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健康な人のコレステロール摂取制限「推奨しない」 日本動脈硬化学会も賛同

2015.06.05発行
 これまで“コレステロールを多く摂ると(心臓病などの)動脈硬化性疾患発症のリスクとなる”との見解を示してきた医師らの団体である(一社)日本動脈硬化学会は、5月1日に公表した声明で、厚労省『日本人の食事摂取基準』の2015年版からコレステロールの摂取制限が推奨されていないことについて「健常者の脂質摂取に関するこの記載に賛同している」と初めて表明した。
 “コレステロール摂取=心臓病の原因”との図式は、近年の研究で大きく変化しており、米国の2015年版「米国人のための食事ガイドライン」案では「コレステロール摂取量と血清コレステロール値の間に明らかな関連は示されていない。コレステロールは、摂りすぎが心配される栄養素ではない」としてコレステロールの摂取基準を撤廃した。
 厚労省の基準でも、大規模な追跡調査などで「卵の摂取量と虚血性心疾患や脳卒中による死亡率との関連はなく、1日に卵を2個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていない」ことに触れ、コレステロール摂取の目標量(これ以下にすべきという上限の推奨値)の算定については「十分な科学的根拠が得られなかったため控えた」と説明している(本紙既報)。
     ◇
 コレステロールの摂取量と血中濃度に明確なつながりがみられず、血中濃度も“むしろ低いほうが死亡率が高くなる”との研究成果が相次ぐなど「コレステロール論争」に敗れつつある中、同学会は“健康な人の摂取制限は必要ない”と部分的な軌道修正は図ってきているものの、全面的な“白旗”は揚げていない。今回の声明でも「このこと(摂取制限の撤廃)が高LDLコレステロール血症患者にも当てはまるわけではない」として、同学会が決めた“診断基準”でLDLコレステロール値が高い「脂質異常症」に当たる人などは依然として「飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量に注意する必要がある」と主張している。
 同学会の診断基準では以前から、LDL値が140ミリグラム/デシリットル以上の人などを「脂質異常症」と呼んで治療対象としている。ただ、人間ドック学会の検診データを基にした“超健康人”のLDL値(基準範囲)の上限値は、女性は30〜44歳が152、45〜64歳が183、65〜80歳が190、男性は178と高いなど、日本動脈硬化学会の診断基準は「健康な人を患者にしている」との見方があり、LDL値が高めの人にコレステロールを多く含む食品を控えるよう指導する同学会の枠組みは変わっていない。
 脂質栄養の専門家で、『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』などの著書で知られる富山大学の浜崎智仁名誉教授(元日本脂質栄養学会会長)は「LDLコレステロール値が高い人のコレステロール摂取を制限することが正しいとのデータは、どこにも存在しない」と指摘している。



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