キユーピー 低価格・高精度・高速な原料検査装置の開発へ

イノベーション創出強化研究推進事業に採択

キユーピー㈱(本社・東京都渋谷区)は、農研機構生物系特定産業技術研究支援センターが公募する「令和2年度イノベーション創出強化研究推進事業」に採択され、10月1日に研究概要が公表された。この事業は、農林水産業・食品産業の発展や、新たなビジネス分野の創出につながる基礎・応用・実用化の各段階における研究開発が対象。キユーピーは「応用研究ステージ」で、外観だけでなく内部も検査可能な低価格・高精度・高速な原料検査装置の開発を目指す。

キユーピーは2016年にAI(人工知能)を活用した原料検査装置の開発に着手し、18年からベビーフードの製造工場、19年からグループ会社の総菜工場に導入している。不良品を検出するには通常、AIに「不良品」を学習させるが、キユーピーが開発した原料検査装置は「良品」を学習させる〝逆転の発想〟で「良品以外をすべて不良品として検出する」ことが可能となり、検査精度や現場での操作性が飛躍的に向上した。

しかし、食品に使用される原料の種類は非常に多く、野菜などの農産物は形や色も一定ではないため、種類によっては判別が難しい。今回採択された事業では、AIアルゴリズムをはじめとするサイバー技術、照明技術をはじめとするフィジカル技術を共に改良することで、40品種以上への対応を目指すほか、人による目視や画像認識では困難とされる、原料内部にまで入り込んだ異物(虫)を電磁波センシングで検出することを主要テーマに掲げている。

これらの実現のために(国研)産業技術総合研究所と㈱ブレインパッドの協力を仰ぎ、国内全体の〝食の安全・安心のレベルアップ〟を図る。

マヨネーズの「口どけ」定量化に成功

キユーピーは、これまで測定する人の感性に頼ることが多かったマヨネーズの「口どけ」に関する定義付けと定量化に取り組み、「口どけ」を機器測定で可視化することに成功した。

キユーピーが販売する業務用マヨネーズは、各社が手掛ける弁当や総菜、製菓・製パン、冷凍食品、各種調理ソース、外食メニューなどに加工されるため、耐冷性・耐熱性・吸水耐性など、様々な機能を持ったアイテムを取りそろえている。各社が開発する商品・メニューに対して、どのアイテムが最も適しているのかを判断する際、これまではマヨネーズの「口どけ」に関する明確な定義や定量化の仕組みがなく、評価する人の感覚に左右されることが多いのが実情だった。これを客観的に判断できるようになると、中食・外食の商品開発、メニュー開発をスピーディーで的確に後押しできる。

マヨネーズの「口どけ」が定義付けされる以前は、人によって「口どけが良い」と感じるポイントがまちまちであるため、それらの評価のポイントを分析。官能評価の評価軸を①口に入れた時の初発の粘度②口の中に残る味の時間③口の中に残る食感の時間――の3つに絞り、「口どけ総合評価(人が感じる口どけ感)」に対する寄与率を統計的に算出した結果、評価軸③の「口の中に残る食感の時間」の寄与率が95~97%と非常に高かったため、「口の中に残る食感の持続時間」をマヨネーズの「口どけ」の定義とした。

また、その食感の持続時間を左右する要素として「物性」と「唾液による洗い流し」が大きく関与するため、測定方法を検討。「物性」としての計測には「回転式粘度計(+羽根型スピンドル)」を用い、その測定結果の「最大値」「最終値」「最大値に達した時間」から得られた値と、「唾液誘発」の観点からは「総酸値」などを用いることにした。それらを踏まえて導き出した回帰式から「口どけ点数」を求めることが可能となり、簡便で高精度に口どけを測定することができるようになった(測定方法は特許出願中)。

マヨテラスでオンライン見学を開始

キユーピーは、10月からマヨネーズの〝なるほど!〟を楽しく体感する施設「マヨテラス」(東京都調布市)のオンライン見学を開始した。

マヨテラスは2014年6月のオープン以来、案内係(コミュニケーター)による模型・映像を使った説明や、オリジナルソース作りとサラダの試食などの体験が好評で、連日満員の状況が続いていたが、現在は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、見学を休止している。

オンラインマヨテラス見学は、ウェブ会議サービスを利用し、マヨテラスとユーザーをつなぐ30分間のプログラムで、参加希望者はマヨテラスのウェブサイト(https://www.kewpie.co.jp/entertainment/mayoterrace/)からの事前予約が必要。見学では案内係がマヨネーズの歴史やおいしさの秘密を伝えるほか、従来の見学では伝えきれなかったマヨネーズを使った簡単レシピなども紹介する。

また、ユーザーとの直接の対話に加え、チャット機能を活用し、リアルタイムで質問や感想に答える。10月5日から1日1~2回実施し、実施回数を今後増やす予定。