新型コロナ関連の支援策 業界として必要な施策、課題に声を!

今回の新型コロナウイルス感染症に伴う経済への打撃では、食品生産・流通分野においても、悪影響が幅広い業種に長期間及ぶことが懸念されている。このような中で、政府の令和2年度予算に加え、第1次・第2次補正予算の諸対策が明らかになりつつある。支給の遅さや、金額の不十分さも指摘されているが、各種の貸付(融資)以外の、現時点で活用が可能な協力・給付・補助金や、導入が見込まれている支援策についてまとめた。

持続化給付金

任意の1か月間の売り上げが、前年同月と比較して50%以上減少した法人に、最大200万円、個人事業主に最大100万円を申請から2週間前後で給付する。食品・農業関連の個人事業主・法人・農事組合法人・協同組合なども幅広く対象となり、農水省も周知をアピールしている。

申し込み期限は来年1月15日までで、給付は1回のみ。比較する前年同月の売り上げは、個人農家は昨年の平均月収を適用可。法人も、収入が時期により偏りがあり、年間収入の半分以上を3か月間で売り上げる場合は、任意の3か月間が代用できる。中小企業庁の専用ページ(https://www.jizokuka-kyufu.jp/)または予約制の申請サポート会場(https://www.meti.go.jp/covid-19/shinsei-support.html、自動予約0120-835-130、オペレーター0570-077-866)で申請できる。

持続化補助金(特別対応型)

小規模事業者が販路開拓に要した費用を最大100万円まで補助する。コロナ特別対応型の類型B(非対面ビジネスモデルへの転換)とC(テレワーク環境の整備)の補助率は、3分2から4分の3に引き上げられた。39県で緊急事態宣言が解除された5月14日以降に発生した経費を50万円まで定額(10割)補助する事業再開枠(特別枠の上乗せ)も新設され、「一次採択者にも遡及適用される」とのこと。

補助対象経費の6分の1以上をサプライチェーンの毀損(原料が来なくなったなど)への対応や非対面型ビジネスへの転換、テレワーク環境の整備などに使うことが条件。詳細は全国商工会連合会、日本商工会議所などのホームページへ。

経営継続補助金
持続化補助金は商工業者が対象で農家(系統出荷のみ、協同組合、農事組合法人など)は使えないことから、第2次補正予算で措置されるもの。

5月27日の閣議決定段階では、経営計画を策定した常時従業員数20人以下の農林漁業者(法人含む)について、販路の回復や新たな生産・販売方式の導入に最大100万円(補助率4分の3)、消毒・換気設備など感染防止対策に同50万円(定額)、合計で最大150万円の補助が示された。

持続化補助金と同様に、複数の事業者の共同申請ができ、10軒以上であれば最大で1500万円が給付される。担当は農林水産省経営局経営政策課で、(一社)全国農業会議所が応募窓口に予定されている。

農業労働力確保緊急支援事業

いくつかメニューがあるうち、援農者緊急確保支援事業では、外国からの入国制限や「畜産事業者に新型コロナウイルス感染者が発生した時の対応および事業継続に関する基本的なガイドライン」に準拠した対策(従業員の自宅待機)などで人手不足に直面した農業経営体が、人材確保に要した掛かり増し経費を定額補助する。実施主体は全国農業委員会ネットワーク機構(全国農業会議所)。詳細は専用サイト(https://for-farmer.jp/)へ。

ものづくり・商業・サービス促進補助金

新製品やサービス、生産プロセスの改善に必要な設備投資等に要した費用を最大1000万円補助する。

特別枠の補助率はA類型(サプライチェーン毀損対応)は3分の2、B類型(非対面ビジネスモデルへの転換)・C類型(テレワーク環境整備)は4分の3。さらに、持続化補助金と同様の条件で上限50万円を定額(10割)補助する事業再開枠(特別枠の上乗せ)も新設された。詳細は、ものづくり補助事業公式ページ(http://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html)へ。

働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

厚生労働省所管の事業。テレワークを新規導入する中小企業事業主に、通信機器の導入などに要した費用の75%を1人40万円、1企業300万円まで支給する(成果目標達成時)。

申請締め切りは今年12月1日。問い合わせはテレワーク相談センター(0120-91-6479)へ。

このほか、感染拡大防止のための病気休暇制度や、子どもの休校・休園に対応した特別休暇制度を整備した中小企業に、対象経費(研修費、労務管理機器導入費、人材確保費、効率の増進に役立つ設備〈運送業の洗車機など〉の導入費など)の最大75%(事業規模30人以下で設備導入経費が30万円を超える場合は80%)を50万円まで補助する職場意識改善コース(締め切りは7月29日)などもある。

