防疫指針の見直しを答申 飼養衛生管理基準の改正も 家畜衛生部会

農林水産省は6月16日に持ち回りで食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会を開き、特定家畜伝染病防疫指針の見直しと、飼養衛生管理基準の改正について了承し、江藤拓農林水産大臣に答申した。

特定家畜伝染病防疫指針の見直しと、飼養衛生管理基準の改正は、日本で26年ぶりに発生した豚熱(CSF)とアジア地域で感染が拡大しているアフリカ豚熱(ASF)を踏まえて、今年4月3日に公布された改正「家畜伝染病予防法」(略称・改正家伝法)に基づいて実施するもの。

このうち「高病原性鳥インフルエンザおよび低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」の変更については、家きん疾病小委員会で、改正家伝法で新たに追加された①関連事業者の責務を明確化②都道府県知事の家畜の所有者に対する飼養衛生管理基準の順守についての緊急的な勧告・命令③野生動物で悪性伝染疾病の感染が確認された場合の発見された場所などの消毒、通行制限、周辺農場などに対する移動制限――規定の具体的な運用方法などを中心に確認。都道府県知事からの「と殺した死体の移動時に『当該死体を十分に消毒すること』とされているが、消毒液による重量増加、焼却施設への負荷等が生じるため困難である。輸送容器外装等を十分消毒することとしていただきたい」との指摘を踏まえてより実践的な防疫指針に修正した。

同小委員会は「平時と発生に備えた体制の構築・強化における行政機関、関連団体と関連事業者の取り組み、家畜と野生動物における発生時の防疫体制の強化が図られる変更内容となっており、高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザの発生予防・まん延防止が確保できるものと考える」とコメントしている。

防疫指針の全体は、章と節立ての構成に変更したほか、平時からの取り組みと、発生に備えた事前の体制の構築・強化について明記した。

発生農場などの防疫措置では、①発生農場の外縁部と家きん舎周囲への消石灰の散布、粘着シートの設置や殺鼠剤の散布などにより、農場外への病原体の拡散を防止する②発生農場の周囲1キロメートル以内の区域に位置する農場の外縁部と家きん舎周囲に消石灰を散布する③と殺前・と殺時に発症している家きんの場所や羽数を記録し、病変部位を鮮明に撮影する④家畜防疫員の指導のもと、迅速にと殺を完了させる⑤死体の処理の移動時には、死体を入れた容器の外装などを十分に消毒する⑥汚染物品は埋却などの処理を行なうまでの間、野生動物が接触しないように隔離・保管する⑦と殺の終了後、家きん舎を清掃・消毒する際に殺鼠剤を散布する――ことなどを明記。
このほか、基本方針、異常家きん等の発見と検査の実施、家きん集合施設の開催などの制限、消毒ポイントの設置、ウイルスの浸潤状況の確認、家きんの再導入などの項目で変更点があり、変更された防疫指針は7月に公表される見込み。

飼養衛生管理基準の改正では、取り組みの目的ごとに「Ⅰ 家畜防疫に関する基本的事項」「Ⅱ 衛生管理区域への病原体の侵入防止」「Ⅲ 衛生管理区域内における病原体による汚染拡大防止」「Ⅳ 衛生管理区域外への病原体の拡散防止」に体系化し、防除対象とする感染源の種類(人、物品、野生動物、飼養環境、家畜)ごとに項目を分類。現場で徹底する取り組みなどを規定したほか、今回のCSF対応の中で他畜種にも共通する内容を反映した。

「鶏その他家きん」の飼養衛生管理基準の主な改正点は、①家きんの所有者の責務を新設②飼養衛生管理マニュアルの作成と、従業員と関係者への周知徹底を新設③衛生管理区域の考え方を明確化④愛玩動物の飼養禁止を新設⑤更衣と車両の乗降の際の交差汚染防止措置を追加⑥家きん舎以外の飼料保管庫、堆肥舎などへの野鳥などの侵入防止措置を追加⑦衛生管理区域内の整理整頓と消毒を新設⑧衛生管理区域から搬出する物品の消毒などを新設――で、施行日は今年10月1日(②は令和4年2月施行)。