高病原性AI 香川県の3農場(採卵鶏2、肉用種鶏1)で発生

香港とシンガポール向け輸出は香川県除き再開

農林水産省と香川県は11月5日に香川県三豊市の採卵鶏農場(約33万羽)、8日に東かがわ市の採卵鶏農場(約4.8万羽)、10日に1例目の農場から半径10km圏内にある肉用種鶏農場(約1.1万羽)で高病原性鳥インフルエンザの発生を確認した。国内での発生は、2018(平成30)年1月に香川県さぬき市の肉用鶏農場での事例以来、2年10か月ぶり。

香川県によると、11月4日に三豊市の当該農場の管理者から西部家畜保健衛生所西讃支所に「死亡羽数の増加」との連絡があり、同所が簡易検査を実施したところ、午後6時に13羽中11羽(死亡鶏11羽中11羽、生存鶏2羽中0羽)の陽性を確認。さらに東部家畜保健衛生所での遺伝子(PCR)検査で判明した結果を農水省に送付して確認し、H5亜型の疑似患畜と確定。最終的には農研機構動物衛生研究部門で6日にH5N8亜型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の患畜が確定した。

香川県は5日、午前8時30分から浜田恵造知事を本部長とする「香川県鳥インフルエンザ対策本部会議」を開催し、必要な防疫措置の速やかな実施や、農場から半径3km以内の区域での鶏や卵の移動制限区域(同区域には肉用鶏を含む26戸、約189万羽)、半径3~10km以内で鶏や卵の搬出制限区域(同89戸、約273万羽)の設定、移動制限区域内の農場の発生状況確認検査の実施、感染拡大防止のための消毒ポイントの設置などを決め、午前11時頃から鶏の殺処分作業を開始。作業者確保のため、自衛隊の災害派遣も要請し、県職員と自衛隊員の計200人が24時間態勢で作業を行ない、8日中に終了。処分鶏・汚染物の埋却は、7日から幅約8m、奥行き約72m、深さ約4mの埋却溝を2列堀って始めており、埋却・清掃・消毒などの防疫措置の完了は11月中旬頃と見込んでいる。

三豊市の発生農場から約50km離れた、2例目となる東かがわ市の採卵鶏農場(約4.88万羽)では、7日に農場管理者から東部家畜保健衛生所に「死亡羽数の増加」の連絡が入り、同所が簡易検査を実施したところ、13羽中12羽(死亡鶏11羽中11羽、生存鶏2羽中1羽)の陽性を確認。同日に農研機構動物衛生研究部門に検体を送り遺伝子検査を実施した結果、8日にH5亜型の疑似患畜、9日にH5N8亜型の患畜が確定した。県は8日午前10時30分から第2回香川県鳥インフルエンザ対策本部会議を開き、速やかな殺処分と埋却、移動制限区域(同3戸、約16万羽)と搬出制限区域(同10戸、約51万羽)を設定し、9日早朝に殺処分を完了。

3例目となる三豊市の肉用種鶏農場(約1.1万羽)は、1例目の発生を受け、6~8日にかけて遺伝子検査・抗体検査で陰性を確認していたが、10日に農場管理者から西部家畜保健衛生所に「死亡羽数の増加」の連絡があり、簡易検査で13羽中9羽(死亡鶏11羽中9羽、生存鶏2羽中0羽)の陽性を確認。遺伝子検査の結果を農水省に送付してH5亜型の疑似患畜が確認された。

政府も、防疫措置に万全を期すため、5日午前7時50分から野上浩太郎農相を本部長とする「農林水産省鳥インフルエンザ防疫対策本部」、8時20分から官邸で「鳥インフルエンザ関係閣僚会議」を開催。関係閣僚会議に先立ち菅義偉首相は①家きん業者に対し、厳重な警戒を要請するとともに、予防措置について適切な指導・支援を行なうこと②現場の情報をしっかり収集すること③鳥インフルエンザと考えられる家きんが確認されたことから、農水省をはじめ関係各省が緊密に連携し、徹底した防疫措置を迅速に進めること④国民に対して正確な情報を迅速に伝えること――を指示した。

農水省によると、香川県でのHPAI発生により、5日から日本全国の鶏卵、鶏肉の輸出証明書の交付が一時停止となったが、輸出相手国と輸出再開に向けた協議を開始し、香港向けは地域主義を適用し6日付、シンガポール向けは9日付で香川県以外の輸出手続きを再開。カンボジア向けも輸出検疫証明書の交付を継続。マカオ、ベトナム、台湾、米国などへの生鮮品の輸出は10日現在、停止しているが、早期の再開に向けた協議を行なっている。

農水省は防疫指針に基づく防疫対応方針を示すとともに、5日には葉梨康弘農水副大臣を香川県に派遣し、香川県と緊密な連携を図った。さらに1例目については疫学調査チームも派遣し、6日には家畜衛生部会家きん疾病小委員会を開催した。それによると、侵入経路などの詳しい関連は調査中だが、農場の周囲には複数の「ため池」があることや、例年11月半ばに実施している農場敷地内への消石灰散布は、通報時には未実施だったことなど飼養衛生管理基準の実施状況を指摘した。

農水省は5日と8日に消費・安全局長名で全都道府県に対し「香川県における高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜の確認に伴う監視体制の強化」を通知し、防疫対策の徹底、早期発見・早期通報の徹底を改めて要請したほか、香川県を含む近隣12府県の養鶏場で緊急消毒の実施を求めた。

北海道の野鳥糞からH5N8ウイルス

環境省では発生農場周辺の半径10kmを「野鳥監視重点区域」に指定。今後、香川県と調整し、野鳥での感染状況の把握などを目的に緊急調査を実施する予定。このほか、10月24日に北海道紋別市で採取した野鳥糞便から今シーズン初のHPAIウイルスが検出されたことなどを報告した。