病原性と低病原性のウイルスが分離される中、11月17日以降12月24日現在で、全羅北道の肉用アヒル農場で2件、全羅南道の種アヒル農場で各1件のHPAI(H5N6亜型)が発生。台湾の家きん農場でもHPAI(H5N2亜型)が続発している。
 国内では今シーズンに入ってから、島根県の野鳥7例でHPAIウイルス(H5N6亜型)が分離され、低病原性ウイルスも秋田県、愛媛県の野鳥糞便各1例(H5N3亜型)と、岩手県の野鳥1例(H6N2亜型)から分離されている。幸い12月25日現在、家きん農場での発生報告はないが、今後も警戒を緩めず、AIを農場や鶏舎に侵入させない防疫対策を徹底し続ける必要がある。
 最も真剣に取り組まなければならなくなりつつあるのは、アニマルウェルフェア(AW)についてである。欧米のAWの考え方の根底には、キリスト教プロテスタントの宗教観や文化があり、採卵鶏では脱ケージ≠ヨの動きがある。
 ただ、広大な国土や夏に乾燥する気候風土を持つ欧米とは異なり、日本は国土が狭く、夏は高温多湿で、鶏病が発生しやすい環境にある。
 日本では、(公社)畜産技術協会が畜種別の「AWの考え方に対応した飼養管理指針」を定め、肉用鶏は国際獣疫事務局(OIE)のAWガイドラインを取り入れたものになっている。採卵鶏も、OIEのガイドライン作成作業が大詰めに近づいているが、実用的、経済的かつ衛生的で、生産者も消費者も安心できる畜産物の生産が持続可能≠ネ「日本版の採卵鶏AW」を目指さなければならない。



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