厚労省が食事摂取基準改正の要点など公表 9月8日までパブコメ募集を開始

厚生労働省健康局健康課栄養指導室は8月26日から9月8日まで、「食事による栄養摂取量の基準の一部を改正する件(案)」についてのパブリックコメントを募集している。

改定作業を進めてきた『日本人の食事摂取基準(2020年版)』の要点や目標量などの数字について、意見を募集するもの。参考資料として「食事摂取基準の策定ポイント」(後述のe-Govから入手可能)を示し、2015年版からの変更点には下線を引いている。

同「策定ポイント」に示されている内容は、『日本人の食事摂取基準(2020年版)』の指標設定の考え方や策定方法などの要点と、目標量などの数字のみだが、同省によると数字については、3月22日付で公表された同基準策定検討会の「報告書(案)」(本紙5月25日号で紹介)から変わっていないとのこと。

コレステロールの摂取目標量(上限値)についても、「報告書(案)」で示されていた内容を踏襲し、「発症予防の観点から目標量を設定することは難しいが、脂質異常症を有する者およびそのハイリスク者においては、摂取量を低く抑えることが望ましいと考えられることから、脂質異常症の重症化予防のための量を設定し、飽和脂肪酸の表の脚注として記載」するとしている。この「脂質異常症の重症化予防のための量を設定し、飽和脂肪酸の表の脚注として記載」が、2015年版にはなかった部分。

実際に、「策定ポイント」に示されている「飽和脂肪酸の食事摂取基準」表の脚注には、「飽和脂肪酸と同じく、脂質異常症および循環器疾患に関与する栄養素としてコレステロールがある。コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200ミリグラム/日未満に留めることが望ましい」との記載が加えられている。

日本動脈硬化学会は、空腹時のLDLコレステロール値が140ミリグラム/デシリットルの人を〝脂質異常症〟の高LDLコレステロール血症、同120~139ミリグラム/デシリットルの人を境界域高LDLコレステロール血症としている。厚労省の調査報告に基づくと、前者は国民の約4分の1、後者の「境界域」の人を含めると男性の44%、女性の48%を占めると推定される。

コレステロールは摂取量が血清値に及ぼす影響に個人差があるにもかかわらず、一律にこれらの人のコレステロール摂取量を1日200ミリグラム未満に抑えるとすれば、鶏卵であれば1日約47グラム(卵1個未満)、鶏レバーであれば同約54グラム(焼き鳥などでは1本半程度。いずれも日本食品標準成分表七訂より換算)以上の摂取は成人の半数弱にとって〝望ましくない〟ことになり、脚注ではあるが、かえって栄養不足が心配される勧奨内容となっている。

このほか、同基準策定検討会では最終回の3月22日になって、検討委員から〝米国ノースウエスタン大学のJAMA掲載論文(本紙既報)内容の追記〟が提案されたが、厚労省によると、これらの提案を踏まえて修正し3月末に公表するとしていた最終の報告書(案)は、諸事情から出すことができなくなり、さらに検討会終了後も委員と同省の個別の意見交換で、報告書(確定版)の内容の表現が、3月22日付のものから変更されることはあり得るとのこと。

『日本人の食事摂取基準(2020年版)』は、パブリックコメントで寄せられた意見も踏まえて最終的な見直しを行ない、9月末から10月中ごろに、大臣告示に合わせて公表される。

パブリックコメントは、電子政府の総合窓口(e-Gov)ホームページ内または健康課栄養指導室係宛ての郵送でも受け付けている。詳細はe-Gov(https://www.e-gov.go.jp/)へ。