増加する鶏肉、鶏卵生産 令和元年度の農業白書

政府は6月16日に令和元年度の食料・農業・農村白書を閣議決定した。

今年の白書では、冒頭に「新たな食料・農業・農村基本計画」と「輝きを増す女性農業者」の2テーマを掲げた。

新たな基本計画は、令和2年3月に策定され、今後の農政の中長期ビジョンとなるもの。令和12(2030)年度のわが国の総合食料自給率目標を供給熱量ベースで45%(2018年度は37%)、生産額ベースで75%(同69%)と設定。品目ごとの見通しで鶏肉・鶏卵については、国内消費仕向量を鶏肉262万トン(同251トン)、鶏卵261万トン(同274トン)とし、生産努力目標を鶏肉170万トン(同160万トン)、鶏卵264万トン(同263万トン)としている。

「輝きを増す女性農業者」は、令和元年が男女参画社会基本法の施行から20年の節目であったことから「女性農業者」を初めて特集として取り上げたもの。

さらにトピックスとして「SDGs(持続可能な開発目標)」と「日米貿易協定の発効と対策等」を取り上げている。

本文は第1章「食料の安定供給の確保」、第2章「強い農業の創造」、第3章「地域資源を活かした農村の振興・活性化」、第4章「災害からの復旧・復興と防災・減災、国土強靭化等」。

第1章「食料の安定供給の確保」では、食料自給率の向上に向けて、生産基盤の強化と消費拡大の推進が重要だとするとともに、人口減少や高齢化による国内の食市場が縮小する中では、わが国と距離が近い国を中心としたグローバルマーケットの戦略的な開拓に取り組むことが重要で、輸出環境整備、日本食・食文化の海外展開支援、GAPやHACCPなどの認証取得、知的財産制度の活用等への取り組みが必要だとしている。

世界の食料需給動向のうち、穀物4品目の生産量は、小麦は豪州で乾燥の影響が継続しているものの、EU、ウクライナ、インド、中国などで増加し、前年度比4.5%増の7.6億トン。トウモロコシは南アフリカ、中国、ロシアなどで増加するが、米国、メキシコなどで減少し、同1.0%減の11.1億トン。大豆はブラジル、中国などで増加するが、米国などで減少することから同4.7%減の3.4億トン。米はタイで減産するものの、インドで増加することから前年度並みの5.0億トン――になると見込んでいる。

穀物などの国際需給は総じて安定しているものの、内訳は大きく変化している。例えば小麦については、この20年間にロシア・ウクライナの増産・輸出増が顕著となり、米国の輸出国としての地位は相対的に低下する一方、輸入はアジア・アフリカ地域で大きく増加し、特に東南アジアでは、食の西洋化により肉食や小麦食へのシフトが進み、輸入が大きく増加していることを紹介。

世界人口が令和元(2019)年の77.1億人から令和32(2050)年には97.4億人になると見通されている中で、世界の穀物などの需要は、人口増加や食生活の多様化、経済成長に伴い増加し、長期的に輸入地域と輸出地域の差がさらに拡大することが見込まれており、「ひとたび異常気象などにより輸出国が減産した場合、需給バランスが崩れ、わが国にとっても、たの輸入国との競合が厳しくなることが想定される。このため、引き続き、国際需給の動向を注視し、食料安全保障に万全を期す必要がある」と強調している。

第2章「強い農業の創造」の中で紹介された主要農畜産物の生産動向では、すべての畜種の飼養戸数が減少する一方、1戸当たりの飼養頭数は増加傾向で、大規模化が進んでいるとしている。

鶏肉については「消費者の健康志向の高まりを受け、価格が堅調に推移していることから生産が拡大し、2018(平成30)年度の生産量は160万トンと5年連続過去最高」となり、鶏卵については「2013(平成25)年度以降の堅調な価格を背景に生産が拡大し、生産量は4年連続で増加し、2018(平成30)年度は262.8万トンとなった」と紹介。

このほか、農業の生産現場の競争力強化等の推進や気候変動への対応等の環境政策の推進なども紹介している。