全鶏会議が「鶏卵安定対策案」まとめる

補てん、生産調整、消費促進の3事業で 50万羽までは規模を問わずに補てん

全国養鶏経営者会議(市田真新会長、略称・全鶏会議)は、6月26日に開いた通常総会終了後のセミナーで、同会がまとめた令和2年度からの「鶏卵安定対策事業の新制度への考え方」を公表した。

これは農林水産省の一般会計予算で実施している「鶏卵生産者経営安定対策事業」(公募に応じた日本養鶏協会が事業実施主体)の内容を「補てん事業」「生産調整事業(成鶏淘汰・ひな導入制限・粉卵による市場隔離)」「鶏卵消費促進事業」に再構築し、3つの事業を一体的に行なうことで鶏卵安定対策を図るもの。農林水産省とも意見交換して同案をまとめ、5月10日に(一社)日本養鶏協会に提出している。

新制度への考え方について梅原正一副会長は、①積立金の額を現状より抑える②現在の10万羽で足切りではなく、50万羽までは誰でも同じように補てんを受けられるようにする③補てんの基準価格を一本化し、生産調整事業の発動は別の仕組みを考える④成鶏淘汰・粉卵による市場隔離・消費促進の財源はプール計算とする――ことを基本にまとめたと説明した。

同会の「鶏卵安定対策事業の新制度への考え方」の概要は次の通り。

【補てん事業】
基準羽数を50万羽とし、生産者は大中小のどの規模でも50万羽まで公平に補てん金を受けられるようにする。50万羽の鶏卵生産量を年間8500トン(1羽当たり17キロ)または8000トン(同16キロ)とし、50万羽を超えて生産したものに関しては積立金を少なくする(50万羽まではキロ3円、50万羽以上はキロ2円)。

加入生産者の全羽数参加が原則で、補てん事業の財源(生産者積立金と国の補助)の比率は生産者が3分の2、国が3分の1。補てん財源の上限は45億円で、年当初に補てん基準価格と補てん上限価格を決定。積立金を下回らない最低補てん金をキロ4.5円とし、補てん基準価格を下回った場合に補てん金を交付する。3月は残りの財源により調整して補てん単価を決める。

現行制度では、10万羽以上の加入者は成鶏更新・空舎延長事業が発動中の補てん金が支払われないため、大規模層を中心に加入メリットがないとの声が多かった。また、補てん事業の参加だけで積立金と補てん金の差が1キロ当たりプラス1.6円と大きいため、成鶏淘汰に積極的に参加しないケースもあった。新制度に改善することで、規模を問わず50万羽までは公平に補てん金を支払うほか、積立金と補てん金の差は1キロ当たりプラス0.15円に縮小し、大きくプラスにするためには生産調整事業に参加する必要があるため、生産調整への参加を促すことができる。

【生産調整事業】
このうち「成鶏淘汰事業」は現行の成鶏更新・空舎延長事業を踏襲し、協力金の比率は生産者が4分の1、国が4分の3と現状維持。発動基準は安定基準価格とするか、年度当初にひなえ付け羽数や飼養羽数の調査(農林統計など)を基に発動を決定することで、計画的に参加できるようにする。

改善点は、成鶏処理業者への奨励金の増額(現行は1羽23円以内)、負担軽減のためのレンダリング採用、空舎期間の延長(90日以上も考慮)、再導入ひな羽数の上限を下げる(現行は4割以上)など。

「導入羽数制限事業」は、ひなの導入羽数を制限することにより、生産調整の効果を長期に期待できるようにする。

「粉卵公社による市場隔離」は、以前の液卵公社のような〝粉卵公社〟を設立(現在、国内で粉卵を製造できるのは1社のため、国の補助で粉卵設備を導入できるようにすることも考える)。鶏卵生産量260万トンの約1.5%に相当する4万トンを市場から隔離する。加入生産者は50万羽までは1キロ1円、50万羽を上回る分は同0.5円を積み立て、粉卵公社が市場隔離した場合に1キロ50円の補てんを行なう。製造した粉卵は輸出、または国内販売(特に国内生産が急激に減少して卵価が高騰した場合は価格高騰対策に)する。

【消費促進事業】
原則として全羽数加入とし、1キロ当たり0.05円を積み立て、年間約1億円を準備して消費促進活動やマスコミへの広告掲載などを行なう。

全鶏会議の彦坂誠副会長は、宮澤哲雄副会長とともに日本養鶏協会の理事に就任し、2人が同協会の経営安定対策事業委員会のメンバーに入ったことを報告したうえで、「誰かが制度を作ってくれると思っていては、絶対に変わらない。幸い、この事業は生産者団体の手の中にある。養鶏業界にこんな事業はいらないと国(財務省)が思えば、この制度はもたない。声を上げてより良い制度に変えていくことと、この事業に参加して当事者として維持していかないと、変えていきたい事業さえなくなる可能性があることを、生産者の皆さんに考えていただけるとありがたい。力不足だと思うが、少しでも良い制度となるように宮澤さんといろいろ意見を言いたい」と述べた。