「卵殻膜」テーマに第15回大会を開く 日本たまご研究会

卵の研究者や業界関係者、学生ら約220人が出席し、熱心に聴講した

『第15回日本たまご研究会』が11月8日、京都市のメルパルク京都で開かれ、卵の研究者や鶏卵業界の関係者、学生ら約220人が参加。メインテーマの「卵殻膜の機能性と有効利用」に関する幅広い知識や最新の知見を学んだ。

インフルエンザのため急きょ欠席した日本たまご研究会の松田治男会長(広島大学名誉教授)に代わり、八田一副会長(京都女子大学家政学部教授)が開会あいさつ。今秋相次いだ台風や豪雨などの被災者へのお見舞いと、同研究会の開催に協力した多くの関係者への謝意を述べた上で、今回テーマとした卵殻膜について「卵の10%は卵殻、1%は卵殻膜であり、日本の鶏卵生産量約260万トンのうち26万トンは卵殻、2万6000トンは卵殻膜になる。現在は、それほど有効利用されていないが、世界の鶏卵生産量を約6500万トンとすると、650万トンの卵殻と65万トンの卵殻膜が毎年出てきている計算になる」と、利用研究の重要性を紹介した。

吉川敏一副会長(京都府立医科大学前学長)を座長に、静岡大学の森誠名誉教授が「鶏卵・卵外被の科学」をテーマに基調講演。

鹿児島大学の青木孝良名誉教授を座長に、京都大学大学院農学研究科の佐藤健司教授が『卵殻膜ペプチドの構造と機能―最近の研究から―』、八田一副会長を座長に、米子工業高等専門学校の谷藤尚貴准教授が『卵殻・卵殻膜を活用した機能性材料の開発と教育―卵殻膜電池、食品の保存剤、ホルムアルデヒド吸着剤―』、京都大学大学院農学研究科の林由佳子准教授を座長に、京都女子大学家政学部の諸岡晴美教授が『卵殻膜・リン脂質ポリマー同時加工布がヒトの皮膚性状と温熱的快適性におよぼす影響』について講演。山根哲郎副会長(松下記念病院院長)のあいさつで閉会した。

優秀賞表彰式 エコたま基金

基金の設立経緯を紹介した南部幸男副会長

引き続き開かれた懇親会では、ラベルとパックを簡単に分別できる「エコたまパック」関連の特許や商標の使用料を、養鶏・鶏卵業界の発展のために拠出する『エコたま基金』発足の発表と、第1回の優秀賞表彰式を催した。

特許を保有する㈱ナベルの南部幸男副会長が、エコたま方式の概要と、基金設立の経緯を紹介。同基金の活動は、JA全農たまご㈱、㈱栗原製作所、ナベルの代表者で構成する「エコたま基金実行委員会」で協議し、鶏卵消費拡大運動や養鶏・鶏卵の研究団体、発展途上国の養鶏・鶏卵業界の人材育成などを支援することにしている。

表彰式では、八田一副会長ら日本たまご研究会理事の推薦と、エコたま基金実行委員会の審査をもとに、「卵殻膜を用いた機能性材料の開発」に取り組んでいる米子工業高等専門学校物質工学科の谷藤研究室と、全国で鶏卵消費拡大運動を推進している「たまごニコニコ大作戦!!」の実行委員会(事務局=〈一社〉日本卵業協会内)に、エコたま基金の小島勝実行委員長(JA全農たまご社長)から、表彰状と副賞の目録が手渡された。

この中で、「たまごニコニコ大作戦!!」実行委員会を代表して登壇した齋藤大天氏(㈱愛たまご社長)は、この活動を始めた野田裕一朗氏(㈱のだ初社長)を紹介。「この活動は、私たちだけでなく、業界の皆さんが本当に応援してくれて、手弁当で北海道から沖縄まで活動していることで成り立っている。この賞は、活動に携わる業界全員でいただいたものと思っており、本当にありがとうございます」とお礼を述べた。

吉川敏一副会長の発声で乾杯し、終始なごやかに歓談。

中締めでは、門川大作京都市長が登壇し、世界中から観光客が訪れる同市には、ゆかりの深いノーベル賞受賞者も多いことなどを紹介しながら「卵は、栄養も素晴らしいが、あらゆる宗教を超えて、誰でも食べられる。そういう意味でも、卵は素晴らしい食材である。どんどん研究していただくことをお願いする」と激励。出席者と研究会の一層の発展を祈念し、門川市長の音頭で「弥栄(いやさか)」の言葉とともに盃を上げ、ナベルの南部邦男取締役会長のあいさつで散会した。