「事業継承はスムーズにいった」との回答は65% 日本全薬工業が畜産業界の事業承継で調査

日本の畜産を応援するウェブマガジン「どっこいしょニッポン」(https://dokkoisyo.jp/)を運営する日本全薬工業㈱(福井寿一社長―本社・福島県郡山市)は、このほど畜産業界の事業承継に関する実態調査を実施し、事業承継がスムーズにいかなかった理由として「親子だからこそ存在する確執や感情」など、畜産に限らず様々な業界で聞かれる親子間の率直な気持ちが紹介された。

同調査は、今年3月26日から4月9日にかけてフェイスブックを利用して実施し、「どっこいしょニッポン」をフォローしている18歳~65歳のユーザーら180人から回答を得た。

「事業継承はスムーズにいったか?(もしくはいきそうか)」との問いに対し、65%は「スムーズにいった」と回答し、35%は「スムーズにいかなった」と回答した。

「事業継承がスムーズにいかないと思う理由」(複数回答可)については、1位が「経営理念が合わない」(65票)、2位が「いつまでも子供扱いをする」(49票)、3位が「完全に経営権を渡さない」(48票)。

継承者からは「経営にプラスになる投資よりも自分の趣味の延長で投資をする傾向にある」(33歳、酪農)、「人手の重要性やICTの活用などの利点に理解を示さず、『自分が牛を見ていれば大丈夫』の一点張り。いざ導入してみると良さを理解するが、導入までが長い道のり」(42歳、酪農)、「鶏の飼い方など今の世代とは全然違うのに、昔のやり方を押し通してくる」(24歳、養鶏)、「受精卵移植を導入しようと思った時に否定された。世代の温度差を感じた」(35歳、酪農・肉牛)、「法人化への価値観の違い。雇用や6次化を見越しての検討も『見栄』の一言」(31歳、酪農)、「任せると言っておきながら任せてもらえず、購入した商品を返品された」(30歳、酪農)、「繁殖農家は肥育農家が求める血統を育てる必要があるが、安いからという理由で昔の牛やあまり良くない血統を使うのはやめてほしい」(25歳、肉牛)、「自分は規模拡大を考え計画しているが、現社長(父)は現状維持の考えであり、反対されている。対等な話し合いにならない」(28歳、酪農)、「頭ごなしに意見を否定せず、もう少し子供の意見にも耳を傾けてほしい」(37歳、肉牛・養豚)との意見が出された。

4位が「身内だから素直になれずぶつかる」(47票)、5位が「作業者とし扱われない」(34票)。

継承者からは「親子だから家の仕事はタダでやって当たり前、自分たちが死んだら全部継承するんだから、という姿勢。自分も家族を養わなければいけないから、きちんと給料と休みが欲しい」(50歳、肉牛)、「過去にも収入のない生活は不安だという話をしたことはあるが、話し合いはいつも続かず、それでも続けようとすると癇癪を起こす始末。親世代への継承セミナーでもやってほしい」(50歳、養豚)、「従業員を雇ったが、労働基準などがあることを理解できず、家族と同等に、もしくはそれ以上に働くのが当然だと思っていたり、見下したりしていた。結局その従業員は辞めてしまい、少しは反省したようだが、今まで家族労働でやってきて社会を知らない両親にはなかなか雇用は難しい様子」(37歳、酪農)との意見が出された。

一方、継承元からは「搾乳の仕方、金銭の感覚、継承者の責任感のなさに不安を感じる」(65歳、酪農)、「こちらに相談せずに新牛舎の計画を立てていて計画が進んでから『何かあれば言え』と言われたが、そこまで進んでいたら口出しできない状態だった」(50歳、酪農)、「息子のやり方が昔ながらのやり方と違うのが気に食わないし、それで成功するのが、なお気に食わない。さらに成功者の息子にスポットライトが当たり、全国的に有名になるのが、なおなお気に食わない。ということで、そんなに気に入らないのなら退職することにしたら、やっと事業を譲る気になった」(80歳、養鶏)との声も聞かれた。

「スムーズに継承できた」と回答した人からは「足りない部分を補う関係で助かっている。体も動くし、センスも良い」(32歳、肉牛・養豚)、「お互い得意な分野を尊重しあって、その分野ごとに責任を持つことと、みんながわかるように〝見える化〟、経営目標の掲示が大事だと思う。第一感情で話すとうまくいかないので、家族経営協定を定めたり、第三者の目を入れて第二感情で話を進めることも大切(34歳、酪農)などの意見が出された。

「事業継承時の継承元の年齢は?(予定も含める)」との問いでは、1位が65~69歳、2位が60~64歳、3位が70~74歳で、一般的に定年を迎える頃が事業の譲り時と考える継承元が多かった。