米国の養鶏・穀物協会も新型コロナ対応で情報発信

新型コロナウイルス対策として、外出制限などの措置が多くの州で実施されている米国でも、人々が買いだめに走ったり、銃器が売れたりするなど混乱する様子が報じられているが、同国の飼料畜産団体は政府などと協力し、変わらず生産活動を続けていく旨をホームページなどで情報発信している。特に、食品の生産流通業者は衛生的な環境で生産活動に従事し、政府からもできるだけ通常通り活動するよう指示されていることから、鶏卵や鶏肉の安定供給は確保されると紹介している。

UEPは消費者向けメッセージ公表

米国鶏卵生産者協会(UEP)は3月20日、会員農家のメンバーからのメッセージを公表した。概要は以下の通り。

非常に不透明な状況ですが、我々は皆様のためにいることを知ってほしいと思います。私たちはお客様を思い、安全で栄養豊富な卵を確実に入手できるよう約束します。

知っていただきたいのは、食品関連の従事者は不可欠(essential)と考えられ、外出禁止令が出ても就労を許可されることです。しかし、我々は従業員の健康と安全も真剣に考えていることを知っていただきたい。

なぜなら、農場はバイオセキュリティーが確保された場所にあり、既に包括的な衛生・消毒の取り組みの中で、頻繁な手洗い・殺菌も実践してきているからです。農場では、マスクその他の防護服が必要で、来場者も制限されています。現在も我々の従業員やその家族は健康を保ち、さらに新しい基準も導入して、衛生的で安全な環境でそれらを実践しています。

我々の鶏の世話も、引き続き最優先事項です。栄養豊富な餌と新鮮な水が常に得られるよう、我々の訓練された担当者と専門の獣医師が農場に常駐し、鶏の世話を続けています。

我々は一部の米国人が、スーパーで空の棚や卵売り場に直面したことや、皆さんの心配を理解しています。UEPの農家メンバーは、引き続き安定的に卵を供給することをお約束します。それは我々食品生産者の責任であり、このような時に社会に貢献する道であると考えています。

全国の医療・救急関係者、米国と世界でCOVID-19の影響を受けている方々へ祈りを捧げると同時に、米国の鶏卵生産業界を代表して、皆さんとその家族、大切な人々が、この困難な時に安全かつ健康であることを願っています。

NCCも特設ージで情報収集

米国の食鳥協会に当たるナショナル・チキン・カウンシル(NCC)も、特設ページを設け、食鳥業界に関連する情報が載った米国疾病予防管理センター(CDC)や米国食品医薬品局(FDA)、大手マスメディアの記事などへのリンクを会員向けに集めているほか、米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)などの行政当局は通常通り運営していること、鶏肉生産は通常通り続いており、むしろ十分な(約10億ポンドの)余剰在庫があること、生産者だけでなく流通業者も業務を継続しているため、鶏肉が不足する懸念はないことを発信している。

食品からの感染の可能性についても、①CDCとUSDA、FDAがいずれも、そのような根拠はないと言っていること②もともと生鮮食品を適切な温度で保存したり、手を洗ったりしてから調理することは大切なこと③CDCは量販店や工場、飲食店などに対し、定期的な作業場やカウンター、ドアノブの清掃消毒以上の対応は推奨していないこと――などを紹介。

CDCは、①症状がある人や医療関係者、患者と接する人以外の、呼吸器病の予防目的でのマスクの着用を推奨していない②「症状がある人の近くにいかない」「目や鼻、口を手で触らない」「症状が出たら家にいる(従業員は37.8度C以上の熱が出たら自宅待機)」「咳やくしゃみはティッシュで覆って、そのティッシュはすぐ捨てる」「手は頻繁に、特にトイレの後、食事の前、咳やくしゃみと鼻水をかんだ後は石けんで20秒以上洗う」「手が洗えなければ60%以上のアルコールで消毒する」ことを推奨していることも紹介している。

アメリカ穀物協は世界の顧客向けに発信 

アメリカ穀物協会(浜本哲郎日本代表)の米国本部は3月23日、ライアン・ルグラン理事長兼CEOから世界の穀物ユーザーへのメッセージを発表した。同協会による日本語訳は次の通り。

