鳥インフル対策の徹底を確認 越境性動物疾病防疫対策強化推進会議

あいさつする野上浩太郎農相

農林水産省消費・安全局動物衛生課は10月2日、各都道府県の家畜衛生担当者らとオンライン形式で令和2年度「越境性動物疾病防疫対策強化推進会議」を開いた。

冒頭あいさつした野上浩太郎農林水産大臣は「この会議は豚熱に加え近隣諸国で発生しているアフリカ豚熱、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの越境性動物疾病について、最新の情報と知見を皆様と共有することで全国的に防疫体制を強化し、発生予防と、万が一発生した場合のまん延防止に万全を期すことが最大の目的である。

豚熱については、これまでワクチン接種、飼養衛生管理の徹底に関係者が一丸となって取り組んできた。このような中で先週、群馬県のワクチン接種農場で豚熱の発生が確認され、約半年ぶりの国内での発生となったことは大変遺憾に思う。

アフリカ豚熱は現在、アジア13か国・地域まで感染が拡大しており、感染力が強く、有効なワクチンもないことから、一度国内に侵入してしまうと、畜産農家への影響と被害は計り知れない。さらにこれから渡り鳥のシーズンを迎え、鳥インフルエンザの国内への伝播リスクも高くなる。

7月に改正家畜伝染病予防法が施行され、農場での新たな飼養衛生管理基準の順守のため、都道府県では飼養衛生管理指導等計画を新たに作成していただく。疾病の発生予防のためには、農場での飼養衛生管理はきわめて重要である。関係者の皆様には引き続き最前線で指導に取り組んでいただきたい」と述べた。

会議では農水省の担当者が、①海外における越境性動物疾病の発生状況②家畜伝染病予防法改正と水際対策の強化③今年度の防疫演習の結果④高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)⑤豚熱とアフリカ豚熱⑥口蹄疫⑦動物における新型コロナウイルス感染症――などを報告。

海外での鳥インフルエンザ(AI)の発生状況については「世界各国で発生している。台湾ではほぼ毎月、主に西側地域でHPAIが発生している。ウイルスは2019年夏ごろまではH5N2亜型だが、それ以降はH5N5亜型の発生が増えている。欧州では東ヨーロッパを中心にHPAIが発生している。

韓国では今年、北部とソウル特別市で、野鳥から低病原性鳥インフルエンザ(LPAI)ウイルスが分離され、2018年10月以降の野鳥からのウイルス分離事例は102件となっている。

2019年8月から2020年7月までにアジア、ヨーロッパを合わせて536件のHPAIが発生した」と説明した。

水際対策の強化では、中国やベトナムなどから日本に持ち込まれた肉製品89件からアフリカ豚熱ウイルスの遺伝子が検出されたため、今年7月施行の改正家畜伝染病予防法で、①質問・検査権限(家畜防疫官が入国者に携帯品中の畜産物の有無を質問・検査できる)②廃棄権限(家畜防疫官が発見された違反畜産物を廃棄できる)③厳罰化(輸入検査に関する罰則を強化)――を措置したことや、探知犬の増頭(今年度末に140頭体制)と家畜防疫員の増員(同491人体制)、日本に肉製品を持ち込めないことを現地のSNSや海外メディアで情報発信していることなどを報告した。

都道府県の防疫演習の実施状況については、令和元年度の実績が635件(HPAI467件、口蹄疫230件、豚熱358件、アフリカ豚熱182件、複数回答)、令和2年度の計画が451件(HPAI330件、口蹄疫191件、豚熱294件、アフリカ豚熱202件、複数回答)であるとし、「今後ハイリスクになるAIの防疫演習については、新型コロナウイルスの影響もあるため、関係者の理解を得られる範囲内で実施してほしい」と要請した。

国内のAIの防疫対策については、今年7月1日に「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」を全部変更したことや、9月23日付で各都道府県に出した消費・安全局長通知「令和2年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の徹底について」の内容を紹介。

通知によると、わが国では平成30年1月以降、HPAIの発生は確認されていないが、周辺国での発生状況を考慮すれば引き続き厳重な警戒が必要なことから、渡り鳥の本格的な飛来シーズンを迎えるにあたり、飼養衛生管理基準の順守により発生予防対策を徹底することと、次の事項に留意して、万一の場合に備えたまん延防止策に万全を期すよう求めている。

AI対策の局長通知

1、まん延防止対策

①早期発見・早期通報

家きんの飼養者、獣医師等に対して、家畜伝染病予防法の規定に基づき農林水産大臣が指定する症状の内容について周知するとともに、当該症状を呈している家きんを発見したときは、遅滞なく当該家きん、またはその死体の所在地を管轄する都道府県にその旨を届け出るよう指導すること。本病は家きんの死亡羽数の増加が比較的緩やかな場合もあることを踏まえ、家きんの飼養者に対し、平時から飼養する家きんの健康状態について注意深く観察するとともに、死亡羽数の増加はもちろんのこと、産卵率の低下、さらには元気消失といった異状がみられた場合の早期通報を徹底するように周知すること。

②的確な初動対応の徹底と連携体制の確認

都道府県は、家きんの飼養者、獣医師等から前記①の届出を受けた場合には、速やかに防疫指針に基づく対応を的確に実施できるよう体制を改めて確認すること。万一の発生に備え、防疫指針に基づき近隣都道府県、市町村、関係機関、関係団体との連携体制を確認すること。発生時の精神的・身体的ストレスへのケアのための対応や、食鳥処理場での本病発生時の対応等について、県内の総務部局、精神保健主管部局、公衆衛生部局、環境部局等との連携体制を確認すること。

③本病の発生に対する必要な人員、防疫資材と埋却地等の確保

万一、本病が発生した場合に備え、速やかに防疫措置が講じられるように防疫指針に基づき、必要な人員を確保するとともに、防疫資材、検査試薬、特殊自動車等を必要量確保、またはそれらの緊急時の円滑な入手について調達先を確認し、調整(緊急時の連絡体制の確認を含む)すること。本病発生時の防疫措置に伴い必要となる埋却地と焼却施設等の確保状況ついて確認すること。事前確保が十分でない場合は防疫指針に基づき調整すること。

2、その他(野鳥のサーベイランス)

環境省から野鳥のサーベイランスの協力依頼があったことを踏まえ、引き続き防疫指針に基づき、自然環境部局と相互に連絡、適切に分担して野鳥のサーベイランス検査を実施するとともに、野鳥等で本病ウイルスが確認された場合には、必要に応じて、周辺農場に立ち入り検査を実施するほか、注意喚起と家きんの健康観察の徹底を指導すること。

動物における新型コロナウイルス感染症については、①ヒトでのパンデミックはヒト―ヒト感染によるもので、動物の感染がヒトでの感染拡大を引き起こしているわけではない②世界各国で犬、猫、トラ、ライオン、ミンクで、感染者との濃厚接触が原因とみられる陽性事例が報告されている(わが国では犬の陽性事例の報告がある)が、愛玩動物がヒトでの感染拡大を引き起こしているわけではない③牛・豚・家きんのような代表的な家畜での感染事例は報告されていない。感染実験により、家きん、豚は感受性を示さないことが示唆されている④感染者や感染が疑われる人は愛玩動物やその他の動物との濃厚接触を避けることが推奨される――などと報告した。