令和12年の輸出目標5兆円 鶏卵は196億円、鶏肉は100億円

政府は、令和12(2030)年までに、農林水産物・食品の輸出額を5兆円に拡大する目標を掲げ、その指令塔組織として4月3日に農林水産物・食品輸出本部(本部長=江藤拓農林水産大臣。本部員に総務、外務、財務、厚労、経産、国交、復興の各大臣)を農林水産省に創設。新たな戦略(基本方針)を定め、実行計画(工程表)の作成・進ちょく管理と関係省庁間の調整を行なうことで、政府が一体となって輸出促進を図ることにしている。

令和元(2019)年の農林水産物・食品の輸出実績は、7年連続で増加し、前年比0.6%増の9121億円となったものの、目標の1兆円に届かなかった。

令和12年までの輸出目標5兆円の内訳は、農産物1.4兆円、林産物0.2兆円、水産物1.2兆円、加工食品2.0兆円。

このうち畜産物の輸出額の目標は、食料・農業・農村基本計画の参考資料や生産局畜産部「食肉鶏卵をめぐる情勢」資料では、牛肉が令和元年の297億円を3600億円、牛乳・乳製品が同184億円を720億円、鶏卵が同22.1億円を196億円、鶏肉が同19.4億円を100億円、豚肉(くず肉を含む)は同11.3億円を60億円――などとなっている。

鶏卵を輸出できる国・地域は香港、シンガポール、台湾、米国、韓国、マカオ、EU。このうち韓国は輸出農場の指定は受けているが、GPセンターが未指定のため輸出が行なわれていない。今後はロシアなどと輸出協議を継続していく予定。

現在の鶏卵輸出額のほとんどは香港(人口約707万人)が占めている。香港では新型コロナウイルス感染症の影響で内食化が進んだことや、国境封鎖で隣接する中国本土やタイからの輸入が減少。日本産は前年対比で今年2月は約73%増、3月は約2.4倍、4月は約2.9倍となった。シンガポール(人口約564万人)も、マレーシアが国境封鎖したため2月は約20%増、3月は約2倍、4月は約4.7倍で、日本産鶏卵は香港とシンガポールから『輸出特需』を受けたようだ。

日本産鶏卵は、香港には船便で7~10日間程度で届き、7割程度が家庭向け(日系や現地系スーパー、百貨店など)に販売され、3割ほどが業務用(レストランなど)に卸されている。香港の輸入先上位は中国、米国、マレーシア、タイ、日本の順で、日本のシェアはこれまでは約4%とみられていたが、新型コロナで現地のスーパーも日本産の扱いを増やしたようだ。中国からの再開や、香港市場の2~3割を占めていたタイ産鶏卵も5月から輸出を再開し、日本産鶏卵の今後のシェア動向が注目される。

シンガポールの日本産鶏卵(船便で10~14日、航空便で12時間~1日程度)は、日系スーパーやコンビニで家庭用として販売され、そのシェアは0.03%と少なく、99%は隣国のマレーシアから輸入(このほかタイのシェアは1%くらい。シェア0.6%のフリーレンジ卵などの特殊卵はニュージーランドやオーストラリアから)。シンガポールも、マレーシアやタイから輸出が再開されると、日本からの輸出は元の水準に戻る可能性もある。

鶏肉を輸出できる国・地域は香港、カンボジア、ベトナム、シンガポール、EU、マカオ。台湾などとの協議が続けられている。

輸出先の上位は香港、カンボジア、ベトナムで、この3か国で99%を占める。品目としては鶏足(もみじ)が中心であるが、最近は丸と体、もも・むね肉などの正肉類も増えつつある。

このほかの令和12年の主な輸出額の目標は、米が令和元年の46億円を261億円、りんごが同145億円を279億円、ぶどうが同32億円を380億円、いちごが同21億円を253億円、緑茶が同146億円を750億円、加工食品が同3271億円を1兆9962億円――など。