鶏卵生産者経営安定対策事業は52億円 令和3年度の養鶏要求予算

需給安定の協力体制整備も

農林水産省は、9月30日に令和3年度予算の概算要求をまとめ、財務省に提出した。このうち、鶏卵生産者経営安定対策事業は、2年度を5000万円上回る52億2400万円で、新たに産地の需給安定に向けた協力体制の整備支援が加わった。

「鶏卵生産者経営安定対策事業」は52億2400万円(前年度51億7400万円)。令和2年度からスタートした第4期事業の2年目で、民間団体が実施主体となり、①鶏卵価格が低落した場合に、経営規模にかかわらず『鶏卵価格差補てん事業』行なう②さらに低落した場合は、鶏舎を長期に空けて需給改善を図る『成鶏更新・空舎延長事業』に取り組む③事業実施主体による鶏卵の需給見通しの作成を支援するとともに、新たに産地の需給安定に向けた協力体制の整備を支援する『需給見通しの作成等』――の3事業からなる。

『鶏卵価格差補てん事業』は、鶏卵の毎月の標準取引価格が補てん基準価格を下回った場合、経営規模にかかわらず、その差額の9割を補てんするもの(補てん基準価格と安定基準価格の差額が上限)。事業の財源となる積立金は、国が1、生産者が7の割合。価格差補てん事業への参加は、現行通り『成鶏更新・空舎延長事業』への協力金拠出が要件となる。

『成鶏更新・空舎延長事業』は、鶏卵の日ごとの標準取引価格が安定基準価格を下回った場合、その下回る日の30日前から上回る日の前日までに成鶏を出荷し、その後60日以上鶏舎を空ける取り組みに奨励金を交付するもの。

奨励金は、空舎期間が60日以上~90日未満は1羽210円(10万羽未満層は1羽310円)。90日以上~120日未満は1羽420円(10万羽未満層は同620円)。また、成鶏処理場に対する奨励金は1羽47円。財源となる協力金は国が3、生産者が1の割合。

『需給見通し作成等』は、需要に応じた鶏卵の生産・供給を推進するため、事業実施主体に定額補助し、生産者・卸売業者・小売業者・加工業者による需給見通しを年2回作成するほか、新たに産地の需給安定に向けた協力体制の整備(生産者間の連携による海外市場向け物流の集約化・拠点化や、パッキング機・ラベル機などの導入)に定額・2分の1以内を補助する。

「食肉等の流通合理化に向けた施設整備への支援」は〝強い農業・担い手づくり総合支援交付金〟244億9700万円(前年度200億2000万円)の内数。安全で高品質な国産食肉などの供給体制を構築するため、流通・処理コストの低減や、製品の高付加価値化などに必要な食肉等流通処理施設(産地食肉センター、食鳥・鶏卵処理施設、家畜市場)の整備を支援するもの。補助率は3分の1以内(衛生管理施設、ハラール対応施設、動物福祉対応施設等は2分の1以内)で、上限額は20億円。

飼料流通合理化輸出事業を拡充

「畜産生産力・生産体制強化対策事業」は12億1800万円(前年度9億円)。肉用牛・乳用牛・豚・鶏の改良や、飼料作物の優良品種の利用を推進するとともに、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産、和牛の遺伝子型検査、国産飼料の一層の増産と利用の拡大のための体制整備により、畜産物の生産力と生産体制の強化を図る。鶏では始原生殖細胞(PGCs)保存等技術の活用により改良の加速化等を支援する。

「畜産GAP拡大推進加速化」は1億5400万円(前年度1億3000万円)。畜産の競争力強化を図る観点から、畜産GAPの普及・推進体制の強化を図るための指導員等の育成や、GAP認証取得等の取り組みを支援する。

「飼料穀物備蓄対策事業」は22億800万円(前年度17億5000万円)。配合飼料製造事業者等が、不測の事態に備えて策定している事業継続計画(BCP)に基づいて実施する飼料穀物の備蓄、国内の災害時における配合飼料の緊急運搬、関係者の連携体制の強化等の取り組みを支援することにより、配合飼料の安定供給を確保し、畜産経営の安定を図る。民間団体を通じて補助する。

「飼料流通合理化事業」は新規で3億円。運送業界が人材不足の中、飼料輸送については高所作業を伴う場合がある飼料タンクへの積み替え等、特有の業務もあり、今後の飼料流通が不安定となる恐れがあることから、民間団体等の飼料輸送の効率化・標準化に資する実証等の取り組みに対し支援を行ない、飼料供給の安定を図る。

「水田活用の直接支払交付金」は3050億円(前年度と同額)。水田を活用した飼料用米、麦、大豆などの戦略作物等を生産する農業者を支援する。飼料用米生産の助成は、収量に応じ10アール当たり5.5万円~10.5万円。水田フル活用ビジョンに基づく産地交付金では飼料用米の3年以上契約に10アール当たり1.2万円など。

「戦略的マーケティング活動の強化」は55億6200万円(前年度27億6000万円)。2030年までに農林水産物・食品の輸出額5兆円の目標実現に向けて、戦略的な輸出拡大へのサポートや、輸出に取り組む優良事業者の表彰、日本食・食文化の魅力発信による日本産品の海外での需要拡大を支援する。

「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設の整備」は79億1200万円(前年度14億7200万円)。農林水産物・食品の輸出拡大を図るため、食品製造事業者等の施設の新設と改修、機器の整備を支援する。

「畜産環境総合整備事業」は農山漁村地域整備交付金1131億3000万円(前年度942億7500万円)の内数。家畜排せつ物処理施設の機能強化などを支援し、増頭のボトルネックとなる畜産環境問題の解決を推進することで、畜産の生産拡大を後押しする。

「スマート農業総合推進対策事業」は55億円(前年度15億円)。スマート農業の社会的実装を加速するため、先端技術の現場への導入・実証や、地域での戦略づくり、科学的データに基づく土づくり、教育の推進、農業データ連携基盤(WAGRI)の活用促進等の環境整備の取り組みを支援する。