小学生がウズラの自然孵化に成功 徳島県の科学経験発表会で表彰

抱卵するウズラと、自然孵化した雛。自然
の草原をイメージした隠れ場所にしている

徳島県教育委員会と(公社)徳島県教育会は昨年10月28日、平成30年度「第75回科学経験発表会」を徳島市の徳島県教育会館で開き、同県石井町立高川原小学校5年生の以西拓誠(いさい・たくみ)くんの研究成果『うずらの自然ふ化~野生うずら復活プロジェクト~』が、小学校高学年の部の特選に選ばれた。

同発表会では、県内全域の児童・生徒が取り組んだ夏休みの自由研究などの中から、優秀な研究成果が表彰される。小学校高学年の部では13件が発表され、5件が特選、うち1件が最優秀賞となった。

以西くんは、ウズラの研究を小学3年生の時から継続。3年生時には『うずらを育てる』がテーマの自由研究で、初めて人工孵化した家禽ウズラを飼い、4年生時には『うずらの卵と出産』に挑戦。①毎日卵を産むメスもいる②(同じ親鳥が)産んだ卵は殻の模様が似ている③暑い夏や寒い冬は卵を産まない(気温が関係している)④産んだ後、巣作りするメスがいる⑤カルシウム不足で柔らかい殻の卵ができる――ことを自分の目で確かめた。

この中で、「就巣」や「抱卵」をしないとみられていた家禽ウズラの中に、まれに抱卵する個体があることを発見。2017年秋には、掃除のため雌雄を数時間同じ小屋に入れたところ偶然、メス3羽が抱卵を始め、合計10羽が自然孵化で誕生。冬に向かう季節で育雛が難しかったが、2羽が成鳥まで育った。

家禽ウズラの自然孵化の研究は、絶滅危惧Ⅱ類に分類される野生ウズラの復活にも役立つのではと思ったことから、翌18年の春先の繁殖期に、これまでの知識や経験を踏まえて自然孵化の再現にチャレンジ。度重なる野生動物の襲撃などの困難もあったが、1羽が抱卵し、孵化した5羽すべてが成鳥まで育った。この間、就巣や抱卵を促す環境の整え方、雌雄を別居させるかどうか、孵化前に母鳥が「ポ~、ポ~」と珍しい声で鳴くことなど、多くの知見も得た。

研究では、家族の手助けのほか、ウズラのゆで卵を移動販売する「うずたま屋」、ウズラがテーマの漫画やブログを書いているイラストレーターの林山キネマさん、研究者ら幅広い関係者からアドバイスを受けた。研究はさらに継続する予定。

ウズラは近年、ペットとしても人気になっているという。養鶉農家には最近、食用卵から家禽ウズラを孵化させようとする人から「孵化しない」との相談がよく来たりするとのこと。ただ、採卵用ウズラは雌雄鑑別しており、孵化させるのは奇跡的なレベル。卵は本来、無精卵も有精卵も安全に食べられるが、農家ではより安全・安心に食べてほしいとの思いから、無精卵のみを出荷するようにしている。

ウズラを長年研究してきた岡山大学農学部の佐藤勝紀名誉教授(日本ウズラ協会副会長)は、以西くんの研究成果について「ウズラの『就巣』『抱卵』『子育て』行動の機構解明や、野生ウズラと家禽ウズラの遺伝的関係、家禽化の歴史などの解明にも有用と考えられる。今後は、就巣と抱卵など個別の行動や、行動間の関係、孵化・子育て中の鳴き声の解析などが重要な課題になるのでは」と高く評価している。