日本の卵の危険性をあおる 週刊現代

生産現場が様々な要因により未曾有の苦境にある中、㈱講談社が「週刊現代」1月30日・2月6日合併号と2月13日号に掲載した「『日本の卵』が世界から危険視されている理由」「大反響第2弾 日本の卵はこんなに危ない」など、事実に反する記事が出ている。

同記事では「ほとんどのニワトリの子宮が病変」「大量の抗生物質投与」「香辛料を無理矢理食べさせて黄身の色を変える」「死骸に囲まれた鶏舎の地獄」「特売日に合わせた『賞味期限』偽装」などの見出しをつけて報じている。しかし、養鶏関係者からは、世界的にみても極めて高度な衛生管理の下で生食文化にも対応した卵を安定供給し、人々の生活や健康、成長を支えてきた生産現場の努力を踏みにじるような表現だとして、憤りの声も出ている。風評被害が心配されることから、鶏卵関係の団体も情報発信したり、出版元へ抗議し回答を求めたりしている。

正しい情報発信のツールを作成 日本養鶏協会

(一社)日本養鶏協会は、一部報道でまた「抗生物質」の使用について誤った認識に基づく記事が出されたとして、消費者の誤解を防止するためのポスター兼チラシ(簡略版と詳細版)を作成し、ホームページでデータを配布している。

詳細版では、鳥インフルエンザについての食品安全委員会の見解(鶏肉・鶏卵は『安全』と考えます。わが国の現状においては、以下の理由から、鶏肉や鶏卵を食べることにより、鳥インフルエンザ〈ウイルス〉がヒトに感染する可能性はないと考えています。「ウイルスがヒトの細胞に入り込むための受容体は鳥の受容体とは異なること」「ウイルスは酸に弱く、胃酸で不活化されると考えられること」)に加えて、たまごと抗生物質について、飼料安全法では「卵を産む採卵鶏は、70日齢以降、抗生物質を含む飼料を使用することは禁じられている」こと、食品衛生法では「抗生物質が含まれる卵の販売禁止」が定められていることを説明。採卵開始後の飼料には、抗生物質の添加が一切認められていないことを解説している。

週刊現代第3弾も

週刊現代は第3弾として2月20日号でも「卵巣がんのニワトリの卵を食べ続ける日本人」「サルモネラ菌と殺虫剤にまみれた危険な食品」「『生産調整』でニワトリを殺せば殺すほど出る補助金」「特売の卵を買ってはいけない」「生卵なんて食べてはいけない」などのタイトルを付けた記事を掲載。

アニマルライツセンターの岡田千尋氏、麻布大学獣医学部の大木茂教授、匿名の〝鶏卵業者S〟〝医師Y〟の4人の対談形式で「卵の生食はサルモネラ菌のリスクと隣り合わせ」「卵を生で食べる文化が日本の養鶏文化を歪ませてしまっている面も」などと指摘。しかし厚労省の食中毒発生状況調査によると、卵類およびその加工品の食中毒事件数は近年、減少傾向で令和元年はゼロであった。農水省消費・安全局が平成19年度に続き令和2年度に実施した市販鶏卵のサルモネラ調査(小売店等で採材したパック詰鶏卵1870試料の調査)の中間成績(1429試料分)でも、サルモネラ属菌の卵殻表面の陽性率は0.3%、卵内容の陽性率は0%(19年度同様)で、これらの結果から、日本の卵の安全性はデータで示されているといえる。

〝業者S〟は特売卵について「製造年月日の偽装が当たり前のように行なわれている」と発言し「私自身は一つ一つに産卵日がきちんと記載されている卵を買うようにしています。特売品には絶対に手を出しません」としているが、〝業者S〟は記事後半で自らは「平飼い中心にやっているので見学者を受け入れています」としている。つまり、自ら生産しながらスーパーなどで卵を買っていると述べている。

鶏卵業界では、鶏卵の賞味期限は〝生食可能な期間〟とし、平成21年9月の消費者庁発足も受けて、平成22年に日付等表示マニュアルを改正。消費者目線に立って、家庭で生食用として消費される鶏卵については〝産卵日を起点として21日以内を限度〟として表示することにしている。

記事では、データや裏付けを欠いた一方的な主張が散見されるが、賞味期限や薬剤の使用、鶏の健康状態、世界の養鶏の今昔について事実を誤認またはわい曲しており、卵がわが国や世界の人々の栄養と健康の改善に果たしてきた役割や、これを支えてきた生産流通関係者の努力などへの敬意が欠落している。