日本初の国産捕鳥機『チキンアガール』 2023年度の発売目指す 大宮製作所、田中工機

畜産機械メーカーの㈱大宮製作所(栗山裕光社長―本社・京都府宇治市伊勢田町中ノ荒30)と、農業機械メーカーの田中工機㈱(田中秀和社長―本社・長崎県大村市皆同町15-1)は、2023年度に日本初の国産捕鳥機『チキンアガール』(捕鳥機・捕鳥システムの特許申請中)の発売を目指している。開発は国内の農場で試験を重ねて最終段階に来ており、今後は試験農場を拡大して収容能力の向上を図るとともに、鶏肉の品質への影響なども調査する。

日本初の国産捕鳥機『チキンアガール』の開発は、大宮製作所で捕鳥ロボットを担当する山下祐樹課長代理が、大手インテに所属していた2018年に、捕鳥作業の人員不足や高齢化により機械化したいと考えていた際に、田中工機の自走乗用根菜類拾上機『アガール』をホームページで偶然見つけ、田中社長(当時は副社長)にメールをしたのがきっかけ。

田中社長は「アガールで鶏を捕まえたい」というメールを見た時は内容が理解できず、後日、農場を訪問して捕鳥作業を見て「この21世紀に人間の手だけで何万羽もの鶏を捕まえている。このようなキツイ仕事をなぜ機械でしないのだろうか」と唖然としたとのこと。捕鳥の現場で実際に『アガール』を使って鶏を捕まえたところ、問題点は多々あったが可能性を見出せたことと、「何とかこのキツイ仕事を楽なものにしたい」という思いから社内でプロジェクトを立ち上げ、日本初の国産捕鳥機の開発がスタートした。

開発は現時点で約9割まで来ており、最終段階に入っている。捕鳥の能力は、これまでの試験で1分間に100羽の実績がある。捕鳥した後はユーザーの要望に合わせ、カゴ(5~6羽詰め)やコンテナ(約100~200羽詰めのモジュールタイプ)への回収などのオプションを提供していく予定。現段階では運搬車(約100羽積み込み)での回収により、鶏舎の手前まで運ぶ方式を確立している。

試験段階で1分間に100羽の捕鳥実績がある

海外メーカーの捕鳥ロボットも多数あり、これまでに国内で試験した事例もあったが、日本の鶏舎の大きさに合わないという実情があった。『チキンアガール』は全長約4.5m、幅約2.0m、高さ約1.5m、重さ約1.0トンで、日本のほとんどの鶏舎で活躍できるとのことで、多くのインテで問題となっている捕鳥の人員不足や効率化が期待できる。

2023年度の発売を目指す『チキンアガール』は、まずは田中工機がすぐに対応できる九州エリアを中心にスタートし、その後、大宮製作所の各支店のサポートを入れて全国に拡大していく予定。

大宮製作所の栗山社長は「このたび縁あって、補鳥機『チキンアガール』の開発に少しばかり協力させていただいた。今まで国産ではなかった機械をここまで漕ぎつけるには、開発力・技術力にとどまらず、ものすごい努力が必要であり、それを実現した田中工機には本当に感謝している」と述べた。

また、山下課長代理は「日本の鶏舎に合った捕鳥機を作りたいと、ノートにマンガのような絵を描いたのが始まりで、一緒に開発してくれる企業を探すのは本当に大変だった。捕鳥は夜中の作業で本当にキツイ仕事。その思いを理解していただき、何とか日本の捕鳥を変えたいと一緒に取り組んでいただいた田中社長には感謝しかない。その夢の捕鳥機が完成間近であり、日本の養鶏業界に大きな革命をもたらすと思っている」とした。

田中工機の田中社長は「わが社は長崎県にある創業73年の〝ゼロから開発~製造を行なえるものづくりの一貫体系〟ができる農機製造会社で、主に重量野菜と呼ばれる根菜類(じゃがいも、玉ねぎなど)の収穫機などを製造している。野菜作物の収穫に関しては知見・技術などのノウハウを持っているが、今回の『捕鳥』という分野はゼロスタートで、挑戦にほかならない。しかし、自走乗用根菜類拾上機『アガール』というベースマシンがあったからこそ、数年で鶏を拾い上げる機械にまで発展させることができたと自負している。様々な鶏舎・捕鳥の条件などがあると思うので、大宮製作所と一緒にニーズを聞き、対応できるよう、さらなる開発・製造に取り組んでいきたい」と抱負を述べた。