卵価下落 需給回復に一丸となって取り組もう!

新型コロナウイルスの影響で、テーブルエッグの需要は前年を上回っているが、ホテル・飲食・加工需要の不調は続き、相場上昇の気配は感じられない。6月(全農たまご・東京、M基準月間平均)は成鶏の稼働羽数が前年を下回っていることもあり、前年比9円高の160円となったが、成鶏の稼働羽数が前年並みに近づく7月以降は、さらなる下げ場面の可能性も危惧されている。

5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除され、6月19日には都道府県をまたぐ移動が全国で緩和されたが、鶏卵相場の浮揚はみられていない。

鶏卵相場(M基準)は6月11日に福岡で5円、15日に東京と名古屋で10円、大阪で5円下押しし、名古屋は160円、東京・大阪・福岡は155円に低迷。鶏卵消費の約半分を占める外食・加工需要の崩壊が大きく影響している。外食は、大手ハンバーガーチェーンなど回復が早かった業種もあり、前年を上回っているところもあるが、全体としてはまだ、平年の6~7割にとどまるとの声が聞かれている。

加工需要についても非常に厳しく、加工メーカーはスポット買いができない状況が続き、産地も非常に苦慮する状況となっている。

一方、テーブルエッグ需要は一時、平年を2割上回るほど増加していたが、直近では前年並みから5%増程度にとどまっており、外食需要を差し引いた全体の需要は、平年より2~3割以上は落ち込んだ状況が続いていることになる。

6月第3週の相場下落では、小玉の下げ幅が大きくなっているが、主に生産者の積極的な換羽誘導で大玉の出荷が減ったことや、気温の上昇で卵重が落ちたことなどが影響しているとのこと。

ただ、このような生産者の取り組みの一方で、え付け羽数が前年並みに戻ってきており、外食・業務需要が回復しないまま前年並みの鶏卵生産量で秋冬を迎えれば、昨年を上回る未曾有の低卵価に陥る可能性も指摘され始めている。

このような需給環境から、JA全農たまごは6月19日付で、4月27日に続いて今年度2回目となる要請文書「環境変化に対応した計画的生産のお願い」を発出した。

同文書では、需給全体の推移について「全国での外出自粛・営業自粛の動きのなか、業界のおよそ5割を占める業務・加工筋の需要が大きく鈍化。量販(小売り)関係についても、3~5月は巣ごもり消費から堅調に推移したが、梅雨入りや気温の上昇などの季節的要因もあり、徐々に元の水準に戻りつつある」と説明。

現状の鶏卵需給については「緊急事態宣言が解除となり、業務・加工筋の荷動きに復調の兆しはありますが、コロナ以前の水準には遠く及ばず、依然として不安定な需給環境となっている」とし、今後についても「完全に平時に戻るには、相当の時間を要することが予想される。また、令和2年(1~4月累計)の全国のえ付け羽数は前年比105%となっており、これまでの減羽傾向から転換しつつある。今後、稼働羽数が増加し、さらなる需給失調を引き起こすことも懸念される状況」と予測。この困難な状況を業界一丸となって乗り越えるためには「生産者の皆様の自主的な減羽・換羽などによる、自社販売に見合った生産体制構築が必要です。鶏卵業界の維持・発展のため、主旨のご理解とご協力を改めてお願いいたします」と呼びかけている。

さらに(一社)日本養鶏協会(齋藤利明会長)は5月8日の文書に続いて、6月22日付で「一丸となった行動で国難を乗り切ろう―需要に見合った生産へのお願い(その2)―」を発出。需給回復の取り組みに参加するよう、全国の会員に再度呼びかけた。内容は次の通り。

日本養鶏協会のお願い(その2)

令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症の流行が広がり、4月7日の政府による緊急事態宣言以降、外出自粛・飲食店の営業自粛の動きが強まり、消費量の約半分を占める業務・加工用の荷動きは著しく落ち込み、4月27日時点で、鶏卵相場(標準取引価格)は前年同月を下回る相場となりました。

こうしたことから、先月5月8日に、会員の皆さまに対して、誘導換羽の指向や成鶏更新・空舎延長事業への積極的な参加を促すとともに、需要に見合った生産をお願いしました。

5月25日に緊急事態宣言が解除され、飲食店の需要が再び戻ってくる期待もありましたが、依然として外食や加工向けの需要の回復は鈍く、この先、需要がコロナ以前の水準にまで戻るには、時間がかかるとの見通しもあります。

5月18日以降、鶏卵の標準取引価格(日ごと)が、令和2年度の安定基準価格161円を下回り、令和2年度最初の成鶏更新・空舎延長事業が発動されましたが、実際に現在発動中の空舎延長事業への参加意向は、6月19日時点で当該事業の申請ベースで10万羽未満が35件、10万羽以上が34件であり、従来に比べ中小規模生産者の参加意欲が強い結果となっています(通報ベースでは10万羽未満が約130件、10万羽以上が約180件)。

需要に見合った生産のためには、今一度、日本養鶏協会の会員が一丸となって、積極的に誘導換羽を指向し、ひなの導入を可能な限り抑制し、そして何よりも会員の皆さまが積極的に成鶏更新・空舎延長事業にご参加いただくことが重要です。

この国難ともいえる新型コロナウイルス感染症の影響を、会員一丸となって乗り越え、鶏卵産業が再び活力を取り戻せるように、日本養鶏協会の会員が一丸となって需要に見合った生産をされますよう、日本養鶏協会の会長として会員の皆様にお願いいたします。
趣旨をご理解の上、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。