鳥インフル対策の徹底を 各地で渡り鳥飛来のニュース

今年9月に北海道からマガモやヒシクイ、オオハクチョウなどの飛来が報告され、本格的な渡り鳥のシーズンに入った。近隣諸国では高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生も続き、特に台湾では10月に入ってもH5N2亜型の発生が報告されており、わが国でもHPAI対策の徹底が求められている。

カモ類などのほかに、多くの白鳥が飛来する新潟県の瓢湖では、10月4日に8羽の白鳥の飛来が確認され、12日には295羽にまで増加。15日からはエサやりも始まった。14日には滋賀県の琵琶湖にもコハクチョウが初飛来し、16日には秋田市の雄物川下流域で白鳥が10羽確認されたことが地元紙のニュースにもなった。

全世界に生息するナベヅルの8~9割のほか、マナヅル、カナダヅル、クロヅル、ナベコロヅルなど約1万5000羽が越冬する鹿児島県出水市では、ナベヅルの初飛来が18日に確認された。

昨シーズンは、平成30年1月に香川県のブロイラー農場でHPAIの発生が確認されたが、幸い1か所の発生にとどまった。

ただ、この香川株のH5N6ウイルスと、島根県のコブハクチョウや、東京都のオオタカ、兵庫県のカラスなどの野鳥から分離されたH5N6ウイルスを分析した農研機構動物衛生研究部門の西藤岳彦越境性感染症研究領域長は、農水省の会議や秋季全国鶏病技術研修会などで「遺伝的に近縁ではあるが、直接の由来となるウイルスと異なっていることが示唆され、国内には少なくとも由来の異なる2種類のウイルスが存在することが判明した」と発表している。

また、国外の既知ウイルスの遺伝子との比較から、香川株や、野鳥に発生した島根株は、前年に流行したヨーロッパのAIウイルスと、ユーラシア大陸で循環しているAIウイルスの遺伝子再集合によるウイルスの可能性が高いと指摘。2017、18年の2シーズンにわたって、ヨーロッパで同じ亜型・系統(H5N8)のHPAIが発生したことや、夏場に野鳥での発生事例が報告されていることは異例で、「今シーズンも十分な警戒が必要」だと強調している。

近年、農場で発生したHPAIが周辺に拡大していないのは、農場や鶏舎周辺での飼養衛生管理レベルが高くなっていることや、発生時の迅速な防疫対応などが要因と思われるが、改めて防疫衛生レベルの再確認が必要だ。

農場内へのウイルスの侵入を防止するには、①人・物・車両によるウイルスの持ち込み防止(衛生管理区域や鶏舎に出入りする際の洗浄・消毒の徹底。衛生管理区域専用の衣服や靴、鶏舎ごとの専用靴の使用。これら措置の記録など)②野生動物の侵入防止対策(壁や金網、防鳥ネットなどの破損か所の修繕。集卵・除糞ベルト開口部や排水溝の隙間対策。鶏舎周辺の整理・整頓。樹木の剪定などによる野生動物が生息しにくい環境づくり。これら措置の定期点検など)――を徹底する必要がある。

また、農場周辺に水辺がある場合は「季節を限って水を抜く」「野鳥を寄せ付けないような忌避テープを張る」などの取り組みも効果的と言われている。さらに、AIの発生が疑わしい場合を含めた「早期発見・早期通報」も重要になる。