スーパーと宅配好調、コンビニ苦戦、外食は危機

コロナ下の小売り・外食の販売状況

小売りや外食の各団体による2020年の販売統計が出そろった。同年3月以降は学校の一斉休校や、テレワークの普及、会合と会食の自粛などによって〝巣ごもり需要〟が高まり、家庭での調理に使う食材・商材の販売が伸長。人との接触を減らせる宅配や、ネット通販の利用者数が伸びたとの報告も目立った。

食品スーパーでの畜産品販売も好調に推移したが、地鶏肉、国産あい鴨肉といった料亭やホテルなどが主要取引先の食材にとっては厳しい市場環境になった。外食店約3万7600店が加盟する(一社)日本フードサービス協会の調査によると、年間の売上高は前年比15.1%減と過去最大の落ち込みで、首都圏の業務卸からは「経験したことのない厳しさ」(食鳥)、「先が見えず気力も果ててきた」(卵)との声も聞かれた。12月のデータも含め、各団体の報告をまとめた。

スーパー3団体は過去最高の売上高

(一社)日本スーパーマーケット協会など食品スーパー3団体は、270社・8039店舗の12月の総売上高が前年同月比3.6%増(既存店ベース)の1兆976億4322万円になったと発表した。このうち畜産品は7.4%増の1352億4971万円、総菜は0.8%増の1106億143万円、卵を含む日配品は5.8%増の2079億6322万円。鶏肉は鍋物商材として引き合いが強く、クリスマス用チキンの動きも良かった。ケーキを手作りするための商材や、おせちの予約なども好調だった。

この結果、年間の総売上高は前年比5.0%増の11兆3835億7172万円となり、(年により集計企業が異なる場合もあるが)同様のデータが残る2012年以降で過去最高となった。畜産品は8.4%増の1兆3595億2330万円、総菜はほぼ変わらず1兆1246億7511万円、日配品は5.8%増の2兆2421億7735万円。3団体は、引き続き家庭内消費は堅調に推移すると予測しているが、各家庭で調理への負担感が高まりつつあり、今後は負担軽減や、気分転換なども食品スーパーに求められるとしている。

生協の年間供給高、宅配が約18%伸長

日本生活協同組合連合会は、全国65の主要地域生協の12月総供給高(売上高)が前年同月比6.9%増の2789億3500万円で、11か月連続で前年を超えたと発表した。このうち宅配は8.0%増の1866億9600万円、店舗販売は5.1%増の865億6400万円。

1~12月累計の総供給高は前年比13.8%増で、うち宅配が17.6%増、店舗が7.9%増となった。

チェーンストアの年間販売額約1%増

日本チェーンストア協会が公表した12月の大手チェーンストア販売概況(会員56社、店舗数1万975店)によると、食料品や衣料品、日用品などの総販売額は前年同月比2.7%増(既存店ベース)の1兆2777億8848万円となった。食料品全体は4.0%増の8635億138万円で、うち畜産品は8.6%増の1070億9462万円。鶏肉は好調で、卵やハム・ソーセージの動きも良かった。総菜は2.3%増の1063億2044万円。

この結果、年間の総販売額は前年比0.9%増の12兆7597億1873万円。食料品は4.7%増の8兆7465億7353万円となった。同協会は2020年の食料品販売について「内食需要が増加し、総菜を除き好調に推移した」と報告。衣料品は過去にない厳しい状況となり、日用品や家具は6月以降堅調に推移した。

コロナ下のコンビニ、年間売上高約5%減

コンビニ7社(5万5924店舗)で組織する(一社)日本フランチャイズチェーン協会は12月の売上高(既存店ベース)について、前年同月比4.0%減の8988億9500万円と公表。弁当や卵、加工肉を含む日配食品は6.1%減となった(金額は非公表)。来客数は10.5%減の12億7315万9000人で、売上高とともに10か月連続のマイナス。平均客単価は7.4%増の706円で15か月連続のプラス。

この結果、年間の売上高は前年比4.7%減の10兆1580億円、来客数は10.4%減の150億8849万人、平均客単価は6.4%増の673円となった。同協会はコロナ禍の1年を「外出自粛と在宅勤務がオフィス街や観光地での来客数に影響した。買い物回数の減少や、自宅での食事の増加、人混みの回避といった生活様式の変化によって、生鮮食品、総菜、マスクなどの売上高は好調だった。冷凍食品や酒類のまとめ買いの効果もあって客単価は上昇した。4月と5月は緊急事態宣言による外出自粛の影響が大きかった」と振り返っている。

外食は94年以降最大の下げ幅に

(一社)日本フードサービス協会の12月の外食市場調査(新規店含む全店ベース、3万7648店舗)では、全体の売上高は前年同月比15.5%減、店舗数3.2%減、客数17.9%減、客単価2.9%増となった。政府・自治体からのたび重なる営業時間短縮要請や外出自粛要請により客足が急減し、忘年会や帰省中の食事など期待された年末需要も消失。飲酒業態は再び極めて厳しい状況となった。

業態別ではファストフードの売上高が3.0%減(洋風4.8%増、和風5.3%減)、ファミリーレストランが21.8%減、ディナーレストランが41.9%減、居酒屋が60.2%減。

年間の外食全体の売上高は15.1%減で、1994年の調査開始以来、最大の下げ幅となった。業態別ではファストフード3.7%減(洋風5.5%増、和風5.5%減)、ファミリーレストラン22.4%減、ディナーレストラン35.7%減、居酒屋47.7%減、パブ・ビアホール57.3%減、喫茶31.0%減。

百貨店のインバウンド需要激減

(一社)日本百貨店協会は12月の売上高(73社・196店)について、既存店ベースで前年同月比13.7%減の5464億7271万円と発表。食料品は8.8%減の2085億7838万円で、うち生鮮食品は6.6%減の413億1809万円、総菜は7.0%減の483億2843万円、菓子は13.5%減の566億7981万円。

お歳暮やクリスマスケーキ、おせちの予約、富裕層向け高額品、EC(Eコマース、ネット通販)などが好調で、特におせちは会期終了前に完売するケースもみられたが、全体的な自粛傾向をカバーするには至らなかった。

年間の売上高は25.7%減の4兆2204億2523万円で3年連続の減少。このうちインバウンドによる売上高は80.2%減の686億円と激減し、4年ぶりに前年実績を下回った。