『自律走行型ケージ監視システム』 AI判定で死亡鶏を自動検知

大豊産業とセンシンロボティクスが共同開発

決められたルートに従い鶏舎内を巡回し、2つのカメラでケージ内の死亡鶏を検知する

大豊産業㈱(乾和行社長―本社・香川県高松市)は、自動走行ロボットに実装したカメラで取得した画像をAI(人工知能)で判定し、ケージ内の死亡鶏を自動で検知する『自律走行型ケージ監視システム TAIHO-01(仮称)』を㈱センシンロボティクス(北村卓也社長―本社・東京都渋谷区)と共同開発し、10月からモニター販売の受付を開始した。

養鶏の現場では、作業員が鶏舎内を巡回して鶏の健康状態を確認し、発見した死亡鶏を抜き取る作業が重要となっているが、採卵鶏を飼育している多段式ケージでは、足元から頭上までのケージを1つずつ目視で確認するには困難な場合も多く、時間がかかり、人手不足の中で作業員に大きな負荷がかかっている。また、死亡鶏の発見が遅れると、衛生レベルの低下による疾病のまん延や、死亡鶏に引っかかり集卵できなかった腐敗卵の流出につながる可能性が高くなる。

これらの課題を解決するために〝技術商社〟として事業を展開する大豊産業は、2017年に自動巡回ロボットとAIを活用した鶏舎内の巡回の自動化に着手。センシンロボティクスから死亡鶏を検知するAI解析の技術提供を受けて、採卵鶏農場で実証テストを重ねてきた。

『自律走行型ケージ監視システム TAIHO-01(仮称)』は、周囲の状況を把握しながら自律走行が可能。管理者が不在でも決められたルートに従い、時速1kmで鶏舎内を巡回し、2つのカメラで異常の発見に務める。85m×8列・4段または3段の鶏舎を1時間弱で自動走行点検できる。

AIによる画像の1次判定と、サーモカメラによる2次判定で、死亡鶏の検出93%以上、誤検出1%未満という高い検出精度を実現した。

また、大規模農場での運用(複数台走行)を想定した『見える化』ソフトを実装することで、死亡鶏の判定をメールで通知するほか、ロボットの状態や死亡鶏の分布などのデータを容易に確認できる。検出したデータはすべてサーバーに記録し、結果を出力できる。どの季節に、どの鶏舎の何段目・何番のケージで異常があったのかを蓄積・解析することで、次の生産ロットで解決すべき課題が見えて〝カイゼン活動〟に生かすことができる。

センシンロボティクスと共同開発した異常判定用AIは、データの蓄積により学習を繰り返し、今後も判定精度が向上する。また、滞留卵の検知や、オプションの温度湿度モニタリング機能による鶏舎内空調の監視など、さらなる機能拡張を予定している。

『自律走行型ケージ監視システム TAIHO-01(仮称)』を導入した㈱横浜ファーム君津農場では「このシステムの導入により、鶏舎内の巡回作業の頻度を削減することができた。これを契機に、今後も様々な作業分野でロボティクス技術の活用が進むことを期待している」と評価している。

『自律走行型ケージ監視システム TAIHO-01(仮称)』を紹介する動画がユーチューブで公開されている(https://youtu.be/faLMd0u2iOk)。主な製品仕様と利用条件は次の通り。

〔走行ロボット部〕

寸法=幅550mm×奥行き1000mm×高さ2000mm▽総重量=約130kg▽走行速度=時速1km▽電源=内蔵バッテリーで稼働(稼働前に充電が必要)▽連続走行時間=5時間(満充電時)▽動作環境=周囲温度0~40℃、周囲湿度35~95%(結露がないこと)

〔管理システム部〕

寸法=幅430cm×奥行き500cm×高さ180cm▽電源=単相AC100V±5%(50/60Hz)▽動作環境=周囲温度0~40℃、周囲湿度35~65%(結露がないこと)、インターネット接続可能なこと

〔利用条件〕

鶏舎種類=ウインドレス鶏舎▽ケージ最大段数=4段▽ケージ条件=幅680mm×奥行き560mm×撮影開口部55mm▽走行必要範囲=高さ2000mm以下、幅750mm以上▽走行可能床面=コンクリート舗装、グレーチング▽床面前荷重=1070kg/㎡▽階層=1階層のみ▽鶏種類=白玉鶏(鶏舎環境により変わる場合がある。階層移動と鶏舎間移動は別途オプション)

問い合わせは大豊産業営業本部(電087-811-4567、Eメール=info@taihos.co.jp)へ。