詳細は各都道府県の労働局、雇用環境・均等部(室)へ。

業務改善助成金

中小企業事業者が、生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステムの導入、教育訓練)などを行ない、事業場内最低賃金を所定の区分に応じて引き上げた際に、費用の一部を助成する(7人以上を25円引き上げ、生産性要件を満たした場合は助成率90%、上限額80万円など)。

申請先は各都道府県労働局。

雇用調整助成金
企業が従業員の休業手当に要した費用を一定割合助成する。必要事項が非常に煩雑で、支給も遅いことが問題になったため、一部の自治体は社労士への申請代行手数料の補助を打ち出したほか、5月20日以降は申請が簡略化されたため、以前不可とされていても、再度申請することで承認される場合もあるようだ。

第2次補正予算が閣議決定の通り成立すれば、1人1日当たりの助成額の上限を1万5000円に引き上げるほか、農業経営者を含めた全業種を対象に、特定の条件を満たした事業者には100%助成する特例措置が9月30日まで延長される予定。雇用保険に加入していない人の休業手当も、緊急雇用安定助成金で助成される。

申請マニュアルは厚労省ホームページで閲覧可。申請は、オンライン申請はトラブルにより停止しているが、各地のハローワークや労働局で受け付けている。

傷病手当金

療養のため仕事を4日以上休んだ、健康保険などの被保険者が自ら申請することで、平均賃金の3分の2を支給する。現在、特例として発熱などの自覚症状があって仕事を休んだ場合などでも支給対象になる。詳細は各保険の窓口へ。さらに国民健康保険の加入者についても、自治体によっては支給が予定されている。詳細は各自治体へ。

感染拡大防止協力金
休業に協力した店舗に自治体から給付される。

東京都は1店舗50万円、2店舗以上100万円が上限。給付の遅さや金額の不十分さなどが指摘されているが、5月6日までの休業に対応した1回目の給付は6月15日まで、5月7日以降の休業に対応した2回目の給付は7月17日まで受け付けている。

既に申請受け付けを終了した自治体も多いが、BtoC以外の業態の事業者も利用できる独自の支援策を用意している自治体もあり、各都道府県のホームページなどで確認できる。

固定資産税減免

来年の固定資産税・都市計画税を、3か月間の収入が前年同期より30%以上減少した場合は半額、50%以上減少した場合は全額免除する。

納税猶予

売り上げが(おおむね20%以上)減少した法人や個人事業主について、2020年2月~21年1月が納付期限の所得税、法人税、消費税などの国税の納税を1年間猶予する。問い合わせは国税局猶予相談センター(各地の国税局)へ。このほか、地方税の住民税、固定資産税など基本的にすべての税、社会保険料、公共料金について、個別の状況に応じて納付猶予措置がある。

家賃支援給付金

第2次補正予算で措置される。事業を行なう賃借物件で3か月間の売り上げが前年より3割以上、または単月の売り上げが5割以上減少した中小企業などに、6か月分の家賃補助として最大600万円を支給する。

補助率の上限は3分の2。1か月当たりの上限は法人が100万円、個人事業主が50万円。6月中の募集開始を目指している。

住居確保給付金

住居の借主が勤務先の休業や収入減などで賃借料を支払えない場合、借主の申請で自治体が3~9か月分の家賃の一定額(地域により異なる)を上限として貸主に直接支払う。

未利用食品の有効活用事業

令和元年度予備費で計上された「学校給食の休止に伴う未利用食品活用緊急促進事業」のうち「新たな販路へのマッチング対策」は5月で終了したが、申請が多かったことから、6月4日に再度事業実施者の募集を開始した。

第1次補正予算に計上された「国産農林水産物等販売促進緊急対策事業」では、インバウンドの減少や輸出の停滞などで在庫が滞留している品目について、デリバリーやインターネット販売、直売所などを使った流通促進を、業界団体などを通じて半額補助する。対象品目は「在庫の滞留、価格の低下、売り上げの減少などが生じている品目(牛肉、果物、林水産物など)」となっているが、自治体によってはまず独自の予算を計上して地鶏を学校給食に提供する準備などが進められている。菓子も売り上げが対前年同期比8割以下の事業者が製造・販売するものが販売促進活動の補助対象になり、現在は事業実施主体の募集・選定を進めている。

このほか、自治体向けの地方創生臨時交付金が2次補正予算で2兆円増額されている。日本政策金融公庫などの金融機関でも引き続き、金利負担実質ゼロの複数回融資を含めた相談を受け付けている。

各種の給付金の申請に当たっては、手数料などが必要になることはなく、農水省は詐欺への注意を呼びかけている。公的な関係機関や、手近でよく知っている関係者の助けを求めながら、できるだけ利用していきたい。このほかにも、未曾有の経済危機の中で今後、対処が必要な影響や被害、行政の目が届いていない共通課題、適用が求められる施策などが明らかになってくるとみられる。

各社の自助努力や企業同士による協力と合わせて、その都度、団体や組合などで声を上げることも大切と考えられる。