東京オリンピックと交通対策(上)

組織委や都は大会期間中の混雑緩和へ各種の規制検討

今夏の東京オリンピックの来場者数は約780万人、パラリンピックは約230万人とされ、インバウンド需要が期待される一方、物流業界では首都圏の混雑や通行止めなどによる業務への支障が心配されている。大会組織委員会や都が進めている交通対策などについて、1月末時点の情報をまとめた(掲載内容はいずれも今後変更の可能性あり)。

円滑な大会運営を目指す大会組織委員会や東京都は、選手らを乗せたバスを渋滞に巻き込まないための交通規制や対策を示し始めている。直近では大手ネット通販会社に大会期間中のセール自粛を求め、今後は企業や家庭にも車の使用抑制、日持ちする日用品の事前ストックなどを呼びかけるとしていることなどが報じられた。

一方、物流関係者からは「半年を切ったがまだ具体的な情報が少ない」「確定していないことが多いので、対応も不明確」「渋滞などで相当な影響を受けるとみている」といった声が聞かれていることから、今号では大会の概要を紹介し、次号以降で現時点で示されている各種の規制を紹介する。

重点期間は7月20~8月10日の平日など

東京オリンピックは7月24日開会式、8月9日閉会式の17日間。パラリンピックは8月25日開会式、9月6日閉会式の13日間。大会の設備機器は、開催の2か月ほど前から徐々に搬入される見通しだが、サッカーの予選は7月22日に始まり、選手や観光客、開閉会式に出席する各国要人らの入出国が、大会前後に集中するとみられている。

オリンピックの予定競技時間をみると、屋外競技では日中の暑熱を避け、早朝や、夜遅くまで実施される種目が多いが、屋内競技は終日開かれる会場が多い。オリンピック選手らの帰国ピークは8月10日。パラリンピックの閉会式翌日の9月7日から約1週間は、大会使用機器の返送が集中するため、港湾や空港などに負担がかかるとみられている。

これらの見通しから都や組織委などは、7月20日から8月10日までの平日と、8月25日から9月4日までの平日が渋滞などが予想される「交通対策が特に必要な期間」に指定。このため政府も今年に限って国民の祝日の「海の日」は7月23日、「体育の日」は「スポーツの日」に改めて7月24日、「山の日」は8月10日に移動し、期間中の休祝日を3日増やし渋滞緩和に努めている。

競技施設は都心と湾岸部に集中

競技会場は全42か所。このほかオリンピック選手約1万1000人、パラリンピック選手約4400人が宿泊する選手村(中央区晴海)、各地の練習会場、メディア関係者(オリンピック約2万5000人、パラリンピック約9500人)が集まるIBC(国際放送センター)とMPC(メインプレスセンター、いずれも中央区有明の東京ビッグサイト)などの詳細は組織委の公式HP(https://tokyo2020.org/jp/games/venue/olympic/)で確認できる。

都内の会場は、64年の東京五輪会場と重なることから名付けられた『ヘリテッジゾーン』と、新たにできた湾岸部の『東京ベイゾーン』に大別されている。

『ヘリテッジゾーン』はオリンピックスタジアム(新国立競技場、新宿区霞ヶ丘町)や、国立代々木競技場、東京国際フォーラム、日本武道館などを中心に、東はボクシング会場となる国技館(墨田区横綱)、西は用賀インターに近い馬事公苑(世田谷区上用賀)や、ラグビーなどを行なう甲州街道沿いの東京スタジアム(味の素スタジアム、調布市西町)、自転車競技(ロードレース)のスタート地点となる武蔵野の森公園まで。ゾーン外だが、川越街道沿いの陸上自衛隊朝霞訓練場(練馬区大泉学園町)では射撃競技が開かれる。

『東京ベイゾーン』には選手村のほか、三ツ目通り沿いの東京アクアティクスセンターや有明アーバンスポーツパーク、お台場海浜公園など10会場がひしめく江東区、さらに東はレスリングなどを行なう幕張メッセ(千葉市)、西は湾岸道路沿いの大井ホッケー場(品川・大田区)までが含まれる。

このほか、埼玉県さいたま市のさいたまスーパーアリーナではバスケットボール、川越市の霞ヶ関カンツリー倶楽部ではゴルフ、千葉県長生郡一宮町ではサーフィン、神奈川県の江ノ島ではセーリング、横浜市の横浜スタジアムと福島市の福島あづま球場では野球・ソフトボール、静岡県伊豆市の2会場と駿東郡小山町の富士スピードウェイでは自転車競技、北海道の札幌大通公園では競歩(8月6、7日)とマラソン(同8、9日)が実施される。なお、サッカーは札幌ドーム、宮城スタジアム、茨城カシマスタジアム、埼玉スタジアム2002、横浜国際総合競技場の各会場でも開かれる。

パラリンピックも、前述のうち21会場で開かれるが、マラソンは都内で実施される。

一般道を使う競技

オリンピック自転車競技のロードレースは、男子は7月25日(土曜日)午前11時、女子は26日(日曜日)午後1時にスタート。武蔵野の森公園から10キロまでパレード走行し、府中街道~多摩ニュータウン~国道413号線(道志みち)~籠坂峠~富士山麓(須山地区)・三国峠(男子のみ)~静岡の富士スピードウェイまで。男子は総距離244キロ、午後6時15分終了。女子は同147キロ、同5時35分終了。詳細はコースマップ(https://tokyo2020.org/jp/games/sport/olympic/road-cycling/road-detail/)へ。

オリンピックの個人タイムトライアルは7月29日(水曜日)、パラリンピックのロードレースは、9月2~4日に、いずれも富士スピードウェイ周辺で行なわれる。

お台場周辺では、7月27、28両日(月・火曜日、午前6時30分から9時ごろまで)にオリンピックのトライアスロン個人(男女)、8月1日(土曜日、午前7時30分から9時25分まで)に同混合リレーが実施される。うち8月1日はのぞみ橋を渡って有明テニスの森交差点までがコースになる。詳細は(https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20180802-01.html)へ。

パラリンピックのトライアスロンは、8月29、30両日(土・日曜日、午前6時30分から午前11時ごろまで)に、お台場から有明テニスの森交差点を経て豊洲市場近くまでのコースで実施される。昨年のトライアスロン国際大会はオリンピックのテストイベントとして開かれ、競技時間中は首都高台場入口とレインボーブリッジの芝浦方向を閉鎖した。まだ調整中だが、今夏の本番でも基本的に同様の規制が検討されているという。

パラリンピックのマラソンは、9月6日(日曜日)午前6時30分から11時までの予定。コースはオリンピックスタジアム~富久町~水道橋~神保町~神田~日本橋~浅草雷門~日本橋~銀座~増上寺~銀座~日本橋~神田~神保町~皇居外苑~神保町~水道橋~富久町~オリンピックスタジアム。詳細はパラ陸上競技ページ(https://tokyo2020.org/jp/games/sport/paralympic/athletics/)へ。