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日本もコレステロールの摂取目標量撤廃 4月から新『日本人の食事摂取

2015.03.25発行
 本紙3月5日号既報の通り、米国では「コレステロールは、摂りすぎが心配される栄養素ではない」との諮問委員会の答申をもとに、2015年版の食事ガイドラインからコレステロール摂取量の推奨値が撤廃される見通しとなったが、4月から適用されるわが国の『日本人の食事摂取基準』からも、コレステロールの摂取目標量(上限値)が撤廃されることになっている。
 厚生労働省がまとめた『日本人の食事摂取基準』の「脂質」の項から「食事性コレステロール」について記述した部分を紹介する。

基本的事項と摂取量

 【基本的事項】コレステロールは体内で合成できる脂質であり、12〜13ミリグラム/キログラム体重/日(体重50キログラムの人で600〜650ミリグラム/日)生産されている。摂取されたコレステロールの40〜60%が吸収されるが、個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。このように経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールの3分の1〜7分の1を占めるに過ぎない。
 また、コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取するとコレステロール合成は増加し、末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働く。このためコレステロール摂取量が直接、血中総コレステロール値に反映されるわけではない。
 【摂取状況】平成22年、23年国民健康・栄養調査の結果に基づく、日本人30〜49歳の中央値は、297ミリグラム/日(男性)、263ミリグラム/日(女性)、アメリカ人31〜50歳の中央値は、324ミリグラム/日(男性)、206ミリグラム/日(女性)で、日本人女性の摂取量はアメリカ人女性に比べやや多い。

生活習慣病の発症予防

 【目標量の設定】動脈硬化関連疾患に関しては、卵(鶏卵)はコレステロール含有率が高く、また日常の摂取量も多いため、卵の摂取量と疾患リスクを調べることにより、コレステロール摂取による疾患リスクが推定されている。卵の摂取量と動脈硬化性疾患罹患との関連を調べた2013年のメタ・アナリシスでは、卵の摂取量と冠動脈疾患および脳卒中罹患との関連は認められていない。
 日本人を対象にしたコホート研究のNIPPON DATA80でも、卵の摂取量と虚血性心疾患や脳卒中による死亡率との関連はなく、1日に卵を2個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていない。卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連を調べたJPHC研究でも、卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連は認められていない。また、糖尿病患者においても、卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連は認められておらず、横断的な卵の摂取量と糖尿病有病率との関連も認められていない。
 卵の摂取量でなく、総コレステロール摂取量と各疾患の死亡率との関連を調べた日本人を対象にした観察研究が一つある。ハワイ在住日系中年男性(45〜68歳)を対象とした観察研究では、食事性コレステロール摂取量と虚血性心疾患死亡率との間に有意な正の相関を認め、325ミリグラム/1000キロカロリー以上の群で虚血性心疾患死亡率の増加を認めている。ただし、飽和脂肪酸摂取量で調整されていないため、コレステロール摂取自体が原因ではなく、同時に摂取する飽和脂肪酸摂取量が影響している可能性がある。
 がんとの関連について、NIPPON DATA80で、女性において卵を1日2個以上摂取する群(総対象者の上位1.3%)では、同1個の群に比べ有意ではないが、がん死亡の相対危険が約2倍になっていた。欧米で発表された症例対照研究でも、コレステロール摂取量と卵巣がんや子宮内膜がんに正の関連が認められている。また、アメリカ人を対象とした観察研究で、コレステロール摂取量最大四分位の群(511ミリグラム/日以上)は、コレステロール摂取量最小四分位の群(156ミリグラム/日以下)と比較して、肝硬変または肝がんになるハザード比は2.45で有意に高いことが示されている。
 コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた。
 ただし、コレステロールは動物性たん白質が多く含まれる食品に含まれるため、コレステロール摂取量を制限するとたん白質不足を生じ、特に高齢者において低栄養を生じる可能性があるので注意が必要である。



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