「全県的な体制の早期確立を」最新情報と今後の対策を共有

鳥インフル関係閣僚会議、越境性動物疾病防疫対策推進会議開く

政府は今シーズン3回目となる「鳥インフルエンザ関係閣僚会議」、農林水産省消費・安全局動物衛生課は都道府県の家畜衛生担当者らとオンライン形式による令和2年度「第2回越境性動物疾病防疫対策推進会議」をそれぞれ1月19日に開き、最新情報を共有したほか、今後も緊張感を持って発生予防措置や、発生後のまん延防止措置に対応していくことを確認した。

越境性動物疾病防疫対策推進会議の冒頭あいさつした野上浩太郎農林水産大臣は「高病原性鳥インフルエンザの継続発生や、ワクチン接種後の農場での豚熱発生といった現状を踏まえ、この会議で最新の状況と今後の対策を共有し、関係する皆様には引き続き最前線で指導に当たっていただきたい。

高病原性鳥インフルエンザは国内で15県・36事例の発生が確認されている。今シーズンは渡り鳥が運んでくるウイルス量が多く、ハヤブサなどの渡り鳥ではない野鳥での感染も確認されており、湖などの周辺だけでなく、野山や道路などにもウイルスが多量に存在していると考えている。

こうした状況下で農場へのウイルス侵入を防ぐには、消毒や防鳥ネットなどの飼養衛生管理の徹底が必要であることや、農場・人・物・車両の消毒などでウイルス量を一定量以下まで減らせば感染を防ぐことができることから、関係者が一体となった徹底的な消毒の実施などを発信している。

鳥インフルエンザについては、農場へのウイルス侵入を防ぐことが世界的にも唯一の対策となる。飼養衛生管理基準の一斉点検のフォローアップを実施したが、まだ順守されていない農場もあったと承知しているため、より一層の指導の徹底をお願いする。

農場の規模が拡大している中で、こうした疾病に限らず家畜伝染病の発生時には地域の畜産業を守るために、災害対応に準じた全県的な対応で早期の防疫措置に万全を期すことが重要である。今シーズンは自衛隊への災害派遣要請が20回にも及んでいるが、昨年末に緊急的な防疫演習の実施を通知した通り、まずは県内で危機管理部局、警察、市町村、関係団体を巻き込んだ実効性のある全県的な体制を早急に確立するよう、私からも強くお願いする」などと述べた。

会議では、動物衛生課の担当者が今シーズンの高病原性鳥インフルエンザについて報告。

世界的な発生状況については「今シーズンは2020年夏にシベリアで検出されたH5N8亜型ウイルスがユーラシア大陸の東西で猛威を振るい、フランス(282件)や韓国(90件)をはじめ各地で続発している」とし、EFSA(欧州食品安全機関)などが野鳥でのウイルス浸潤状況の確認や、農場のバイオセキュリティ強化を打ち出していることや、OIE(国際獣疫事務局)が昨年12月に出したレポートで、渡り鳥による家きんへの感染リスクが高く、農場のバイオセキュリティの強化・徹底が最も重要と指摘していると紹介。

国内の発生状況については「今シーズンは11月5日からの約2か月間で15件・36事例が発生し、殺処分羽数は約604万羽。これらは過去最大規模となっており、危機感を強めている。100万羽を超える大規模発生が2事例あり、殺処分羽数のうちの約172万羽は養鶏密集地帯での続発となっている。自衛隊には災害派遣で多大なご尽力をいただいているが、殺処分や埋却処分などの防疫措置に時間を要しており、都道府県が実施する円滑な防疫措置の体制整備が必要となっている」などとした。

国内分離ウイルスの特性については、農研機構動物衛生研究部門が実施した試験により、「香川県の1例目と2例目の香川2020株は、2019-2020年ヨーロッパ株と近縁で、昨年10月に北海道で野鳥の糞便から分離された北海道株と遺伝子の相同性が高かったため、渡り鳥が国内に持ち込んだウイルスによって家きんでの発生を引き起こしたと考えられる。過去の国内分離株と比較すると、香川2020株は鶏が感染してから死亡するまでの期間が有意に長い」と説明した。

家きん疾病小委員会による提言を踏まえた対応については「飼養衛生管理の徹底について分かりやすいリーフレットを作成した。都道府県や生産者団体といった従来のルートだけでなく、日常的に農場に出入りする飼料や動物用医薬品業者などにも協力をお願いしているほか、リーフレットをホームページやSNS、、メディアなどに掲載して幅広く注意喚起をしている。

防疫措置は24時間以内の殺処分、72時間以内の焼埋却を目安としているが、地域の実情や羽数に応じて変動がある。今回の発生では人員の速やかな動員に支障があった事例もあった。全県的な体制で一刻も早い防疫措置の完了を目指し、自衛隊への協力要請はその次の段階として検討することが重要である。

全国で約8.3%の農場が埋却地などを確保していない。確保済みと報告されている農場でも、発生時になると埋却地を用意できず、円滑に作業に着手できないケースもある。今回も香川県や千葉県で埋却地の確保に時間を要した事例もあった」とした。

飼養衛生管理の全国一斉自己点検結果の改善状況については、1回目の点検で約1割の不備を確認したことから、1月15日までに2回目の点検を実施してその結果を公表【自己点検表】。2回目の点検では、小規模農場にも積極的に働きかけたことから報告農場数が増加し、「大・中規模農場では改善がみられたが、小規模農場での順守率が低かったため、指導文書の発出などの運用で生産者に危機感を持ってもらい、自己点検して飼養衛生管理基準に沿った対策を進めてもらうことが重要である」と強調した。

全国一斉の緊急消毒の実施状況については「生産者による日々の消毒が基本だが、感染リスクの高まりを踏まえ、より一層の注意を与えるために緊急消毒を実施した。渡り鳥がシベリアに帰る今年5月までは感染リスクが極めて高いため、緊急消毒や消石灰の配布をひとつのツールとして、生産者に対する日々の消毒の徹底や飼養衛生管理の改善を図っていただきたい。養鶏が盛んな地域では国・県だけでなく、市町村や関係団体などを通じて消毒の強化・啓発に取り組んでほしい」と要請した。