家伝法改正案を国会に提出

飼養衛生管理基準 順守にかかわる措置を強化

政府は2月25日に家畜伝染病予防法の一部改正案を閣議決定し、第201回通常国会に提出した。

今回の法改正の背景には、2018年9月に26年ぶりに発生した豚熱(CSF)が現在もなお終息していないため、野生動物の感染対策を強化するとともに、農場における飼養衛生管理を徹底し、家畜の伝染性疾病の発生予防とまん延防止を図ることと、悪性伝染性疾病の侵入防止のために、畜産物などの輸出入検疫を強化することが狙い。同法をめぐっては、アフリカ豚熱(ASF)の「予防的殺処分」と、法律では病名をアルファベットの略称で記載できないことからCSFを「豚熱」、ASFを「アフリカ豚熱」と名付けることを議員立法で1月30日に先行改正し、2月5日付で施行している。

今回の改正案のポイントは、①家畜伝染性疾病の名称変更②家畜の所有者・国・都道府県・市町村・関連事業者の責務の明確化③飼養衛生管理基準の順守にかかわる是正措置等の拡充④野生動物における悪性伝染性疾病のまん延防止措置の法への位置づけ⑤予防的殺処分の対象疾病の拡大⑥家畜防疫官の権限等の強化――など。

この中から養鶏に関係する変更点を中心に紹介すると、

①の名称変更では、「家きんサルモネラ感染症」を「家きんサルモネラ症」に変更する。

②の責務の明確化では、発生予防とまん延防止のためのそれぞれの責務を規定した。

③の飼養衛生管理基準関係では、衛生管理区域や汚染された畜舎・倉庫に出入りする際のいずれの場合でも消毒義務を課す。さらに、家畜の所有者は、衛生管理区域ごとに「飼養衛生管理者」を選任する制度を創設。また、飼養衛生管理の指導等にかかわる指針(国が策定)・計画(都道府県が策定)を定めることを明確にし、まん延防止措置として都道府県知事が飼養衛生管理基準の順守について緊急勧告・命令を出したり、命令違反者の公表ができるようにし、罰則も強化(飼養管理状況の定期報告違反は「10万円以下」から「30万円以下」、命令違反は「30万円以下」から「100万円以下」、法人の患畜等届出義務違反は「100万円以下」から「5000万円以下」に引き上げ)する。

④の野生動物対策では、野生動物の悪性伝染性疾病の浸潤状況調査、豚熱の経口ワクチン散布などを法に位置付ける。また、野生動物で悪性伝染性疾病の感染が確認された場合、発見場所等の消毒や通行制限、家畜の移動制限、飼料業者・運送業者などの倉庫・車両の消毒を行ない、病原体拡散防止措置ができるようにする。

⑤の予防的殺処分の対象疾病は、これまでの口蹄疫に「アフリカ豚熱」を加えるとともに、野生動物で口蹄疫やアフリカ豚熱の感染が発見された場合でも予防的殺処分ができるようにする。

⑥は家畜防疫官が、出入国時の携帯品中の畜産物(肉・肉製品)の有無を質問・検査し、違反畜産物も廃棄できるようにするほか、違反の罰則も強化する(罰金を「100万円以下」から「300万円以下」に引き上げ)。

動物検疫所長は、輸入検疫にかかわる事務を円滑に行なうため、船舶・航空会社や海・空港の管理者に必要な協力を求めることができるようにする。

飼養衛生管理点検ステッカーを配布

農林水産省消費・安全局動物衛生課は、各家畜の所有者が悪性伝染性疾病の防疫対策を徹底することに役立つ「飼養衛生管理点検ステッカー」を作成。各団体や家畜保健衛生所などを通じて配布している。