小売価格の最高値 今年もスイスの卵 日本は5位 IEC京都大会

前号に続き、国際鶏卵委員会(IEC)の会員向けデータベースから集計した各国の採卵鶏飼養羽数と鶏卵生産量、鶏卵自給率、飼養システム、卵殻色割合、鶏卵の農家販売価格・小売価格などを紹介する。

各国報告データより(下)

採卵鶏飼養羽数
IECに報告した2017年次の採卵鶏(成鶏)飼養羽数が、1億羽以上の国々は次の通り。①中国14.50億羽②米国3.16億羽③インド2.39億羽④ロシア1.57億羽⑤メキシコ1.57億羽⑥日本1.36億羽⑦トルコ1.28億羽。

羽数ベースではロシアがメキシコを20万羽上回り、4位となった。ブラジルも1億羽以上を飼養しているとみられるが、2013年以降は羽数を報告していない。飼養羽数が前年より減少したのはフィンランド、スロバキア、イタリア、南アフリカ、メキシコの5か国。スロバキアと南アフリカは2年連続の減少。オランダは前年と変わらず。報告があった他の24か国は増加した。

増加が目立ったのは、中国(前年比1億羽増)、トルコ(2940万羽増)、インド(2406万羽増)、ポーランド(1110万羽増)、ロシア(900万羽増)、米国(734羽増)など。イラン(230万羽増)、ベルギー(158万羽増)、日本(153万羽増)なども増加した。

鶏卵生産量と自給率
鶏卵生産量の上位10か国は次の通り。①中国2600万トン②米国553万トン③インド505万トン④メキシコ272万トン⑤ロシア263万トン⑥日本260万トン⑦ブラジル240万トン⑧トルコ136万トン⑨フランス91万トン⑩イラン89万トン。

鶏卵生産量が前年より減少したのはベルギー、ポーランド、イタリア、キプロス、イラン、南アフリカ、メキシコ、アルゼンチンの8か国。前年の報告がなかったスウェーデンとオランダを除く23か国は増加した。飼養羽数が人口より多い国は、前年より4か国増えて12か国となった。これらの傾向は、世界的な鶏卵需要の増加を反映しているとみられる。

鶏卵の自給率が100%以上の国は16か国。輸出割合が高いオランダは300%。次いでポーランドの179%、トルコの130%、ポルトガルの114%、フィンランドの112%、スペインの111%、ロシアの109.8%、スロバキアの106.6%と続いている。EUでは加盟28か国のうち、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、英国、オランダ、ポーランドの7か国で、EU全体の鶏卵生産量の75%程度を占めている。

飼養システム
欧州=EUでは2012年に、従来型ケージ飼養が禁止された。昨年9月のIECブルージュ会議で「EUの鶏卵生産の近況」について講演したローレンス・ボナフォス女史によると、EU全体で飼養されている約3億9071万羽(2016年、マルタを除く27か国が回答)の飼養形態の割合は「エンリッチドケージ55.9%、平飼い(バーンやエイビアリー)25.6%、放し飼い(フリーレンジ)13.9%、オーガニック4.5%」で、傾向としては非ケージシステムに移行しているとしていた。

非ケージ化などの動きは、ドイツをはじめとした欧州のプロテスタント系キリスト教徒が多い国々で始まったとされる。現在はドイツ、英国、デンマーク、スウェーデン、宗教的にプロテスタント系とは言えないがドイツへの輸出が多いオランダ、さらにカトリック系住民が多いオーストリア、ベルギーなどでも非ケージ飼養の割合が半分以上となっている。EUに加盟していないスイスもカトリック教徒のほうが多いが、ケージ飼養を1981年から全面的に禁止している。一方、カトリック系の国民が多いイタリア、フランス、スペイン、ポルトガル、旧ソ連体制下にあって2004年にEUに加盟した東欧のハンガリー、ポーランド、スロバキアなどではエンリッチドケージ飼養が多い。ロシアは従来型ケージが多い。

アジア・アフリカ=EU以外の国々では、ケージ飼養には従来型ケージとエンリッチドケージの両方が含まれるが、アジア・アフリカでは気候風土などの要因から、総じて従来型ケージ飼養の割合が圧倒的に高い。

オセアニア・南北アメリカ=米国では、大手スーパーや外食大手などが「取り扱う卵を2025年前後までに100%ケージフリー卵に移行する」と宣言していることから、非ケージ飼養が少しずつ増加傾向にあるものの、ケージ飼養の割合はまだ高い。中南米でもケージ飼養が過半を占める。英国と旧英領植民地から独立した53か国で構成する英連邦加盟国のうちオーストラリアとニュージーランドでは、ケージ廃止の議論が活発化しており、英国と同様に放し飼いの割合も高まってきている。

有色・白色卵鶏
有色卵鶏(ピンク卵鶏含む)と白色卵鶏の割合をみると、有色卵鶏が90%以上を占めているのは、英国、アイルランド、オーストリア、ハンガリー、スロバキア、ポルトガル、スペイン、キプロス、コロンビア、ニュージーランド、オーストラリア。白色卵鶏が90%以上を占めているのは、フィンランド、スウェーデン、インド、イラン、米国、メキシコ。日本は前年と同じ白色卵鶏が60%、有色卵鶏が40%。中国は白色卵鶏が5%増えて35%になった。

農家販売価格と小売価格
卵の小売価格が最も高いのは今年もスイス。ただし、スイスはケージ飼養がゼロのため、報告は平飼い卵。農家販売価格と小売価格は前年と変わらず、それぞれ2.86ドル、6.34ドル。農家販売価格に対する小売価格の割合は222%。次いで小売価格が高いのはイタリアの4.06ドル。農家販売価格に対する小売価格の割合は353%。3位はデンマークの3.18ドル。農家販売価格に対する小売価格の割合は408%。4位はキプロスの2.71ドル。農家販売価格に対する小売価格の割合は182%。5位は日本で、農家販売価格(1.40ドル)に対する小売価格(2.47ドル)の割合は176%。

卵の小売価格が最も安いのはインドの0.81ドルで、農家販売価格の123%。中国の小売価格も0.94ドルと1ドルを下回っており、農家販売価格に対する割合は124%。ロシアの小売価格も昨年まで、1ドルを下回っていたが、今年は報告がなかった。農家販売価格と小売価格の差が大きいほど、流通マージン率が高いことになる。