堆肥のペレット化や輸出促進など支援

政府が昨年末に閣議決定した令和2年度の第3次補正予算と、厚生労働省の令和3年度予算のうち、本紙に関係するものの概要を紹介する。

農水省の令和2年度第3次補正予算

「畜産環境総合整備事業」は18億4100万円。畜産物輸出の拡大に伴う家畜の増頭により発生する家畜排せつ物については、堆肥のユーザーである耕種農家側の持続可能性に配慮し、環境保全や土づくりに向け、堆肥の高品質化やペレット化による広域流通の推進を図るほか、畜産経営から発生する悪臭の防止や排水の水質改善をさらに進めるための高度な畜産環境対策を推進し、畜産物の生産拡大を後押しする。

「スマート農業総合推進対策事業」は55億円(前年度15億円)。スマート農業の社会的実装を加速するため、先端技術の現場への導入・実証や、地域での戦略づくり、科学的データに基づく土づくり、教育の推進、農業データ連携基盤(WAGRI)の活用促進等の環境整備の取り組みを支援する。

「畜産物物輸出コンソーシアム推進対策事業」は22億200万円。2030年の農林水産物・食品輸出目標5兆円の達成に向け、生産者、食肉処理施設等、輸出事業者が連携し、生産から輸出まで一貫して輸出促進を図る体制(コンソーシアム)を産地ごとに構築する取り組み。コンソーシアムが実施する商談、プロモーション、輸入国の求めに応えるための取り組み等を支援する。事業内容は、コンソーシアムの設立・運営支援事業と、輸入国の求めに応えるためのコンソーシアムの取り組み等支援事業(①動物福祉対応②血斑発生低減に向けた試験的取り組み③鶏肉・鶏卵のサルモネラ菌低減等の対応④畜産物の品質保持・流通方法に係わる試験・実証⑤牛乳乳製品の輸出に係わる流通コスト低減のための技術開発・実証)など。国から都道府県や全国団体へ定額補助し、生産者、輸出事業者、食肉処理施設等によるコンソーシアムに定額または2分の1相当を支援。

「官民一体となった海外での販売力の強化」は37億4700万円。マーケットインの発想の下、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」で設定された重点品目とターゲット国・地域を対象に、JETROによるビジネスマッチング、JFOODOによる重点的・戦略的プロモーション、品目団体等によるPR・販売促進活動、輸出をけん引する現地の小売・飲食店や流通業者等を通じた日本産食材の販路拡大、コメ・コメ加工品の海外需要の開拓、食体験等を通じた輸出促進等を強力に支援する。

「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業」は250億円。新型コロナウイルス感染症拡大による外食、インバウンド等の需要減少の影響を受けている農林漁業者、加工業者等の新たな生活様式に対応した販売促進・販路の多様化等(インターネット販売、宅配・デリバリーを活用した販路確立、創意工夫による販路確立、学校給食・子ども食堂等への食材提供など)の取り組みを支援するほか、国産農林水産物の消費拡大を推進するため、メディア・SNS等を活用して、農林漁業者等による地域の様々な取り組みを発信する。

食の安全・安心確保に244億円 令和3年度の厚労省予算案

厚生労働省は12月21日に令和3年度予算案を公表した。一般会計の予算は33兆1380億円で、前年(令和2年)度予算から0.5%増えた。

『食の安全・安心の確保など』は244億円(前年度153億円)。

このうち「残留農薬・食品用容器包装等の規格基準策定等の推進」(一部新規)は18億円(前年度15億円)。残留農薬・食品用容器包装等の規格基準の策定などを計画的に進める。特に残留農薬について、代謝物を含めた新たな暴露評価手法を検討する。また、新たな育種技術(遺伝子組み換え台木を利用した接ぎ木など)や、従来にはない新開発食品(培養肉など)について、最新の科学的知見や海外の取り組み状況などの収集と安全性確保にかかわる検証を実施する。

「HACCPの制度化などによる的確な監視・指導対策の推進等」(一部新規)は5.9億円(前年度5.6億円)。令和3年6月の改正食品衛生法完全施行に合わせ食品等事業者でHACCPに沿った衛生管理が円滑に実施されているかなどの対応状況の実態を把握し、HACCP実施のための手引書の見直しや自治体による指導方法の改善などにつなげる。

「農林水産物・食品の輸出拡大に向けた対応の強化」は1.8億円(前年度1.3億円)。令和2年4月施行の「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」に基づき、さらなる輸出拡大を図るため、輸出施設認定・証明書発行の迅速化などに取り組む。

「検疫所における水際対策等の推進」は207億円(前年度119億円)で、①検疫所における検査体制等の機能強化等(一部新規)②輸入食品の適切な監視指導を徹底するための体制強化――に取り組む。

「食品安全に関するリスクコミュニケーションの実施等」は14億円(前年度14億円)。このうち「食品に関する情報提供や意見交換(リスクコミュニケーション)の推進」は900万円(前年度900万円)、「食品の安全の確保に資する研究の推進」(一部新規)は9.4億円(前年度9.4億円)、「カネミ油症患者に対する健康実態調査等の実施」は4.2億円(前年度4.3億円)。

『生活衛生関係営業の活性化や振興など』(一部新規)は令和2年度第3次補正予算で594億円、令和3年度予算で49億円(前年度52億円)。最低賃金に関するセミナーの開催などにより、生活衛生関係営業者の収益力向上を図り、新型コロナウイルス感染症の影響により悪化した業績を回復するための環境を整えるなど、業の振興や発展を図るための組織基盤の強化や衛生水準の確保・向上、相談支援体制の強化などに取り組む。