世界中のお客様へ。米国の穀物生産・流通・輸出施設などへのコロナウイルスの影響について、現状をお知らせいたします。これにより皆様のご心配や関心事項についてお答えできるとともに、現時点での厳しい状況のもとで、これまでと同様、私たち米国の業界が世界各国のお客様の穀物の需要を満たし続けるための、できる限りのすべての努力について理解を得ることができれば幸いです。

▽現時点での状況

米国の穀物輸出施設については、公共と民間を問わずに、おおむね正常に操業を続けています。協会は輸送を担う事業体やミシシッピ川、イリノイ川、オハイオ川で操業する民間企業、ガルフとPNWの輸出施設を含む、全国レベルと州レベルの農業関連団体と広く連絡を取り合っています。その結果、すべての施設や団体が厳格な消毒手順や社会的距離などの予防的措置をとることで、コロナウイルスのまん延による状況の変化を引き起こさないようにしつつ、通常通りの操業・営業をしているとの連絡を受けています。

コロナウイルスに関連する直接の懸念事項は発生していませんが、コンテナの不足による間接的な影響がみられています。協会では、これらの状況はウイルスやウイルス対応の影響ではなく市場の課題であると理解していますが、引き続き注視していきます。

市場への圧力を受けて、この何週間の間に穀物とエタノールの価格が下落しています。これは、多くの皆様にとって今後の供給を確保するための良い機会になると信じています。

▽農業の重要性

コロナウイルスに対する米国での対応は、政府、州、地域の役所によって行なわれています。

国レベルでは、国土安全保障省(DHS)とUSDAが、米国の農業や食品に関するインフラと従業者を「基幹」(essential)である、すなわち、この厳しい状況下でもできる限り通常通りの操業を続けるようにと指示しています。この指示はとても重要で、従業者は「自宅待機」などの外出禁止令が発令されても出勤可能(場合によっては出勤要請)となることを意味しています。

多くの州でも、農業と食品関連のインフラを基幹であると指定しています。米国農務省からの、操業継続に関する関係者宛ての書簡は、以下のリンクでご覧になれます(https://www.ams.usda.gov/content/statement-industry)。

米国政府と関連業界は、円滑な穀物流通が国内のみならず、皆様のような海外市場でも重要であることを認識しています。また、米国の農業と輸出に関連する、地域、州、全国レベルでの関係者が24時間体制でそれに対応しています。この不安定な状況下で、米国の関連業界では、米国内はもちろん、主に国外での操業に携わる関係者が継続性のある安定した業務の遂行を推進しています。

▽輸出施設の操業に関して

多くの輸出施設は、所によっては2、3人という限られた人員で操業されています。米国の穀物輸出業界は、近年多くのプロセスのオートメーション化を行ない、効率化と低コスト化を図ってきました。今の状況への対応という点でも、このオートメーション化が大きく役に立っています。

米国内の農場から輸出港までの農業と輸出インフラは、元来比較的距離が離れて位置しているため、現状で必要とされている社会的距離を保つことも比較的容易に行なえます。

米国の関連業界では、穀物の輸出システムのすべてのステップにおいて、緊急計画の作成を推し進め、アメリカ穀物協会は、米国内のパートナーとともに、その計画へのインプットを通じて積極的に協力しています。

▽今後もともに

状況はめまぐるしく変化し、非常に大きなプレッシャーと不安を世界に与えています。このアップデートを通じて、最善の情報提供をすることができたことを願っています。また、状況の変化に応じて、これからも情報提供を続けてまいります。

ご質問や協会の世界中のスタッフへの、あるいは直接ワシントンの本部へのインプットがございましたら、いつでもお寄せください。

皆様方の事業や、地域への製品供給を円滑にするための米国の農業生産者、輸出事業者やスタッフへの信頼に感謝いたします。私ども一人一人が現状の影響と、皆様方とともに、この危機が去るまでスムーズに協力関係を続ける重要性を認識しておりますので、引き続きのご協力をよろしくお願い申し上げます。