全鶏会議が9月セミナー 飼料と鶏糞対策をテーマに

全鶏会議の9月セミナー

全国養鶏経営者会議(略称・全鶏会議、会長=市田真新㈲デイリーファーム社長)は9月19日、東京都港区のAP浜松町で平成30年度9月セミナーを開いた。

冒頭、市田会長は「台風21号や北海道の地震で被害を受けた方々に、心からお見舞いを申し上げる。他人事ではないため、情報交換しながら備えることも大事である。岐阜県では豚コレラが発生したが、畜種は違っても、自分たちの身に置き換えて備える必要がある。人件費や運送費などの諸経費の値上がりが大変である。最低賃金の引き上げや働き方改革のスピードが速すぎると感じており、経営の舵取りを見直すことも考えなければいけない時代になったと思う。先日のIEC京都大会に参加したが、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える中で、我々の畜産もグローバルスタンダードを意識して考えなければいけないと実感した。本日のセミナーは藤原、鈴木の両副会長に企画していただいた。全鶏会議ではその時々のこと、あるいは長期的なことについて、会員の皆さんのご意見に沿ってセミナーを開催したいと考えている。要望があれば遠慮なく事務局に連絡してほしい」などとあいさつした。

飼料セミナーでは、兼松㈱穀物・飼料部穀物課の尾上翔太課長補佐が飼価格の最新動向について説明した。トウモロコシ需給については、強材料として南米の天候相場と米国と世界のトウモロコシ在庫の減少懸念、小麦相場につられた値上がり。弱材料として米中貿易紛争と米国での単収増加への期待、大豆相場につられた値下がりなどの要因を挙げて、今年10~12月のシカゴ相場(12月限と3月限)は330~400セント/ブッシェルで推移するとの見通しを示し、「米中貿易紛争の長期化と、米国での単収増加への期待から、基本的には下落圧力が強い展開になる。11月のUSDA需給予想で、それまでの天候に問題がなければ収穫が大幅に進捗するため、実態に近い単収の発表が予想されるため、そのあたりが今シーズンの底値と予想される。その後は供給面の材料は出尽くし、強い需要と南米の天候相場、欧州を中心とした小麦の不作の影響を受けて、ジリジリと上昇していくと予想される」などと述べた。

米中貿易紛争については「いまだに解決する状況ではない。このまま継続すると、米国から中国への大豆の輸出が減り、米国では在庫過多になる。大豆の相場は下がりやすくなり、トウモロコシ相場もつられる展開が持続すると思う」とした。

㈱ゼンケイの高杉庄太郎取締役営業部長は、配合飼料の設計や価格動向などについて説明した。

鶏糞対策セミナーのうち、〝デンマークにおけるバイオガス発電の取り組み〟のテーマでは、デンマーク大使館の田中いずみ上席商務官(エネルギー・環境担当)が「農業とエネルギーが生む掛け算の可能性」、エクサギー(Xergi A/S)社のオーレ・トルドスレブ事業開発兼営業部長が「エクサギー社のバイオガスプラントの取り組み」、住友精化㈱経営企画室兼技術室イノベーション推進グループの酒井優希氏が「バイオガスプラントの日本での応用」について講演。

田中氏は、デンマークが2050年までに、エネルギーのすべてを再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオガス)でまかなう目標を掲げていることを紹介。バイオガスに関しては、①2020年までに家畜糞尿の50%をバイオガスにする②家畜糞尿の活用に補助金を交付する③天然ガス網への注入を支援する④運輸・産業プロセスでの利用を優遇する――などの戦略で取り組んでいるとした。再生可能エネルギーの導入の意義については、化石燃料の代替や地域にあるエネルギー源の活用、副産物・廃棄物からエネルギーを作ることによる廃棄物処理費の削減と使用エネルギーの代替、エネルギーの売買による収入などを挙げた。

トルドスレブ氏は、バイオガスの専門企業として30年の実績があり、最先端の技術を提供しているエクサギー社の概要や、バイオガスプラントのコンセプト、欧米を中心に世界で110メガワット以上の実績があるバイオガスプラントの導入事例を紹介。英国の鶏糞100%ベースの大型プラントでは、アイルランドと北アイルランドで大規模なブロイラー契約農場を展開するモイパーク社から鶏糞を受け入れて、3メガワットを発電しているとのことで、①ブロイラー鶏糞の嫌気性発酵処理により、農場の拡張を妨げる廃棄物処理問題を解消②持続的な廃棄物処理に加えて再生可能エネルギーを生産③栄養素を破壊せずに農業に還元することで、循環型経済を実現――していると説明した。

酒井氏は、トルドスレブ氏が紹介した英国の鶏糞100%ベースの大型プラントについて詳細を説明。デンマークと日本の違いについては「液肥はデンマークで盛んに利用されているため、周辺農家の協力によって大量に液肥を散布できるが、日本では液肥の活用が進んでいない。液肥による栽培試験など実施して、有効性の普及から始める必要がある。デンマークでは地域熱利用の仕組みが遠隔地でも普及しているが、日本での熱利用はハウス栽培などに限定しており、工業用の用途などで有効活用の可能性を探る必要がある」などと述べた。

〝鶏糞低減飼料〟のテーマでは、JA全農北日本くみあい飼料㈱営業部営業課の鈴木和明課長が「養鶏の環境対策」と題し、同社が販売する鶏糞低減飼料『くみあいUNKシリーズ』の特徴などを紹介した。鶏糞の基本的な仕組みについては「鶏は繊維分解酵素を持たないため、腸内で分解できず、そのまま糞になる。飼料中の繊維含量が多いと、鶏糞の固形物の排出量が増える。繊維は水分を吸い込む性質がある。腸内で水分が吸収されにくく、鶏糞の水分の排出量が増える」と説明。鶏糞低減飼料の野外試験では、①鶏糞の排出量が20~25%減少した②産卵成績や卵質に異常はなかった③汚卵の発生率が低減した④鶏の飲水量が減少した⑤鶏糞中の水分と乾物量が減少した――などの効果がみられたため、今年春から鶏糞低減飼料『くみあいUNKシリーズ』を東北6県で本格発売したとし、「発売以来、大変好評をいただいている。鶏糞を減らすニーズの大きさに驚きつつ、皆さんの期待を痛感している。環境対策は毎日の積み重ねである。我々は使いやすい鶏糞低減飼料を目指し、いつもの飼料と同じように長く使っていただける製品の供給に努めたい」と述べた。