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米国のエッグビル(エンリッチドケージへ転換)成立不透明に 肉牛と養豚の業界団体が反対 UEPは成立の道模索へ

2013.06.25発行
 約5年に1度改正される『農業法』(ファームビル)は、5月14日に米国上院の農業委員会、6月10日に同院本会議で賛成多数で可決され、下院に送付されたが、法案がそのまま成立するかどうかは不明。ただ、米国鶏卵生産者協会(UEP)と米国動物愛護協会(HSUS)が共同で働きかけていた「改良型のエンリッチドケージを2029年までに導入すること」などを柱とした『鶏卵製品検査法』の改正案(H.R.1731法案、エッグビル)を同法に追加することは、上院農業委員会の段階で見送られたため、UEPが2年がかりで取り組んできた「米国の採卵養鶏業のサスティナビリティ(産業持続性の確保)につながる、エンリッチドケージシステムを中心とした全米統一の採卵鶏福祉基準の導入」や、「州ごとに基準の異なるケージ飼養禁止法の成立阻止」などが不透明となり、同団体は深い失望感と、産業崩壊への強い懸念を示している。UEPでは「エッグビルの成立の希望は捨てていない」としているが、成立へどのような道を模索するかは明らかになっていない。

 UEPは一昨年7月、米国最大規模の動物愛護団体で、従来型ケージでの採卵鶏飼養を禁止する州法の制定を各州で働きかけていたHSUSと合意し、2029年までに『従来型ケージ』から、生産性と家畜福祉の確保を両立した改良型の『エンリッチドケージ』への転換を義務付ける連邦法(エッグビル)の制定を米国議会に働きかけてきた。
 連邦法は全米で同じ基準が適用されるため、UEPが懸念していた(1)州ごとに異なる家畜福祉規制が定められることで米国内に鶏卵流通の壁ができ、州をまたいだ鶏卵の販売が不可能になる(2)従来型ケージの使用が各州で順次禁止され、設備投資の負担やコスト競争力の低下に耐え切れず、養鶏企業が次々と廃業に追い込まれる――などのシナリオを回避する方策として期待されていた。
 ただ、両団体の合意を受けて作成した最初のエッグビルは、2012年6月に上院で否決されたため、UEPは、12年9月末が適用期限となっていた、米国の農業所得確保を目的とする2008年農業法に代わる新農業法(ファームビル)に含める形での成立を模索。しかし、米国議会の議論が停滞したため、ファームビルの可決は1年間延長され、今年9月末が新たな期限となっていた。
 これを受けてUEPは今年2月、HSUSと協議し、エッグビルの内容を一部修正して2013年の新農業法に含めるよう、有力議員らに積極的に働きかけていた。
 ところが、強力な政治力を持つ米国農業連合会(AFBF)や、全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)、全米豚肉生産者協会(NPPC)などが、家畜福祉の考え方を取り入れたエッグビルが今後、養鶏だけでなく他の畜種にも広がることを懸念し、成立阻止に向けたロビー活動を展開したため、有望視されていた法案は一転して不成立に追い込まれたもの。
 UEPのニュースレター「ユナイテッド・ボイセズ」では、「エッグビルが4月25日に上院農業委員会に提出された時点では、委員長は同法案を新農業法に加える意向を示していたが、酪農など他の畜産業界からの政治的圧力がかかったため、これを断念した」と報じている。チャド・グレゴリー代表は「他畜種の業界団体には、言葉に表せないほど失望している。法案には、他畜種への適用除外が明確に記述されているにもかかわらず、彼らは単純に、エッグビルが何となく自分たちの業界にも波及してくるのではないか、との被害妄想に駆られ、我々鶏卵業界の生き残りに欠かせない法案の成立阻止に向けて動いてきた」とコメント。
 前代表のジーン・グレゴリー氏も「エッグビルが成立しなかったことで今後、いくつかの養鶏農家が廃業に追い込まれ、いくつかの州で鶏卵が不足し、消費者がより多くの出費を迫られ、鶏卵生産者の生き残り競争がさらに激化することになれば、他畜種の業界団体に責任がある。しかし、UEPと米国の養鶏農家は、米国議会でエッグビルを成立させる希望を今も捨ててはいない。
 現実には、何らかの代替策を模索しなければならないだろうが、UEPと米国の養鶏農家はこの15年間、顧客や社会の期待や懸念に応えるため、科学に基づいた家畜福祉のガイドラインを世界に先駆けて制定し、実際に運用してきた実績がある。そして我々の顧客は、50もの異なる家畜福祉のガイドラインが制定されることも、州間で鶏卵流通の壁が築かれることも望んでいない。
 喫緊の課題は、同一の鶏卵事業者が複数の州で商品を販売することを難しくするとみられる『州ごとに異なる法律』に、どう対処すればいいのかである。養鶏農家は、この問題への恐れを日々強めつつある」などと述べている。



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