ロカボの効果、自ら実感 正しい知識と自信身につける JA全農たまご

山田悟氏は、栄養学の常識が大きく変わってきていることを解説した

JA全農たまご㈱(小島勝社長)は1月15日、(一社)食・楽・健康協会代表理事の山田悟氏(北里大学北里研究所病院糖尿病センター長)を東京都千代田区の本社に招いて、社内向けの「ロカボチャレンジ&セミナー」を開いた。

ロカボは、糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)を1食20グラムから40グラム、おやつなどでも毎日10グラム摂取するなど、マイルドな糖質制限を続ける運動。

全農たまごのロカボチャレンジは、卵をはじめとしたたんぱく源や脂質をしっかり食べる「ロカボ食」のメリットを、全農たまごの役職員も自ら実感し、より健康になるとともに、自信をもって販売先や一般消費者に卵を提案できるようにすることが狙い。同日は小島社長はじめ全農たまご本社の役職員や、聴講希望があった取引先関係者も出席。さらに同社の西日本営業本部や中部支店、関東営業所などもテレビ電話でつなぎ、合わせて約50人が参加した。

12月の全卵会と同様に、参加者全員で血糖値を測定してから、おにぎりなどの通常食(糖質約100グラム)と、ゆで卵や卵サラダ、低糖質のパンなどの「ロカボ食」(同30グラム弱、エネルギー量は600キロカロリー超)に分かれて喫食。約1時間後の血糖値を測定したところ、通常食のグループの平均血糖値は80ポイント近く上昇し172ミリグラム/デシリットルとなったのに対し、ロカボ食は約10ポイント上昇の103ミリグラム/デシリットルにとどまった。

山田氏は「おいしく楽しく食べて健康に~科学的根拠に基づく食事法・ロカボのすべて~」をテーマに講義。

血糖値を上げないことの重要性については、様々なデータを基に①日本人(黄色人種)は食後の血糖値が特に上がりやすく、現代では誰もが糖尿病になりうる②糖尿病の原因は太りすぎではなく、糖質の摂りすぎによる食後の血糖値の急上昇③がんや認知症のリスクとも関連していることが分かってきているため、食後1時間の血糖値を調べて、急激な上昇を避ける(140ミリグラム/デシリットル以下に保つ)必要がある――と解説。

中性脂肪やコレステロールについては〝油を摂ると高脂血症になる〟と信じている医療関係者もまだ多いが、①実際の体内では、摂取した脂質はまずリンパに入り、7時間ほどかけてゆっくり血管に入るため、脂質の血中濃度は血糖値のように簡単に上がらない②全卵を食べると、白身だけを食べた場合に比べて悪玉とされるLDLコレステロールのサイズが大きくなるため、一層血管に入り込みにくくなる③血中の中性脂肪やコレステロールのほとんどは、肝臓が糖質からつくっており、コレステロールも多くは肝臓由来である④肝臓のコレステロール合成量は、食べるコレステロールが増えると減る⑤たんぱく質や油脂をしっかり摂っている人のほうが、飢餓感が少なく、エネルギー消費量が上がるため、中性脂肪の値が低くなる⑥日本人は動物性脂肪を摂っている人のほうが動脈硬化や脳卒中になる確率が低い⑦米国でも、動物性脂肪を減らした人のほうが死ぬ確率が上がった(特に65歳以上で顕著)との試験結果が出ている――ことなどから、糖質を控え、油脂をしっかり食べることが高脂血症やメタボを防ぎ、健康を保つ最も効果的な方策になると説明した。

たんぱく質については〝腎臓病の人は制限しなくてはいけない〟と多くの人にまだ信じられているが、これも間違いで、①ネズミの実験では制限するほうが良い結果が出ているが、人の試験で同様の結果は出ていない②たんぱく質を積極的に摂取し、糖質を制限した人の腎不全が改善した試験結果がある――ことから、たんぱく質はむしろ制限してはならず、特に高齢者はもっと食べる必要があることが分かってきていることも紹介した。

卵については、たんぱく質が豊富で脂質も含まれ、価格も手頃なことから「ロカボの強い武器になる」「お肉以上にサステナビリティーがある食材。国連がSDGsを提唱する中、卵がもっと重用されるべきと確信している」、さらに調味料の中では、主原料があ油と卵、酢の「マヨネーズは無敵に良い」と評価。油脂についても、オリーブオイルやごま油、無塩バターなどは「ふんだんに使ってほしい」と述べた。

「ロカボチャレンジ」のポイントについては①ご飯は半分(糖質20グラム程度)に。野菜はまんべんなく。お肉、魚、卵は好きなだけ②「腹八分目」は健康に悪く、お腹いっぱい食べないと骨密度や筋肉が落ちてしまう③投薬などが不要になることで約1500億円の医療費削減につながると試算できる④これまで悪者扱いされていた、おいしい食品の再認識や消費拡大につながる――と紹介。「賢く、おいしく、楽しく食べて、健康になってほしい」と呼びかけた。

全農たまごの「ロカボチャレンジ」参加者は今後、4月15日まで3か月間にわたって食事の記録を取り、血糖値と体重を毎週測定。山田氏のアドバイスに基づいて『ロカボ食』を実践し、健康がどれだけ改善しているかを測定する。